隼人と佐竹。師弟コンビ結成
テストが終わり、7月。休み時間に隼人の元へ佐竹が向かう。
佐竹「隼人くん!一生のお願いがあるんだ!」
隼人「何だよ、急に」
佐竹「どうすれば速くなれるか教えてほしいんだ!」
あまりにも、急な出来事に隼人は困惑していた。
隼人「いや、何で俺なんだよ」
佐竹「1番、相談しやすいかなと思って……キャプテンは話しかけにくいし……犬飼くんには怒られそうだし……後輩に聞く訳にもいかず………ライバルの2人にも聞けず……特に最近の陸は近寄りがたいくらいストイックだし……」
隼人「まぁ、簡単に言うと消去法で俺になったということか」
佐竹「9月のレギュラーを決める、タイムトライアルを想像するだけで、怖くなってしまうんだ……陸も亀山も速くなって……自分だけが置いていかれるような気がして……」
佐竹なりに考えているんだなと隼人は感心していた。
隼人「俺もそんなに良いアドバイスできるとは思えないけど……」
佐竹「この前、隼人くんとお店で会った時に亀山と一緒に映画を見たら、元気が出てきて、1人で悩んでるより、誰かに相談したら何か答えが見つかるんじゃないかと思ってさ……」
普段の隼人ならすぐ断っていたが、脳裏に烈華を思い浮かべていた。この前まで自分も落ち込んでいた時に助けてもらって、自分自身が誰かの助けになるならと思い立った。
隼人「役に立つかは分からないけど、明日の朝、5時に山の麓公園に来て。そこで何をするか教える」
佐竹「ありがとう!師匠と呼ばせていただきます!」
隼人「いや、そういうのはいいから……」
翌日、朝の5時、先に2人の影があった。佐竹は慣れない早朝に軽いジョグで2人の元へ行く。
佐竹「おはようございます!師匠!あれ、九条さんも!おはようございます!」
烈華「何で彼がいるのよ」
烈華は少し不機嫌そうだった。
隼人「まぁ、話の流れというか……」
佐竹「何か2人の練習を邪魔してしまってすみません!」
烈華「まぁ、私は問題無いけど、練習は多い方がいいんじゃないかな」
隼人「そうだね。これから俺が毎日走っているコースを走るからついてきてくれ」
佐竹「師匠!分かりました!」
烈華「隼人、いつから師匠になったの?」
烈華が笑いながら、からかってるように隼人へ声をかける。
隼人「ん、師匠になった覚えはないんだが……」
軽いアップを済ませて、いざスタート。山の方に向かってゆっくりと走りだした。不整地で走りにくさがあり、アップダウンもあり、厳しいコースだ。
佐竹「ゆっくりだけど、けっこう足にくる……」
烈華「そう。不整地でのランニングは体をしっかり安定させようとして、普段は使わない筋肉を使うからトレーニングとしては非常に効果的なの」
烈華が意外にも解説してくれた。
隼人「すぐに効果が得られる訳ではないから、毎日ここを走ればいずれ走力アップにはつながるんじゃないかな」
佐竹「はぁはぁ。ゆっくり走ってるはずなのに……2人についていくのがやっとだ……」
烈華「慣れるまではペースを上げすぎない方がいいわよ。隼人はもう3年間このコースを毎日走ってるからかなり慣れてるの」
佐竹「はぁはぁ。九条さんは師匠のこと詳しいんですね」
烈華「ただの幼馴染よ……」
走っているからか、照れているからか顔が少し赤くなっていた。隼人も照れて何を言えばいいかが分からなかったので話を逸らす。
隼人「こっから下りに入るからブレーキをかけすぎず走ろうか」
佐竹「はぁはぁ。この下り、ブレーキかけないで走れる人いるのかなぁ」
あまりの急な坂に佐竹は思わず思うように走れずにいた。そして約50分かけて元の公園に戻ってきた。
隼人「今日の朝はこれで終わり。最初は大変だけど慣れれば大丈夫だから。毎朝、ここを走ってるから来たいときに来てみて」
烈華「彼、相当キツそうだけど大丈夫?」
2人がケロッとしているのに対して佐竹は汗が止まらず、膝に手を付いていた。
佐竹「師匠……九条さんも……どおりで速いわけだ……朝、この練習した後に午後も普通に部活に参加してるなんて……キツかったけどみんなに追いつきたい、負けたくないから……明日もお願いします!」
それを聞いた隼人と烈華は少し口角が上がり、2人で目を合わせていた。
隼人・烈華「よろしく」
こうして奇妙な3人の朝練習が始まった。
佐竹だけでなく、それぞれのメンバーが胸に期するものを抱え、合宿への準備を進めていた。
自分の限界を超えるため、大切な人を守るため、あるいは、本当の自分自身を見つけるために。
夏の陽炎が揺れる中、山麓町中駅伝部。 いよいよ、運命を変える夏合宿が始まる。
ここまで読んでいただきありがとうございます!引き続きたくさんの方々に読んでいただけますと幸いです!コツコツ投稿していきますので宜しくお願いします!




