第16話:文化祭
待ちに待った文化祭
同じ文化祭実行委員は転校してしまい、一人でクラスを纏めるハメになった隼人は、全て明日香に任せることにした。
翌日、9時ジャストのチャイムと同時に文化祭が始まった。
中庭にはたこ焼きやクレープなどの出店が並んでいて、各教室にはいろんな催し物があった。
体育館は俺らのクラス貸切で、そのチャイムと同時に満員状態で、長蛇の列を作っていた。
そりゃ、ほとんどの遊園地以上にでかい面積を使い、どこぞやの会長さんのおかげでかなりの本格的なお化け屋敷になったからな。
「なんでこんな無駄な行事があるんだか」
クラスの指示は全て明日香に任してあるし、屋上で昼寝でもするか。
そう思い、屋上に足を運ぶ途中に梓ちゃんを見つけた。
今日は皐月と一緒ではなく一人で、窓から外を眺めていた。
「っよ!今日は皐月と一緒じゃないのか?」
覚えててくれてるか不安だったが、彼女は俺を見て、ペコっと頭を下げた。
しかも無言で。
「ここで何してるんだ?」
俺がそう聞くと、梓ちゃんは外の下の方に指を指した。
指を指した方向にはいろんな出店が並んでいた。
「出店を見てたのか?」
ブルブルと首を横に振った。
じゃあ何を?
「人」
初めて聞いた声。
すごい透き通る綺麗な声だったが、小さすぎて聞き取るには相当耳を傾ける必要がありそうだ。
たしかに出店の前には大勢の生徒や保護者、学園と無関係そうな人が行き交っている。
「あの人の塊を見てたのか?」
コクッと軽く頷くだけ。
「面白いか?」
また頷くだけ。
「そうか」
ん〜話が続かん。ここまで苦戦するとは予想外だぞ。
「そういえば皐月はどうしたんだ?」
そう聞くと梓ちゃんは今度は指を上に指した。
「天井?上の階か?」
そう聞くと軽く横に首を振り、今度指を上下させながら、上を指した。
もっと上ってことか?
「屋上にいるのか?」
またコクッと頷くだけ。
「ありがとう」
そう言って、梓ちゃんと別れた。
なんか悠夜達とうまくいってるのかすごい不安だけど、光喜がいるから大丈夫か。
皐月が屋上にいるってことはあいつもサボりか?
そう思いながら屋上のドアを開けると、かなりの生徒が集まっていた。
生徒に囲まれていたのはブラスバンドの奴らで、今からライブをやるらしい。
「鬼庭先輩!ここは危ないですよ」
皐月に押し戻され階段の影に隠れた。
「おい、何で隠れるんだよ?」
「しっ!ブラスバンドの人たち、知らない間に鬼庭先輩のクラスに体育館を占領されたからカンカンですよ」
あの会長どこまで問題を残していったんだよ。
ちゃんと後始末ぐらいしてから去れよ。
「とにかく鬼庭先輩はここにいないほうがいいですよ」
そう言い残し、皐月は屋上に戻っていった。
まぁ今からライブやるんだったら、昼寝もできそうにないし、別にいいけどな。
っとなるとあとサボれる所は・・・・
次に足を運んだの保健室だ。
屋上より遥かに安眠できるし、うってつけの場所だ。
しかも保健の先生はほとんど留守にしてるから、ベッドとか使い放題だ。
俺はベッドのカーテンを開け、布団を持ち上げた瞬間
「誰だよ?寝込みを襲う奴は!」
げ!悠夜・・・・こいつも考えることは同じか。
「隼人かよ?お仕事ご苦労さん。言っとくけど俺は働く気ないぞ」
そう言って、布団を被りなおした。
別に悠夜を呼びにきたわけじゃないんだが。
でもこいつだけ寝かしとくのは気にくわん。
「起きろ!」
「はぁ〜寝不足・・・・」
悠夜がでかい欠伸をしながら言った。
あれから布団の取り合いになったり、ベッドは破損するわで大変だった。
まぁ、そのおかげで起こすことに成功したけどな。逃げてきただけだけど・・・・
「っでこれからどうするんだ?」
どうするって言ったって、全部つまんなさそうだし。
「隼人〜頑張っとるかぁ?」
「!!!」
この声は光明寺さん?
後ろから声が聞こえ、振り向くとそこには光明寺さんと水無月さんと久遠時さんの幹部会3人が来ていた。
「文化祭とは懐かしいですね。学生時代を思い出しますよ」
久遠時さんがスマイル顔で俺に微笑んだ。
「おい隼人、こいつら・・・」
悠夜が俺に耳打ちしてきた。
「あぁ、紹介するよ。この人達は」
「久しぶりだな。陽河悠夜」
え?
水無月さんから意外な言葉が出てきた。
知り合いなのか?
「ワイらが留守中にえらい好き勝手してくれたな」
「気に召さなかったか?」
光明寺さんとも知り合いのようだ。
「このお礼はいつか返させてもらいます」
「楽しみに待っといてやるよ」
そう言って3人は悠夜と会話交わし
「じゃあ残りの神兵にも顔みせてくるわ」
っと俺に呟き、去っていった。
それより、悠夜と光明寺さん達の話の内容がいまいちわからないんですけど。
悠夜に直接聞こうと思っても、さっき舌打ちをしてどこか行ってしまったし、光喜にでも聞くか。
俺は体育館に行き、光喜を探した。
「亜矢〜光喜知らねぇか?」
体育館の入り口で受付をしていた亜矢に聞いた。
「光喜君ならさっき悠夜君が連れて行ったよ。多分裏にいると思うよ」
「わかった。サンキューな」
俺はそう言って体育館裏まで走った。
自分でもよくわからないけど、急がないといけないような気がした。
いた。4人で何か話してる。
4人というのは悠夜と光喜と竜先輩と梓ちゃんだ。
おれはバレないように曲がり角の隅に隠れて、聞き耳を立てた。
「なんで幹部会がここにいるんだよ」
「たまたまだろ。っち、あいつらにも俺らが魔法使いってことを隠してたのに、まさか向こうから出向いてくるとは予想外だ」
魔法使いだと。
しかも陽河っていうと片桐と同じ3大魔法使いの1つだよな?
悠夜達がそれなのか?
「っでどうするの?本部も潰すの?」
「いや、今まで支部は簡単に潰せても、本部には幹部会とメシアがいる。一筋縄では無理だろ」
「悠夜は臆しすぎだ。残るは本部のみ、ここで一気に」
「ダメ」
「梓の言う通りだ。まだその時じゃねぇ。返り討ちにされるのは目に見えてる」
支部が全部落ちたってことか?
でも支部にも最低支部長官1人と神兵2人が配置されて、簡単に落ちるはずはない。
それを全て落としたってことは・・・あの4人どれだけの力が・・・・
「とにかく、今は隠れとくぞ」
「また転校するの?」
「光喜、名残惜しのはわかるけど諦めろ」
「じゃあ明日にでも手続きしとくか」
「その前にここにいる神兵5人を潰しとくか」
「誰それ?」
「烏丸鋭霧、相馬和、朝霧耀綱、紅皐月、そして鬼庭隼人だ」
!!!
やべ完全にバレてる。
どうするべきか?ここで向かいうっても1対4では負けるのは分かってる。
っとなると・・・・ここでこの話を聞けたことをラッキーと思うべきだな。
悠夜、悪いが潰れるのはお前だ。
そうと分かれば早速幹部会の皆に報告を・・・・
「隼人〜光喜君見つかった?」
げ、亜矢!こっちに来るな。
その前にそんな大声だすな。
「そんな所で何してるの?」
「隼人、お前・・・・」
やば、見つかった!
聞き耳を立てていたことがバレた隼人。
隼人の運命はいかに!!?