【最終話】未来へともに走る
ゴール後、陸(中身は凛)の元に男子部が集まる。その中で、あの駿が静かに目を抑えて泣いていた。それを察して陸(中身は凛)が駿の近くに行く。
陸(中身は凛)「駿くんがこのチームをまとめてくれたから、みんなで勝つことが出来た。本当にありがとう」
鷹斗「俺はあんなヘマをしてやらかしたのに……先輩達、本当にカッコ良かったっす!!!ありがとうございます!!!」
鷹斗も泣きながら感謝を伝えた。
犬飼「お前ら男なんだから泣くなよぉ……ぐすっ……うっ……」
隼人「犬飼、お前が1番泣いてるだろ」
隼人はいつも通り冷静にツッコミを入れたが、隼人の目も潤んでいた。
佐竹「ぐっ……ぐすっ……みんなとタスキを繋げて本当に良かった」
亀山「佐竹……ナイスランだったよ。お前が1秒でも遅ければ優勝は無かった。だから胸を張っていこう」
佐竹と亀山は熱い抱擁を交わす。
駿「俺は3年間、全国駅伝で走ることをずっと夢に見てきた。みんなのお陰で叶えることができたよ。本当にみんなありがとう」
駿の言葉に犬飼と鷹斗は更に泣いた。
応援をしていた、女子部も男子部に合流をした。
桃葉「みんなぁ!おめでとう!これで男女で全国大会出場!」
烈華「最後はヒヤヒヤしたけど、何とか勝ててホッとした。おめでとう!」
凛(中身は陸)「みんなの想い、走りに出てた。みんな輝いていた!おめでとう!」
全員が称え合っている中で駿が陸(中身は凛)に問いかけた。
駿「不動。本当の自分は取り戻せたか?」
陸(中身は凛)「入部の時のこと覚えててくれたんだ。無事に取り戻せたよ。この駅伝部じゃなければ、みんなとじゃなければ取り戻せなかった」
駿「そうか。それなら良かった」
駿は陸(中身は凛)にそっと微笑んでいた。
仲間達で喜びを分かち合い、表彰式が終わってもしばらくは会場で優勝の余韻に浸っていた。
帰宅後、凛と陸は今日、寝たら体が元に戻るというのが直感で何となく分かった。
翌朝。
朝起きると見覚えるのある、懐かしい部屋。腕を見ると厚みがあり、いつもよりも筋肉質だ。
陸「本当に元の体に戻ったんだ。夢のような凄い出来事だったな」
起き上がろうとすると、夏祭りで取ったカピバラのぬいぐるみが枕元にあった。そこには手紙が挟まっており、すぐに手に取って読んでみる。
「拝啓 陸様 この手紙を読んでいる時は体が戻っている時だと思います。朝、起きれたら5時に山の麓公園に来て下さい。 凛より」
陸は慌てて時計を見ると4時45分だったので慌てて準備をした。
霧がかかる公園に急いで向かうとベンチに凛の姿があった。
凛「陸くん、おはよう。私達、元に戻れたね」
陸「本当に戻れたね。不思議な体験だったよ」
まるで久しぶりに再開した2人のようなぎこちなさがあった。
凛「そうだね。男女ともに全国出場を決めることが出来てとても嬉しい。私達の入れ替わりが無ければ出来なかったと思う」
陸「凛さんは嫌だったかもしれないけど、僕は凛さんと入れ替われて本当に良かった。走る楽しさ、仲間との思い出や絆、楽しいことも、辛いこともたくさんあったけど、全ての経験が自分の成長の糧になった。入れ替わって無ければ僕は今頃、時が止まったかのようにあの部屋で何もない毎日を過ごしていたと思う」
凛「私は体が入れ替わって最初の頃は嫌で嫌で仕方なかった。走ることなんてできる体じゃなかったけど、練習をしていくうちに、どんどんと目に見えて成果がでるのはやりがいはあったよ。明日はもっと痩せてやる!って毎日思ってた。後は、男子部の中で練習していく内に、男子部の知らなかったのことをたくさん知ることができ、絆を深められたのも私の中では大きかった。だからこそ、このチームで絶対に勝ちたい!って思えたから頑張れたんだよ」
陸「あんなに重かった体を絞り切って、ここまで走れる体にして凄いよ。それに最後の走りは圧巻だった。自分の体だけど、素直にカッコいいと思った」
凛「陸くんの体だからこそ、あの走りができたんだよ。陸くんはこの体のポテンシャルに気付いてないだけ。もっと練習すれば、必ずまだまだ速くなれる」
陸「そうかな。へへ。佐竹も言ってたけど、僕も高校で駅伝を走るよ。凛さんが鍛えてくれたこの体でどこまでやれるか挑戦してみたいんだ」
凛「陸くんの活躍、楽しみね。私も陸くんが鍛えてくれたこの体で上を目指す。入れ替わる前はこれ以上、速くなれるか不安だったけど、陸くんのお陰でまだまだ速くなれる!って自分を信じられるようになったの。互いに最高の走りを見つける新たな旅を始めましょう!」
凛が陸に握手を求めて陸が凛の目を見つめてギュッと手を握った。手を離すと少し寂しそうに陸が口を開いた。
陸「凛さん……凛さんと過ごした日々は僕にとって宝物なんだ。だから体が元に戻ったら急に、ただの駅伝部の仲間になるって思うとが寂しく感じてしまう。けど寂しいなんて言って終わらせたくないんだ!」
凛「ふふ。大丈夫よ。陸くんは私にとっては運命を共にした特別なパートナーだから、ただの仲間ではないよ」
陸は大きく息を吸って大声を出す準備をして、覚悟を決めた顔をしていた。
陸「ぼくは走ることが大好きになった!でも凛さんのことは、もっともっと大好きなんだ!!!ぼくはこの体が走れるうちはずっとずっと死ぬまで走り続ける!その隣を凛さんに走っていてほしい!!!ぼくと付き合って下さい!!!」
陸は顔を赤らめながら、全ての想いを凛に伝えた。凛は小悪魔的な笑顔で陸を見ている。凛の体の時に陸はやったこともない笑顔だ。
凛「陸くん、それじゃあ私達がぶつかった石碑まで競争して勝てたら付き合ってあげる!いくよ?ヨーイドン!」
凛はフライングスタートをして陸は出遅れた。
陸「あ、ずるい!待って!」
陸は凛の後を追って走り出した。
陸「(体が軽い……というより凛さんの体とは違って馬力を感じる。これが凛さんの言ってた僕の本当の走りなのか)」
先にスタートした凛をどんどん、差を詰めて最後の100mで抜かし、陸が先に着いた。
凛「陸くん、初めて会った朝のこと覚えてる?あの時も同じようにここまで走って10分もかかったけど、今回は3分で着いちゃったね」
陸「あの時は、100キロも体重があったもんね……」
凛「陸くんの体が重くて、めちゃくちゃキツかったんだから!」
陸「あの時はごめん……凛さん」
凛「この勝負は私の負けね。陸くん、速くなったね」
陸「ぼくが勝ったということは!?(凛さん、わざと負けたような……気のせいかな)」
凛の体で走っていたからこそ、どれくらいで走れるかは陸はだいたい分かっていた。
凛「私で良ければ宜しくお願いします」
凛は顔赤らめて少しだけ頭を下げた。
陸「やったー!!!こちらこそ宜しくお願いします!!!ぼくは世界一の幸せものだ!!!」
陸は嬉しさのあまり、子どものようにはしゃぎながら飛び跳ねていた。
凛「ただし!駅伝の全国大会で互いに区間賞を取らなければ別れることにする!」
凛はかつて合宿で言っていた駿のモノマネをしながら言った。陸はハイテンションから一気に冷静になる。
陸「……それは冗談?それとも本気?」
モノマネをしながら言っていたので冗談か本気か区別がつかなかった。
凛「もちろん!本気よ!全国大会まであと2ヶ月!お互いに区間賞を取れるように頑張ろ!」
陸は一瞬絶望したが、開き直った。
陸「ぼく達が起こしてきた奇跡を考えれば、区間賞なら絶対に獲れる!!!凛さん、2人で絶対に獲ろうね!!!凛さんとずっと走りたい!!!」
朝日がようやく昇り始めて、凛の顔が照らされ、眩しい光の中で陸に返事をした。
凛「陸!一緒に走ろっ!」
朝日に照らされた二人の影が、どこまでも並んで伸びていった。
〜fin〜
最後まで読んで頂きありがとうございました。これだけの多くの方々に読んでいただたこと大変感謝しております。スポーツにおいて、凄い成績を出した際に漫画やアニメを超えたと表現されることがあります。近い将来、中学生でも駿や凛のタイム超える選手が現れると思っています。中学生の駅伝がもっと注目されるようになると嬉しいと思い、書かせていただきました。本当に最後まで読んでいただきまして誠にありがとうございました。




