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兄弟の絆

タスキを貰ってすぐ、鷹斗と王杜中の選手はトップギアで飛ばし抜きつ抜かれつを繰り返している。


鷹斗「はぁはぁ(しつこいな!振り切ってやる!)」


王杜中の序盤からの仕掛けとチームのために少しでも前で渡そうという意識が強過ぎて鷹斗は周りが見えなくなっていた。


最初の500mを過ぎると王杜中はついてこず、鷹斗が単独トップとなる。


鷹斗「はぁはぁ(よし。このペースでいけば相当貯金は作れる)」


1kmを颯爽と通過した。


亀山「1kmの通過……2分41秒!2分41秒!?」


亀山は見たこともないタイムに2度言ってしまった。鷹斗は走りに集中していて亀山の声が聞こえていない。


亀山「(オーバーペースと言うべきなだったのか……調子が良いよと言うべきだったのか……大丈夫かな……)」


中継所では、王杜中のエース・千石が駿の元へ来た。


千石「羽瀬、同じ5区のようだな。俺は区間新でお前に勝つ。そしてチームも優勝させる」


駿「千石、どっちが速いかは走れば分かるさ」


千石は不敵な笑みを浮かべていた。


鷹斗は1km通過後に体の異変を感じていた。


鷹斗「はぁはぁ(うまく前に進めない……呼吸がキツい……腕が振れない……おかしい……何が起きているんだ?)」


鷹斗はペース配分を失敗し、体中は乳酸が溜まってスピードを出せない。王杜中に並ばれることなく、あっという間に抜かされた。


鷹斗「はぁはぁはぁ(足が鉛のように重い……どうすればいい?分からない……このまま遅れたら優勝ができない……)」


2kmの通過は王杜中がトップで通過。女子部のみんなが鷹斗があまりも来ないことに心配していた。


烈華「鷹斗……何かあったのかもしれない……」


2位の選手が通過後、3位で鷹斗が見えてきた。


凛(中身は陸)「鷹斗くん!!!ファイト!!!」


桃葉「頑張れ!!!鷹斗くん!!!」


烈華「鷹斗!!!粘るよ!!!」


鷹斗の異変に気付き、女子が必死に応援するも鷹斗には聞こえていなかった。あまりにもヘロヘロな走りに、本人の前で女子達もこの1kmのラップは言えなかった。


凛(中身は陸)「この1kmは3分33秒……前半のオーバーペースの影響か……」


桃葉「大丈夫だよ。次は隼人くんだもの」


鷹斗「はぁはぁはぁ(先輩達……ごめん……俺のせいで……何故かもうスピードが出せない……こんな感覚は初めてだ……こんな大舞台でやらかすなんて……)」


鷹斗の目からは光が失われていた。その後も3人に抜かれて6位まで落ち、残り500m。


陸の母「鷹斗くん……辛そう……頑張れ!鷹斗くん!」


陸の父「頑張るんだ!もうすぐ中継所だよ!」


陸の母「鷹斗くんはまだ1年生だから仕方ないわよ」


陸の父「よく頑張ったよ。1区の犬飼くんの快走で一瞬、夢が見れたじゃないか」


応援する側も本人の前では大きな声で応援するも、重い空気が漂っていた。


鷹斗「はぁはぁはぁ(ごめんなさい……みんなで全国に行きたかったのに……先輩達とまだ走りたかったのに……俺のせいで……先輩達の3年間を無駄してしまった)」


残り300m、男子のメンバーが必死に応援するも鷹斗の耳には届いていなかった。


しかし、聞き馴染みのある声が聞こえてきた。


隼人「鷹斗!!!最後まで諦めるな!!!俺が何とかする!!!だから最後まで走り切れ!!!」


隼人の今までに聞いたことのない大声にみんなが驚いて応援するのも忘れていた。


犬飼「隼人のやつ、熱いじゃねぇか」


佐竹「師匠!!!頼もしい!!!」


鷹斗「はぁはぁはぁ(兄貴があんなに大声を出しているの初めて聞いた……あの目……諦めてない!何で俺は勝手に諦めてたんだ!体は動かないけど、出し切れるだけ出し切る!)」


トップの王杜中が1位でタスキを渡して、その後も続々と中継所ではタスキ渡しが行われ、5位までの中学が渡し終えた。


鷹斗は半泣きになりながら、もがき苦しみ、6位でようやく隼人にタスキを渡した。


鷹斗「はぁはぁはぁ。兄貴!ごめん!」


隼人「大丈夫だ。後は任せろ」


隼人はタスキを受け取り、ふーっと息を吐き、覚悟を決めた顔で走り出した。


村田先生「トップとは40秒差だ!こっからだぞ!」


鷹斗は悔しくて、チームに迷惑をかけた気持ちで顔を上げられずに泣いている。


鷹斗「先輩達……本当に……ご」


鷹斗が謝ろうとしたが駿が遮る。


駿「鷹斗!まだレースは終わっていない。反省会は全て終わってからだ。これから走る仲間を応援するんだ」


佐竹「そ、そ、そうだよ!俺だって不甲斐ない先輩だけど最高の走りをする!」


佐竹は自分の出番が迫って緊張しているが、鷹斗を励ました。


陸(中身は凛)「隼人くん、あんなに感情を出したの初めて見た。きっと熱い走りをしてくれるから、大丈夫だよ!」


佐竹「師匠は恐らく、この3年間、誰よりも練習したと思う。だから絶対に王杜中との差を詰めるよ!」


隼人は淡々と走っているが普段よりも速いペースだというのは自覚している。


隼人「はぁはぁ(俺の走りじゃないが、ここは攻める走りでいこうか)」


最初の1kmの通過時点で2人を抜かし4位まで上げた。


亀山「最初の1kmは2分50秒!トップとは28秒差!詰めてるよ!(かなり速いペースだけど、なんだろう、そのままいけそうな雰囲気がある)」  


隼人「はぁはぁ(鷹斗が走りで失敗するのは初めて見た。相当なプレッシャーだったのだろう。俺がもっと速ければあいつに負担がかからなかったのに。すまなかった、鷹斗。全国大会ではしっかりとお前の走りを色んな人に見てもらうんだ。そのためにも俺は限界を超える!)」


隼人の走りは駿にも負けず劣らずのスピードで相当キツく、顔が歪んでいるがペースダウンしないように我慢している。不整地の練習を欠かさずにこなして強靭な足腰となり、速いペースにも耐えられていた。


2km通過時点では更に2人を抜かしており、2位まで順位を上げた。


桃葉「隼人くん!!!この1kmは2分53秒!!!めちゃくちゃ速いよ!!!頑張れ!!!」


凛(中身は陸)「トップとは13秒差!!!このままいけば抜かせるよ!!!ラストだよ!!!」


烈華「隼人!!!あなたの本当の走りはこんなもんじゃない!!!まだまだペースを上げられるわよ!!!」


隼人は烈華を一瞬だけ見て、ほんの少しニヤリと笑ったのが分かった。


隼人「はぁはぁはぁ(速いペースで走ってどんどん抜かすのが楽しい……思い出した……俺は走るのが好きだったんだ)」


残り500m地点。


陸の母「トップの後ろに隼人くんがいる!この勢いなら抜かせるんじゃない!?頑張れ!!!隼人くん!!!」


陸の父「俺には分かる。彼が真のエースだ!あの速さは間違い無い!隼人くん!!!いけー!!!」


陸の母「あなたさっき犬飼くんがエースだって言ってたじゃない」


美月も既に喉が枯れそうになりながら大声で応援している。


美月「もうすぐだよ!!!ファイト!!!」


ゾーンに入っている隼人はラストスパートをかけて、残り100mで一気に王杜中を抜き去り、そこから更にペースを上げた。


隼人「はぁはぁはぁ。佐竹!!!頼んだ!!!」

呼吸が苦しかったが、大声でタスキを託した。


佐竹「師匠!!!行ってきます!!!」


3秒差の2位で王杜中が続く。


陸(中身は凛)「8分40秒で区間新!5人もごぼう抜きして一気に1位!カッコよすぎでしょ!」


走り終わった隼人に仲間達が駆け寄る。


駿「隼人。素晴らしい走りだった。ありがとう」


鷹斗は隼人に対してうまく言葉が出せないでいた。


鷹斗「兄貴……俺……」


隼人「まぁ、今回はたまたま、うまくいっただけだ。同じ走りはもうできないよ」


隼人は鷹斗の肩を軽くポンと叩いた。鷹斗は嬉しそうにしている。


鷹斗「俺……兄貴の弟で良かった……カッコよかったよ!」


隼人「これからもカッコいい兄貴でいられるように走り続けるよ」


ここまで読んで頂きありがとうございます!!!男子の駅伝、引き続き読んで頂けますと嬉しいです!!!

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