繋がる想いのタスキ
陸の父「どんどんと1位との差が開いていく……頑張ってほしいが、残り2区間での逆転は難しいか」
陸の母「アンカーには速い凛ちゃんがいるからまだ分からないわよ!」
烈華は序盤から中距離走のようなスピードで飛ばしている。
烈華「はぁはぁ(2kmという短い区間でどこまで詰められるか。一か八か、序盤から攻めるしかない!)」
段々と前との差が縮まり、1km地点で2人を抜かして2位まで浮上した。
亀山「九条さん、この1kmは3分7秒!前との差は25秒!ファイト!」
烈華「はぁはぁ(こんだけ飛ばして8秒だけか……残り1kmでもっと詰めないと)」
烈華は快調に走っているのに前に中々追いつけず焦りを感じていた。
烈華「はぁはぁはぁ「(もっと差を詰めないといけないのに全然追いつけない……それどころか差が開いている。悔しいけど鬼木さんが秘密兵器って言うだけの実力者なのは確かね……)」
陸の母「選手が見えてきた!蒼姫中の選手、かなり速いわね。少し離れてるけど、烈華ちゃん見えてきた!2位まで上がってる!」
陸の父「最後だよ!頑張れー!!!」
烈華「はぁはぁはぁ(凛が見えてきた……ごめん、あまり差を詰められなかった。自分の中では最高の走りだったのに……でも凛なら逆転してくれるって信じられる。私は知っている。小学生の頃から無敵で無敗の凛のこと。そのお陰で私は速くなれた。あなたの背中をずっと追いかけてきたから。あなたにこのタスキを渡す瞬間をずっと夢見てた。だって私はあなたのファンだもの。みんなの想い、私の3年間の想いをあなたに渡したい!)」
中継所では蒼姫中がものすごい勢いでラストスパートをかけてアンカーの鬼木に渡した。
凛(中身は陸)「烈華!!!ラスト!!!」
凛(中身は陸)は大声で両手を上げて待っている。烈華も勢いよくラストスパートをかけてやって来た。
烈華「はぁはぁはぁ、凛!後はお願い!」
烈華はタスキを渡し、背中を押した。
凛(中身は陸)「後は任せて」
頼もしい表情でタスキを受け取り、序盤から猛スピードで飛び出していった。
村田先生「トップとは32秒差だ!ファイト!」
烈華は息を切らしながら、凛の走る後ろ姿を見つめていた。
桃葉「烈華ちゃん!お疲れ様!6分14秒で区間新記録だよ!!!」
烈華は呆れた顔をしている。
烈華「区間新なのに、1秒しか詰められなかったのかぁ」
隼人が烈華の元に労いに来た。
隼人「お疲れ様。相手も相当速かったね。烈華じゃなきゃこの区間は任せられなかった。希望を繋いだと思う。ナイスラン」
烈華「ふん。たまには褒めてくれるのね。ありがと。このタイム差なら凛ならやってくれるわ」
凛(中身は陸)は前の鬼木だけを見て集中して走っている。
凛(中身は陸)「(32秒……単純計算で1kmで11秒ずつか……温存してる余裕は無い!)」
鬼木も凛(中身は陸)に負けないくらいの前半から突っ込んでおり、1kmを過ぎてもペースが落ちない。
凛(中身は陸)も少し遅れて1kmを通過した。
亀山「羽瀬さん!1kmは3分5秒!前との差は25秒!いけるよ!!!」
亀山も今日1番の大声で応援をした。
凛(中身は陸)「はぁはぁ(これだけ飛ばして1kmで7秒……本当に僕にやれるのか……)」
鬼木「はぁはぁ(想定通りね。このペースなら逃げ切れる)」
互いのチームの応援もヒートアップしている。
犬飼「凛ちゃん!!!差は詰まってるよ!!!」
佐竹「羽瀬さん!!!頑張れ!!!」
凛(中身は陸)「はぁはぁ(みんなの応援が力になる。凛さんの言うとおりだ……だけど僕に追いつくことは出来るのか……)」
1.5kmの地点で凛(中身は陸)は速いペースを維持している。鬼木も後半に差し掛かっても一定のリズムを刻んでいた。
鬼木がそのまま先頭で走り、残り1km地点を通過。蒼姫中の応援も優勝への期待から、この日、最大の応援になる。
凛(中身は陸)も少し遅れて残り1km地点を通過した。そこでは駿と鷹斗が応援している。
駿「凛!この1kmは3分4秒だ!前との差は17秒!最後の1km!自分を信じるんだ!」
駿もこの日、1番の大声で応援している。凛(中身は陸)は駿に対して手を上げて反応する。
鷹斗「ラスト!ラスト!ラストスパート!」
鷹斗も全力で応援している。
凛(中身は陸)「はぁはぁ(残り1kmで17秒……諦めたくない……諦めたくないのに頭で考えると無理だって思ってしまう……みんなごめん……凛さんごめん……みんなの目標叶えてあげられない……)」
凛(中身は陸)が必死に前を追っている中で、前とのタイム差を聞いて一瞬だけ、目に光が失われたのを応援していた陸(中身は凛)は見逃さなかった。
陸(中身は凛)「陸くん!!!私の体ならもっと速く走れる!!!私を信じて!!!自分を信じて!!!」
陸(中身は凛)の大声で凛(中身は陸)は諦めかけていた心に火を灯し、みんなの想いが詰まったタスキをギュッと握りしめた。
凛(中身は陸)「はぁはぁ(凛さん……そうだよ……この体はあのトップアスリート羽瀬凛の体だ。この体を信じて最後まで走り抜く!不可能を可能にするために100%、いや120%の力を引き出してラストスパートをかけるんだ!!!)」
鬼木の耳にも仲間から17秒差を教えられる。
鬼木「はぁはぁ(残り1kmで17秒差ならセーフティリードね。羽瀬さんの得意のスパートをかけても追いつくのは無理!勝った!!!)」
残り500m地点。陸の父と母が祈るように待っている。最初に見えたのは鬼木だ。
陸の母「……凛ちゃんじゃない」
陸の父「いや、後ろから来てる!!!物凄いラストスパートだ!!!」
凛(中身は陸)はゴール直前でするようなダッシュをして前を追いかけていた。
陸の母「凛ちゃん!!!追いつけるよ!!!」
陸の父「頑張れ!!!もっと!もっと!もっと!ラストスパート!」
凛(中身は陸)「はぁはぁはぁ(肺が焼けるようだ。視界も狭い。けどお父さんとお母さんの応援はしっかり聞こえた!絶対諦めない!!!)」
美月も近くで応援していた。
美月「凛!!!もうすぐでゴールよ!!!」
美月も手を口に当てて、声が届くように必死に応援している。
凛(中身は陸)「はぁはぁはぁ(美月さん……必ず勝つから見ててね)」
あり得ないスピードで迫ってくる凛に鬼木は焦りを感じていた。
鬼木「はぁはぁはぁ(意味が分からない……あんなにタイム差があったのにもう後ろにいるなんて……それにあの目……全く諦めていない。ラストスパートでは負けない、絶対負けられない!)」
鬼木は凛の気迫の走り、諦めない目に焦りや恐怖を感じたが、強い気持ちでそれらを心の奥にしまいこみ、気力と勝ちへの執念を前に出した。
凛(中身は陸)「はぁはぁはぁ(もう少しだ………絶対抜かす!!!)
ゴール付近では女子部の仲間たちも必死に応援している。ラスト200mで遂に鬼木の背中を捉えた。
桃葉「凛ちゃん!!!凛ちゃん!!!」
烈華「凛!!!ラスト!!!」
無理だと思われた17秒差を凛(中身は陸)の豪快なラストスパートで残り100mで遂に追いついた。鬼木も負けじとラストスパートをかけて、そのまま2人が並走。互いに大きく呼吸を乱し、必死に腕を振って、両者一歩も譲らない。
凛(中身は陸)「はぁはぁはぁ(凛さん!!!最後の力を使います!!!)」
スパート合戦に両チームの応援の声が会場中学に響いている。凛(中身は陸)が残り50mで3段階目のスパートをかけて、鬼木の前に出た。鬼木も負けじと食らいつく。それでも凛(中身は陸)の凄まじいスパートの前には及ばなかった。
最初にゴールテープを切ったのは凛(中身は陸)だった。鬼木とはほぼタイム差無し。
鬼木「はぁはぁはぁ、あのタイム差からまさか負けるなんて……」
ゴールの瞬間、一斉に歓声を浴び、女子部員達が笑顔と嬉し涙を流しながら集まってきた。桃葉と烈華は力を使い果たして倒れそうな凛(中身は陸)を抱き抱える。
桃葉「やったー!凛ちゃん!優勝だよ!全国だよ!うぇーん」
桃葉は嬉し涙を流している
烈華「凛、お疲れ様。私達、優勝したんだね。みんなの力で。それにしても凛のタイム9分3秒!?区間新どころか中学生の日本記録並のタイムじゃない。とんでもない記録よ!」
烈華も桃葉につられて涙が流れだす。
凛(中身は陸)は呼吸が乱れてすぐには喋れなかったが、仲間に向けてガッツポーズをする。
凛(中身は陸)「(凛さん、目標を叶えられたよ!みんなの走り、応援の力強さ、凛さんのポテンシャルで乗り越えられた)」
女子の余韻が冷めやらぬ中、いよいよ男子のスタート時間も迫ってきた。男子のメンバーは応援後にアップを再開し、スタートに向けて準備をしている。
陸(中身は凛)も離れた場所で優勝を喜び、周りにはバレないように泣いていた。
陸(中身は凛)「陸くん……おめでとう。凄い走りだったよ。私も続くから待っててね」
女子の優勝を受けて、男子部の全員が優勝への熱量を更に高めることができた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!!!毎日、多くの方に読んでいただけて嬉しいです!!!男子のレースも引き続き読んで頂けますと幸いです!!!




