6人のメンバー確定。7人の結束
犬飼、佐竹、亀山の3人の鬼気迫る走りに誰も言葉が出なかった。倒れこんでいる3人は力を使い果たし、呼吸が荒く、すぐに起きることができない。
その中で泣いていたのは亀山だった。俯いたまま、顔を上げることができず、肩を震わせて、落ちる涙と汗が地面に染み込んでいく。
亀山「ぐっ……うっ……うっ……」
佐竹は仰向けのまま大の字で倒れて空を見上げていた。本当はガッツポーズをして喜びたかったが、走れないことが決まったメンバーを思うと、何も言えず、疲れきった体を起こさずにいた。
佐竹「(亀山……人目もはばからず泣いてる……)」
犬飼も悔しそうに地面を叩き、歯を食いしばっていた。
犬飼「あぁ……俺は負けたのか……」
犬飼は体を起こすと駿の方へ歩み寄る。
犬飼「駿、俺の3年間はここで終わりだ。お前とタスキを繋ぎたかったが、叶わなかった……役に立てなくてすまなかったな」
犬飼が小さい涙をこぼしながら、霞む視界の中で駿の足元だけを見ていた。
駿「……犬飼、何を言ってるんだ?お前は勝ったんだぞ」
キョトンとした顔で犬飼は駿のことを見た。
犬飼「えっ?……俺が勝った?」
駿「そうだ。夢中で走っていて気付かなかったのか?犬飼と佐竹が9分55秒で5位、同着。亀山が9分56秒で7位だ」
犬飼は追い込み過ぎて酸欠状態になり視界が小さくて周りが見えず、負けたと勘違いしていた。
犬飼「俺が駅伝を走れる……走れるんだ俺が。タスキを繋げる……」
犬飼はさっきとは違う涙をこぼして、小さく見えないようにガッツポーズをしていた。
負けた亀山は最後まで立てずにいたが、先に立ち上がった佐竹が無言で手を差し伸べて、亀山はその手を取り、立ち上がる。
亀山「俺の走りは届かなかった……もっとやれる練習があったんじゃないか……もっと強気で走れば良かったんじゃないか……後悔することが沢山ありすぎるよ……」
駿が亀山の近くに来て肩を軽く叩く。
駿「亀山、良い走りだった。だが今回は7人目のメンバーとして待機をしていてくれ。当日は何が起こるか分からない。いざという時は走ることもある。だからチームのために走る準備をしていてほしい。まだ、終わりではない」
亀山は割り切れずにいたが、駿の言葉で気持ちが落ち着いた。
亀山「……キャプテン。分かった。みんな、俺に出来ることがあれば何でも言ってくれ。さっきは取り乱して悪かった」
陸(中身は凛)「ナイスランだったよ亀山。7人目の選手がいるだけで、選手は安心できるんだ」
鷹斗「不動さん、駅伝走ったことあるんすか?」
陸(中身は凛)「いや、きっとそうなのかなって!」
陸(中身は凛)は焦りながら誤魔化した。
隼人「俺達、男子駅伝部は7人で全国に行くんだろ?」
鷹斗「珍しく兄貴、熱いね!」
隼人が恥ずかしそうに鷹斗から顔をそらす。
駿「隼人の言う通りだ。この7人で全国へ行く。1人も欠けてはいけない。全国で俺達の走りを見せるぞ」
駿の掛け声に全員が「おう!」と答える。
最後に村田先生が締める。
村田先生「皆さん、今日は良く頑張りました!当日の区間配置は1週間前に伝えるからそれまでの僅かな期間、引き続き練習に励んでいきましょう!」
近くまで来て、話を聞いていた女子部員も泣きそうになっていた。
烈華「私達も負けてられないわね」
桃葉「男子部のみんな、カッコよかったよ……こんなにも熱い想いを見せられたら私達も頑張らないと!」
凛(中身は陸)「そうだね。みんなでいこう。全国に!(亀山……ナイスランだったよ……亀山の分まで頑張るから)」
その後、女子も選考会を8人で実施して、5人が決まった。凛、烈華、桃葉と2年生の白石、足立だ。
翌日、登校中。陸(中身は凛)は後ろから声をかけられる。
「おい、不動!」
振り返ると犬飼がいた。だが、その姿は昨日とは違い、頭は坊主になっていた。
陸(中身は凛)「あっ、その頭!」
笑いをこらえるのに必死だった。
犬飼「お前に負けたら坊主にする!って合宿の時に言ってたからな!まぁ俺なりに気合いも入れたかったからな!」
陸(中身は凛)「あぁ、忘れてたよ」
犬飼「なぁにぃ?まぁいいや。そんなことはどうでもいい。おい不動、ぜってー全国行くぞ。あと次は負けねぇからな!」
陸(中身は凛)「ふん。全国は当たり前だよ。こっちこそ次も負かすからな!」
犬飼「てめぇ、言うようになったなぁ!てか口調が何か誰かに似てきてるような。まぁ気のせいか」
陸(中身は凛)「(犬飼くんの前では喋り方に気をつけよ……でもようやく、犬飼くんにも認められて嬉しい)」
犬飼はこの日、みんなから坊主をイジられていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!走れる喜びと同じくらい、読んでいただけている喜びを噛み締めています!もうすぐ駅伝が始まりますので引き続き読んで頂けますと嬉しいです!




