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数ある作品の中からこの作品を見つけてくださり、本当にありがとうございます。
本当に久しぶりの挑戦なので、文章としては未熟で、つたないところがたくさんあると思います。上手に書けた自信なんて、正直に言うと、全くあまりありません。
どうか、あたたかい目で、最後まで読んでいただければ幸いです。
なにもかもがうまくいかなかった。
大学をなんとか卒業したものの、本命だった就職先からは全て不採用の通知を受け取った。
焦って滑り込みで入った小さな会社も、過酷な労働環境とすり切れるような人間関係に耐えかねて、わずか半年で逃げるように辞めてしまった。
実家からの仕送りはとうに途絶え、貯金を切り崩しながら暮らす、四畳半の狭いアパート。昼夜が逆転し、遮光カーテンを閉め切った薄暗い部屋で、僕はただ泥のように眠り、起きてはスマートフォンの画面を目的もなくただただスクロールするだけの日々を送っていた。
社会という巨大な歯車から完全に弾き飛ばされ、世界の誰からも必要とされていないという感覚。それはじわじわと、しかし確実に僕の心を蝕んでいった。「自分なんて、この世界にいてもいなくても同じだ。いや、いない方がマシなんじゃないか」そんなクソみたいな、絶望に押しつぶされ、呼吸の仕方すら分からなくなっていた。
ある真夜中。午前3時を回った頃、酷い頭痛と吐き気の中で、僕はSNSの海の底を漂っていた。タイムラインには、かつての同級生たちの輝かしい日常が眩しく踊っている。昇進の報告、結婚のニュース、充実した週末の旅行。それらすべてが、僕の無能さを責め立てる刃のように思えて、胸が苦しくてたまらなくなった。画面を凝視しながら、僕は思わず「楽に消える方法」と打ち込もうとした。
その時、誰かがリツイートしたのか、あるいはアルゴリズムの気まぐれか、あるアカウントが呟いた、妙に古風な書き込みが目に留まった。
『誰にも言えない心の澱を、文字にして流してみませんか。顔も名前も知らないままで。もしよかったら、私と手紙のやり取りをしませんか。私はいつも部屋にいて、退屈を持て余しています。だからこそ、世界のどこかにいる誰かの、本物の言葉に触れてみたい。 ――ハル』
スマートフォンの冷たい光の中で、その言葉だけが、なぜか不思議な体温を持って見えた。「いつも部屋にいて」という一文に、当時の僕は勝手な親近感を抱いた。自分と同じように、何らかの理由で社会に出られず、部屋の片隅で孤独に怯えている人間が、世界のどこかにいる。
気づけば僕は、何年も使っていなかった古びた机の引き出しを開けていた。奥から出てきたのは、高校の卒業祝いに貰ったものの、一度もインクを通していなかった安物の万年筆と、埃をかぶった薄い便箋だった。
僕は縋るように、手紙を書き始めた。誰にも言えなかった情けない現状。就職に失敗したこと、社会から逃げ出したこと、毎日ただ天井を見つめて死を考えていること。格好つける余裕なんてなかった。初対面の人にここまで話すことはないか、とためらったが勢いのまま、自分の心の底に溜まった、濁った泥をそのまま文字にして便箋に叩きつけた。手の震えのせいで、文字は酷く歪んでいた。翌朝、這いずるようにして近くのポストにそれを投函したとき、頭のどこかで「どうせ返事なんて来ないさ」と自嘲していた。
しかし数日後、僕のポストに、透き通るような青い便箋が入った封筒が届いた。差出人は「ハル」。丁寧で、しかしどこか線の細い、美しい手書きの文字だった。封を開けた瞬間、ほんの少しだけ、ハッカのような、アルコールのような匂いが鼻腔をかすめた。彼女が使っているお香か何かの匂いだろうか、
『お手紙、ありがとうございます。あなたの吐き出してくれた言葉は、少し痛そうで、でも、私にとっては驚くほど温かかったです。実は、私も自分の人生をクソみたいだと思っていました。理不尽な運命に捕まって、窓の外を流れる雲だけを見て過ごす毎日に、何の意味があるんだろうって。最初、自分の未来が真っ暗だと知ったときは、こんな世界どうでもいい、早く終わってしまえばいいと、自分の境遇を本気で呪っていました。でも、あなたの手紙を読んでいる間だけは、世界の冷たさを忘れられる気がします。あなたが「生きている意味がない」と言うなら、私があなたの生きている意味を一緒に探したい。だから、どうかこれからも、私に手紙を読ませてください』
ハルの手紙を読んだ瞬間、視界が激しく滲み、便箋にぽつぽつと涙の跡が広がった。僕のクソみたいな絶望を、彼女がまるごと両手で受け止めてくれたことが、ただただ救いだった。暗闇の底で溺れていた僕の髪を、彼女の文字が優しく掴み上げてくれたような気がした。
そこから、僕たちの文通が始まった。
月に二回、僕たちは手紙を交わした。ハルの手紙は、いつも僕の心を穏やかにしてくれた。彼女はいつも夜遅くに手紙を書くと言っていた。確かに、届く文字は時折、ひどく小刻みに震えていることがあった。夜更かしをして、寒さに震えながら書いているのだろうか、無理をさせていないだろうか、と少し不安になった。
手紙の中で、僕たちはたくさんのことを話した。お互いの好きな古い純文学の小説のこと、僕が散歩の途中で見つけた野良猫のこと、彼女が窓から見た夕焼けの美しさ。そんな些細なことを便箋に綴るだけで、僕の凍りついた日常に、少しずつ鮮やかな色彩が戻っていった。
ハルに「今月はこんなことがあったよ」と報告したくて、僕はコンビニの夜勤バイトを始めた。人と話すのが怖くて足が震えたけれど、ハルが次の手紙で「一歩踏出したあなたは、世界で一番勇敢です。私の誇りです」と褒めてくれたから、どんなにきつい夜も耐えることができた。ハルの手紙は、僕にとって生きるための酸素そのものになっていた。彼女の手紙が届かない生活なんて、もう想像すらできなかった。
僕が暗闇から抜け出すたびに、ハルの手紙の文面にも、明らかな変化が現れるようになった。
『最近ね、自分がどんどん欲張りになっていくのが分かって、少し怖くなります。あんなにどうでもいい、早く終わればいいと思っていた人生なのに、あなたから届く手紙の続きが読みたくて、もっと生きたい、まだ終わりたくないって、生まれて初めて強く願うようになりました。あなたという存在が、私の冷え切った心に、もう一度生きたいという灯をともしてくれたんです』
顔も知らない、声も聞いたことがない。けれど、僕にとってハルはいつの間にか、この世界で一番大切な人、僕が今日を生きる理由そのものになっていた。
そんなある日、ハルからの手紙に、いつもとは違う特別な提案が書かれていた。
『来年の夏、8月1日。私の一番大好きな場所で会っていただけませんか。遠いけれど、海が見える、白い古い灯台の下で。それまで、もっともっと、たくさんの言葉を交わさせてね』
僕は歓喜で胸をかきむしりたいほどの衝動に駆られ、すぐに「絶対に会いましょう。何があっても行きます」と返事を書いた。
[ ✉︎ ]1を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
文章としてはまだまだつたないところばかりだったかもしれません。
この物語を見つけて、ここまで一緒に見届けてくださったあなたに、心からの感謝を込めて。本当に、ありがとうございました。
感想、気になるところ、よかったところなどあれば1言でもいただけたら嬉しいです。
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続きをまた読んでくださるとうれしいです… 次回:未定
____長瀬 遥香♪




