朝の密会
早朝5時に起きてスポーツウェアを着こなし、羽瀬家の玄関をこっそり抜け出した凛(中身は陸)は、指定された公園へと向かった。
「うぅ……眠い……女子中学生の朝ってこんなに早いの? 異世界転生よりハードなんだけど……」 ぶつぶつと文句を言いながら歩く陸の前に、朝霧の中から巨大な影が姿を現した。
陸(中身は凛)「遅いわよ、不動くん。3分の遅刻!しかもレースシューズ用の厚底カーボンプレートを履いてるし!」
既に汗をかきながら仁王立ちで待っていたのは、陸の肉体に入った凛だ。その眼光は、今までの陸とは思えないほど鋭い。
凛(中身は陸)「ご、ごめん!ランニングシューズが多すぎてどれを履けばいいか分からなくて!」
陸(中身は凛)「シューズはね、それぞれに使う用途が違うのよ。それより、これからこのお互いの体をどうするかよ」
凛(中身は陸)「でもなんか自分の体を目の前で見ると不思議……というか恥ずかしい」
あまりもたるんだ体を見て申し訳なさと恥ずかしさが入り混じっていた。
陸(中身は凛)「確かにそうね。客観的に見れるというか、なんというか。ただ、私は1秒でも早く自分の体に戻りたい!」
凛(中身は陸)「昨日ぶつかった石碑がある場所に行けば何かヒントが得られるんじゃないかな?」
陸(中身は凛)「ここからそう遠くもないし急いで行きましょう!」
二人の「並走」が始まった。 といっても、陸(中身は凛)が100キロの巨体を引きずり、地響きのような足音を立てて進む横で、凛(中身は陸)が凛の軽い体でヒョイヒョイと跳ねるように進んでいるのだが、走るフォームはバラバラだ。側から見ると異様な光景だ。
陸(中身は凛)「(……っ、はぁ、はぁ! 肺が、肺が焼ける……! 膝が壊れそう、自分の体重で……!)」
一歩踏み出すたびに肉が波打ち、凄まじいエネルギーを消費する。陸(中身は凛)はあまりの辛さに、視界が白くなりかけていた。 そんな彼女を、凛(中身は陸)は澄んだ瞳でまじまじと見つめながら、他人事のようにこう言った。
凛(中身は陸)「……あの、凛さん。なんか……ものすごく重そうですけど、大丈夫ですか? 無理してません?」
陸(中身は凛)「……っ! 誰の! 体の! せいだと、思ってるのよ!!」
陸(中身は凛)の怒声が町に響き渡る。
凛(中身は陸)「ひぃっ! ごめんなさい! でも俺も、この体が勝手に弾んじゃうっていうか、羽が生えてるみたいに軽くて制御不能なんですって!」
陸(中身は凛)「走りながら!喋れない!黙って!走りなさい!」
10分かけてようやく石碑の前に到着した。普段なら5分程で息も切らさずに行ける距離を汗だくになりながら凄い形相になりながら、なんとか着くことができた。
陸(中身は凛)「ただのジョグがレース並の疲労ね」
あり得ないほどの重さに改めて絶望していた。
凛(中身は陸)「僕の体がすみません……」
陸(中身は凛)「それより、石碑になんか書いてある!ちょっと呼吸苦しいから読んで」
今にも倒れそうなくらいの疲労だ。
凛(中身は陸)「えーとですね、お告げを守らねば元に戻ることは無いと書いてあります」
陸(中身は凛)「ということは、この走ったら今にも死にそうになる体で本当に駅伝で全国を決めなきゃいけないってこと!?」
凛(中身は陸)「恐らくそうだと思います……」
陸(中身は凛)「絶望的な状況ね……駅伝の県予選は半年後よ!?仮に運良く全国行けたとしても半年はこの体でいることが確定じゃない!私の青春返してー!!」
思わず、大声で叫んでしまっていた。
二人がそんなやり取りを繰り広げているのを、遠く離れた場所から見つめる影があった。
羽瀬 駿だ。 彼は毎朝ランニングをしており、たまたま2人を見つけてしまった。
駿「(……凛。あんな、どこの馬の骨ともしれない男と何を……)」
遠目から見れば、可愛い妹が昨日ぶつかった100キロの巨漢と密会しているように見える。
段々と2人の近くに向かって走っていく。
そんな兄の視線に気づかぬまま、2人は決断をしなければいけない状況だった。
陸(中身は凛)「……不動くん、因みにあなた。小学生の時、どんな運動をしてたの?」
凛(中身は陸)「え? ああ……。野球をしていました。練習では毎日、かなり重いタイヤを引かされてました。あとは、ひたすらスクワット100回腹筋100回、背筋100回とか。……だから、その反動で中学では絶対動きたくないって決めたんです」
凛は驚愕した。 この100キロという巨体を、これまでのぐうたら生活で一度も「膝を壊さずに」支えてこれた理由。それは、かつての苛烈な練習によって作り上げられた、圧倒的な「骨格の太さ」と「深層筋肉」だったことに。
陸(中身は凛)「(……これ、ただのデブじゃないかもしれない。もしかしたら磨けばなんとかなるかも……?)」
陸(中身は凛)の瞳に、初めて「希望」の火が灯る。頭の中で半年間のシミュレーションを始める。少しの沈黙の後に何かを閃いた。
陸(中身は凛)「私ならいけるかも……ていうかやるしかない。不動くん。あなた、いい素材を持ってるかもしれない。……半年で肉体改造して元の体に戻れるようにするわ!」
凛(中身は陸)「は、はい……。僕の体は好きに使って下さい!」
そこへちょうど凛の兄である駿が2人の元に到着する。
駿「体は好きに使って下さい。だと!?」
2人は急な駿の登場に驚きを隠せない。
凛(中身は陸)「(ヤバい!何とか誤魔化さないと!)ち、違うのよお兄様!昨日のお詫びに少しだけ、不動くんのダイエットに付き合ってあげるって話をしていたの!」
駿「凛!お兄様は2人だけの時にしておけ!不動!本当か?」
陸(中身は凛)「(お兄様?)そ、そうなんだ。ほら僕ってこんな体だから絞らなきゃと思って凛さんに相談していただけだよ!」
白々しい会話が駿にとってはどこか違和感を感じている。
駿「まぁいい。凛、今はあまり余計なことは考えるな。用が済んでいるなら帰るぞ」
半ば強制的に帰る事になった。
陸(中身は凛)「(お兄ちゃん、私のこと心配してくれているんだ。でも何か1人で帰るのは寂しいものね)」
2人で帰る後ろ姿を見て孤独感を感じていた。
駿「凛、さっきのことなんだけど」
ビクッとなる。
凛(中身は陸)「(ばれたかな??)どうしたの?」
駿「自分のこと、僕って言ってたよな?」
凛(中身は陸)「そ、それがどうしたの?」
駿「……悪くない。たまには、そういうのも」
凛(中身は陸)「(ただのシスコンかい!)はは」
焦って損したなという気持ちと呆れている気持ちが入り混じる。
土日は陸(中身は凛)は自室に篭り、この体をの計画と準備のためにノートをひたすら書いている。
凛(中身は陸)は陸(中身は凛)から報告、連絡、相談を徹底されて面倒くさく思いながらもこんなに凛との連絡取れる事に嬉しくも思っている。
週明けの学校へ登校は不安しかない
少しずつ投稿していきますので多くの方に読んでいただけると嬉しいです!




