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元100キロの覚醒。合宿の終了

6日目の最終日の朝食、食堂に一同が集まる。犬飼は引き締まった表情をしていた。


犬飼「みんな、昨日は迷惑をかけて申し訳なかった。色んな面で暴走してしまって反省している……足は少し違和感があるが、問題は無い。ただ、万全ではないのも事実だから最終日の今日はサポートをさせてくれ」


頭を深々と下げて、いつもの犬飼の声のボリュームに戻っていた。


駿「分かった。安静にして合宿後から万全な状態ですぐ練習できるようにしてくれ。なお、今日は合宿最後の練習となる。全員が思い切って走れるように頼んだぞ」


駿は相変わらず、淡々と話をする。


鷹斗「誰も気にしてないっすよ!」


全員が鷹斗の言葉に賛同するように頷いていた。


桃葉「(犬飼くん、頑張れ!)」


犬飼は桃葉と目が合い、小さく笑った。


朝食を終えて、準備をして、いざ最後練習に。合宿の中では1番涼しい気候で走りやすいコンディションだ。


駿「5000mのペース走を1キロ4分ペースで走る。この練習なら全員がこなせるから、チーム分けはせずに全員で実施する。なお、ラスト400mはフリーとするから最後は出し切って終えよう」


鷹斗「駿さん!ラスト負けないっすよ!」

鷹斗は駿に向かって大声で宣言した。


亀山「佐竹、俺も負けないからな……」

亀山は声が小さかった。


佐竹「お、おう!疲労はピークだが、やってやる!」


陸(中身は凛)「(この前、掴んだ手応えをどこまで出来るか。試してみようか)」


美月「みんな頑張ってね!」


犬飼を除いた6人で一斉にスタート。疲労のせいか亀山と佐竹は序盤からすぐに呼吸が苦しくなり、荒い呼吸が響いているが、それとは対照的に前を走ってるメンバーは驚くほど静かだ。亀山と佐竹は初めて駿や鷹斗、隼人など速いメンバーとのポイント練習なので意地で食らいつく。


隼人「(不動くんが不気味だ……)」


隼人の後ろを走る陸(中身は凛)の足音が小さく、呼吸もあまり聞こえないことに嫌な感覚を感じていた。


誰も引き離されずに4分ペースで4600mを通過し、ラスト400mフリーに。


最初に前に出たのは鷹斗で冷静に駿が後ろにつく。少し離れて隼人と陸(中身は凛)が走っている。


鷹斗「はぁはぁ(先行逃げ切りで引き離す!)」


ラスト200mになり、鷹斗の横に駿が並ぶ。駿の走りには余裕があり、鷹斗は更にスパートをかけるも中々引き離せない。


駿ばかりを意識していた鷹斗はその後ろからくる影に気付いていなかった。


駿の更に後ろから猛烈にスパートをかけてきたのは隼人だった。


犬飼「隼人のやつ……速いじゃねぇか……いつも俺に気を遣って練習してたのかよ……」


犬飼と同じグループで走っていた隼人は普段、手を抜いていた訳ではないが、ギリギリまで体を追い込んでいなかった。だが今日は違っていた。


鷹斗「はぁはぁ(兄貴!?まじか!)」


隼人は鷹斗を追い抜き、駿も追い抜こうとしたが、今度は隼人の横に並ぶ。


隼人「はぁはぁはぁ(駿……引き離すイメージができない……けど全力で俺の走りをぶつける!)」


ラスト100m、2人でデットヒートしていた。


隼人は駿に意識を向けていたが、その後ろからの大きな足音が迫ってくるのを感じていた。


陸(中身は凛)が短距離選手並のスピードで仕掛けてきた。


鷹斗「はぁはぁ(不動さんも!?)」


鷹斗は駿だけを意識していたのに、隼人、陸に追い越されたことに動揺していた。


犬飼「不動のやつ……あいつもあんなスピードを隠してやがったのかよ……」


陸(中身は凛)「はぁはぁ(筋肉が躍動している……お兄ちゃんを捉える!)」


その目には駿の背中だけを見ていた。


ラスト50mで隼人を追い抜く。駿は陸に抜かれないように本気のスパートをかけた。


陸(中身は凛)「はぁはぁはぁ(こんなにスピードがでるなんて!!まるで羽が生えてるみたい!)」


猛追したがそのままトップスピードの駿を追い越せず、駿が1位、陸(中身は凛)が2位、隼人が3位、鷹斗が4位。少し離れて亀山が5位、僅差で佐竹が6位だった。


犬飼「ラスト400m、駿は58秒であの不動が59秒だと……ありえねぇ……けど俺もあいつらに食らいついてやる……」


走り終わった後に陸(中身は凛)の元へ駿が駆け寄る。


駿「不動、最後のスピード、相当なキレだった。ラストだけならトップレベルと言っても過言ではない」


陸(中身は凛)「まだまだ上のレベルの人達には追いつけないけど、ラストだけなら確かな手応えを感じれたから良かったよ(ラストの自信はあったけど、ここまで速く走れるなんて……陸くんの体はどうなってるの……)」


陸は本来の体が脂肪を取り除けば筋肉質な体で、それを生かせれば爆発的なスピードを得られることは分かっていた。凛のストイックなトレーニングによりその秘められた走力を使えるようになったのだが、想像を超えたスピードを出せたことに驚いていた。


鷹斗「兄貴、お疲れ様!速かったぁー!」


隼人「まぁ、今回はたまたまだ。毎回、こんな走りができるとは限らない。不動くんには負けたけどね」


亀山「佐竹……以前よりも差が縮まってる……相当練習してるな……」


佐竹「負けは負けだ……でも、駅伝の選考会では必ず勝つ!」


亀山と佐竹は握手をして互いの健闘を称え合った。


美月「みんな速かったよ!お疲れ様!まずはドリンクを飲んで!」


走ったメンバーに美月と犬飼が給水ボトルを渡す。


犬飼「鷹斗、お疲れ!駿以外に負けるの珍しいな」


鷹斗「兄貴や不動さんに負けたのめっちゃ悔しいっす!自分の練習が甘かったことに気付いたんで、もっともっと練習して次は勝ちます!」


一方、男子の熱い練習と同じく女子も熱い練習をしていた。ラスト400mフリーで凛(中身は陸)と烈華、桃葉の3人が競り合っている。


桃葉「はぁはぁ。全国いくよー!!!」


凛(中身は陸)「はぁはぁ(桃葉さん、かなり気合い入ってるな。僕も合宿で鍛えたこのラストスパートで勝つ!)」


烈華「はぁはぁ(この2人、また速くなってる……私も負けてられない!)」


最後まで誰も譲らず、3人同時にゴールをして最終練習を終えた。


練習後のダウンをしていると他校の生徒が合宿の初日として到着し、アップをしていた凛(中身は陸)と烈華に話をかけてきた。


「久しぶりね、羽瀬さん、九条さん」


凛(中身は陸)「えっ?誰ですか?」


思わず答えてしまったが、凛の知り合いだったらどうしようと焦っていた。


烈華「凛……去年あなたが駅伝で最後に負けた『蒼姫あおひめ中学校』の『鬼木おにき』さんでしょ……」


烈華は凛が自分の負けた相手をよく覚えいなかったことに呆れていた。


鬼木「ま、まさか羽瀬さんにそんなこと言われると思ってなかったわ……今年の総体は怪我で出れなかったけど今は治って順調よ。宣言しておくわ。今年も私のアンカーで勝つ。羽瀬さん、今年もアンカーでの勝負楽しみにしてるわ」


凛(中身は陸)「去年よりも私は強くないかもしれないけど、このチームなら勝てる自信はある」


烈華「凛……?そうね。今は負ける気がしないわ」


烈火が不思議そうに凛を見ている。


鬼木「ふん。こっちにも秘密兵器がいるから!秋が楽しみね!」


鬼木はほっぺを膨らませて自チームに戻っていった。


烈華「秘密兵器ね……蒼姫中は毎年、駅伝を本命のレースとして調整してるから今年も合わせてくるはず。それでも私達が勝って、去年の借を返すわよ!凛!」


烈華が勢いよく背中を叩く。


凛(中身は陸)「そうだね。私が必ず、去年の借を返すから!絶対負けたくない!」


合宿での練習で自信を付けることができ、メンタルも成長して、心身ともに強くなっているのを実感していた。


長いようで短かった6日間の合宿。全ての練習が終わり、全員が全国への想いを更に強め、帰路についた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!合宿編はここで終わりです!次話以降も読んで頂けますと嬉しいです!

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