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メメリの本棚 ~眠り姫と滅びの詩~  作者: ゆきこ
◆童話<鉄のアイリッヒ>◆
1/7

序章

―それは、日常的に不思議な魔法が存在する世界。


 善い呪術、悪しき呪術のどちらもが存在するその国で、術の力で運命を変えた女の子達がいました。


『序章 ~くろがねのアイリッヒ~』


 物語の舞台は、海と共に暮らす人々の賑やかな港街、ブルゲリーア。

波の音色と海鳥達の陽気な歌声が響き、街中を巡る水路の響きが管楽器の管の役目を果たし、街中まで海の調べを伝えていきます。


 街の中心にある大広場では、今日も楽隊がテンポ良いリズムを響かせ、詩人達も各々の物語を歌い上げ、盛大な賑わいを見せていました。そんな中、人垣を進む少女が2人…。

 落ち着いた服装ながらも、まだまだ子供っぽさの残る少女、ベアトリーチェと。その姉の手を引き、ぐいぐいと人混みを進む小柄な妹、メメトゥーリ・グリムモアです。

 妹のメメトゥーリは、街の皆から“メメリ”と呼ばれていました。


「メメリ~。そんなに急がなくても大丈夫よ~」


 すでに、人混みの中で参ってしまった姉の声も聞こえていないのか、先頭を進むメメリの好奇心溢れる瞳は前を見つめたまま突き進んでいくのでした。


「もぉ~! お姉ちゃん、早くしないと劇が始まっちゃうわ!」


 もう少しで人垣を抜ける…という所でメメリは、姉が人混みに飲まれてしまっている事に気づいた様で、やっと後ろを振り返りました。


「そんな事言ったって…。お姉ちゃん、そんな走れないもの…。メメリだけで見て来ていいよ?」


 片手で胸を抑えながら息を整え、ベアトリーチェはつっかえつっかえという様子で応えます。


「ダメよ! お姉ちゃんも一緒に見ようよ~!」

 そんな姉を見て、メメリは可愛らしい桃色のワンピースの裾が捲くれる事もお構いなしにぷんぷん怒ってしまいました。

 …と、その時。人垣の向こうからよく通る男性の声が聞こえてきました。


「お集まりの皆さん! 御機嫌よう!

 今から、人形劇「鉄のアイリッヒと3人の魔女」の公演を始めます!」

 その声の応えるように、広場に集まった人々から拍手や喝采の声が響きます。

メメリ達も慌てて、人垣の間から広場の方へと視線を向けました。


「それでは皆様、ご静粛にお願いいたします!

 …お待たせしました。「鉄のアイリッヒ」の始まり、始まり~!」

 そう男性が声を張ると、楽団が重々しい重低音の音を奏でます。

 ボーン、ボーン、ボーン。D弦が12回はぜる音が響き、人形劇は始まりました。


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