第18話:裏切り
悠夜との一戦中、本部では大変な事が起きていた。明日香にそのことを知らされ、隼人はそれがなんだったのか聞きに行くことに
「隼人!」
帰ってくるなり、3人が騒々しく出迎えてくれた。
3人とは俺が昼間探し回っていた3人だ。
「どうした?急にいなくなったと思ったら呼び出したりして」
「鬼庭先輩もどうしたんですか?そんなボロボロで」
あ〜そう言えば悠夜と戦ってそのまま来たからなぁ。
「それで俺がいない間何があったんだ?」
「あのね、烏丸が支部長官に任命されたんだ」
あ〜それは結構なことで。
あいつ仕事熱心だからなぁ。
「だからなんだってんだ?別にいいことじゃないか」
「まぁね、でも問題はそこじゃないのよ」
そこが問題じゃないってことは何処の支部に行くかってのが問題なのか?
そんなの俺たちには全く関係ないじゃないか。
「その支部長官になるための試験が・・・・」
「隼人おったんか。メシア様が呼んどるで」
後ろから光明寺さんの声が聞こえた。
なんか急をようしてるみたいだ。
やっぱ俺だけ集まらなかったからか?
その前に集まるってこと自体聞いてないし。
「今いきます。後は直接メシア様に聞くからいいや。明日香」
また明日香の肩を借りて、俺はメシア様の所へ向かった。
「陽河悠夜と一戦交わしたようですね」
第一声がそれだった。
まぁ隠すわけじゃないし、今の姿の理由を聞かれたらバレることだし。
「何かソウルイーターに異変はありませんでしたか?」
異変って言われても、ここ最近異変ばっかだし・・・
強いて言うなら悠夜との戦闘中に紋章から紫の発光体がでてきて戦いやすくなったことぐらいだ。
他は全く応答がなくなったり、技が使えなくなったりしたが、もう解決済みだ。
でも一応全て話しておくか。
「そうですか。もうバーストまで使えるようになりましたか」
「なんですかそれは?」
「ドーピングみたいなものです。
その代わりあまり使いすぎると命を削るのでほどほどにしておきなさい。
それと今まで応答がなかったのは眠っていたからです」
眠っていた?紋章が?なんのために?
「その紋章は敵から能力などを吸収することによって成長します。
そして一番最初の成長中の時は紋章は機能しなくなります。
後は魔力の化身が現れたら、今後は機能を停止せずに成長していきます」
へぇ〜知らなかった。
もしかしたら、俺ってすごい紋章を手にしてるとか?
しかもこの俺にも魔力の化身が手に入るとは感激だ。
「それとあなたは陽河悠夜と交戦中だったので呼ばなかったのですが、
鋭霧の今までの功績を称えて支部長官に任命させようと思うのです」
やっとその話か。よっぽど重要なんだろうな。
「それで鋭霧にはその支部長官になるための見極めの試験をしてもらいます。
その補佐をあなたにしてほしいのです」
俺が烏丸の補佐?なんでまた俺なんだ?
まぁメシア様にも何か考えがあるのだろう。
「別にいいですけど、補佐って一体何をするんですか?」
「鋭霧の手助けをしてほしいのです。今回はあの子ひとりじゃつらいと思いますので」
つらい?あの烏丸がか?
この前聞いた話だと、普通に魔法使いを100人殺したと言っていたが、それよりつらいことなのか?
「それで試験の内容はなんですか?」
「氷室亜矢の暗殺です」
はぁ?亜矢を・・・暗殺って殺すことだよな?
「どうして亜矢なんですか?亜矢は魔法使いでも何でもないはず・・・・」
「はい、あの子の親までは普通の一般人です。でもあの子には魔法使いの血が流れているのです」
なんでだよ?親が一般人のくせにどうして、その子供が魔法使いなんだよ。
「彼女の家系は昔魔法使いでした。でもそれは10代前に枯れてしまったのです」
枯れたならもう・・・・
「魔力隔世って知ってますか?血は受け継いでなくても遺伝子だけは今まで受け継いでたのです。
そして彼女、氷室亜矢に今まで受け継がなかった10代分の血がまとめて濃く受け継いだのです」
あぁだから学校内の時間が止まってる時、亜矢は動けたんだ。
「だからって殺さなくてもいいんじゃないですか?」
「確かに今は害がなくても悪の目は小さいうちに摘んどくべきなのですよ」
ダメだ。もうメシア様にこれ以上言っても無駄だろう。
だとしたら烏丸を止めるまで。
「それで烏丸はなんて返事をしたんですか?」
「快くよい返事をしてくれました」
何考えてんだあいつは・・・・
「それで隼人は?」
「その命承りました」
俺はそう言い残して、烏丸の所へ急いだ。
まだ一人で動くのは応えるが、今は休んでるひまではない。
「烏丸いるか?」
俺は烏丸の部屋のドアをノックした後に叫んだ。
「おぉ、隼人か。まぁ立ち話もなんだから入れよ」
なんでこいつは笑顔でいられるんだ?
亜矢を殺してまで支部長官になりたいのか?
「隼人はそこにでも座っててくれよ。俺はちょっとお茶いれてくるから」
言われなくてもそうするよ。
俺はソファーに座り、烏丸が戻ってくるまで待った。
数分後、烏丸が戻ってきて早速本題に入ることにした。
「お前、本当に亜矢を殺すつもりなのか」
「あぁ、俺も一瞬考えたが、俺の出世がかかってるからな。隼人もそのつもりで来たんだろ?」
「いや、俺はお前を説得しにきた」
「はぁ?まさかやめろとかいうわけないよな?」
「そのまさかだ。亜矢とは昔からの幼馴染だ。それは烏丸にとっても同じことだろ?」
俺はできるだけ、感情を押し殺して言った。
感情の赴くままに言ったら、戦闘になりかねんからな。
仲間同士の戦いはごめんだ。
「だから、俺はこの答えが充分に考えた答えだ。
亜矢ちゃんががいつ魔法使いの血が目覚めるかわからないから、隼人を補佐につけるって言われたのに、
これじゃあ逆に足手まといだな。もういい、お前は何も手を出すな。」
はぁ?言わしておけば、足手まといだ?調子にのるなよ。
「お前なぁ・・・・」
「あの試験の話をしているのか?」
俺が烏丸に殴りかかろうとしたとき、水無月さんが部屋に入ってきた。
あぁ、烏丸は水無月さんの神兵だもんなぁ。
同じ部屋にいるのは当たり前か。
「水無月さん、隼人のやつやめろとか言うんですよ。なんか言ってやってください」
っち、こりゃもう説得でやめさすのは無理だな。
「隼人、メシア様の命は絶対だ。たとえそれが試験でもな」
そう言い残して、自分の部屋に戻っていった。
言い忘れたが、幹部会の人は部屋が2つある。
自分の神兵の部屋と、自分専用の部屋だ。
「っということだ隼人。メシア様の命は絶対なんだから、邪魔するなよ。
じゃあもう用はないから帰れ」
烏丸はそう言って、俺を部屋から追い出した。
お茶ぐらい飲ませてから追い出せよ。
まぁ、そんなことはどうでもいいが、本当にどうしよう。
メシア様を裏切り亜矢を助けるか?
いや、そんなことしたら俺の命が狙われる。
俺は頭を抱えながら、仕方なく自分の部屋に戻った。
「隼人、どうしたんや?落ち込んどるようやけど?」
部屋には光明寺さんがいた。
光明寺さんに相談しても、きっと水無月さんと同じ答えが返ってくるんだろうなぁ。
「なに遠慮しとんねん。いいからワイに相談してみ?どうした?恋の悩みか?」
光明寺さんは俺の肩に手を回してきた。
んまぁ恋の悩みに近いような。
でもだからって俺が亜矢のこと、いや、隠すのはやめよう俺は亜矢のことが好きだ。
好きな人が殺されるのが嫌だから俺はここまでムキになれるんだ。
ただの知り合いだったらどうだったんだろう・・・・?
とりあえず俺は光明寺さんを信じて、全てを話すことにした。
「ん〜そりゃメシアの命令は絶対や」
やっぱりな。まぁ当然のことだろう。
「でもな、気に入らんかったら刃向ったらええ。
それが自分が正しいと思うんやったら、ワイは止めへん」
「光明寺さん・・・・自分の神兵がメシア様を裏切ろうとしてるんですよ。
それをほっといてもいいのですか?」
「だから言うとるやろ。隼人がそれを正しいと思ったらそっちの行動をとればええ。
ワイは隼人がとった行動をが正しいと信じるだけや」
しばらく考え、俺はようやく決心した。
意地でも烏丸を止める。
「ありがとうございます。やっと決心が固まりました」
俺は光明寺さんに礼を言い本部を出た。
烏丸が亜矢を狙ってくるとしたら、自宅の方が迎い撃ちやすいからだ。
「なんたって、亜矢の家は俺の家の隣だからな」
あ〜なんか裏切ると思ったら急に緊張してきやがった。
「怖いの?」
「当たり前だろ、メシア様を裏切るとか自殺行為・・・」
って今俺誰と喋ってるんだ?
声が聞こえた方に振り向くと
「相馬さん!ここ2階だぞ」
俺の部屋の窓から入ってきたみたいだ。
まさかもう刺客が・・・・
「あ〜もう、そんな敵意剥き出しにしなくても大丈夫よ。ちょっと隼人君の耳に入れておきたいことがあってね」
「耳に入れておきたいこと?なんだよそれ」
「明日の夜、烏丸君が例の試験実行するみたい」
明日の夜か。じゃあ今日はとりあえず大丈夫だな。
「その話信じていいんだよな?」
「なんで嘘の報告しなきゃならないのよ。確かに伝えたからね」
伝えた?
「待て、それって誰からの伝言だ?」
「誰からって私達3人よ。あ、それと皐月ちゃんから伝言、
『もし殺されても骨ぐらい拾ってあげます』だって」
へへ、あいつらしいな。
「皐月に言っとけ。死なねぇから無駄な心配するなとな」
「わかった」
そう言って、相馬さんは窓から出て行った。
明日か。せっかく時間があるのに何も準備してないじゃ馬鹿みたいだもんな。
よし、とことん抵抗してやっか。