凛と陸。2人きりの部屋
凛(中身は陸)「(何故こんなに緊張するんだろう……本当の自分の家に行くだけなのに……)」
放課後、凛(中身は陸)は不動家に向けて制服姿で歩いていた。理由は1つ。あまりにも勉強が出来なさすぎたためだ。そのため陸(中身は凛)に直接、勉強を教えてもらうことにした。ちょうど今日は陸の母の帰りが遅くなるとのことだったので、不動家で勉強会を2人で開催することに。
見慣れた玄関、でもどこか懐かしくもある。インターホンを押すと中から陸(中身は凛)が出た。
陸(中身は凛)「どうぞ!まぁ陸くんのおうちだけどね。ふふ」
笑いながら家に入れてくれた。家の中の匂いや雰囲気も懐かしい。
凛(中身は陸)「お邪魔します。自分の家だけどね」
凛(中身は陸)も家に帰ってきた安堵感からかつい顔の表情がいつもよりも柔らかくなる。
いざ、2人で自分の部屋に入ると、全く違う部屋になっていた。
陸(中身は凛)「どう?けっこう綺麗でしょ?」
凛(中身は陸)「綺麗だし、何というか……凛さんの部屋とほぼ同じ?」
あまりの綺麗さに感動するも、元々あったコレクションがすぐに見えないのは少し寂しい気持ちもある。
陸(中身は凛)「早速、勉強を始めましょうか」
凛(中身は陸)「お願いします」
元々の凛は常に学年でトップ10に入る成績なので、凛のためにもここで低い点数を取る訳にはいかなかった。教えてもらいながら、とにかく必死に勉強をしていた。
6月の中旬でジメジメとした暑さもあり、凛(中身は陸)は制服のブラウスの上のボタンを2つほど締めておらず、陸(中身は凛)が、信じられないものを見るような、厳しい視線を胸元に送っている。
凛(中身は陸)「どうかした凛さん?」
陸(中身は凛)「陸くん……ボタン……外れてるけど……」
凛(中身は陸)「あ……ごめん!歩いてきて熱くなって……いつもはこんなに外してる訳ではないから安心して!」
急いでボタンを留める。
陸(中身は凛)「それならいいけど……」
2人だけの密室の空間はよく考えたら初めてだった。少し変な事を意識したら微妙な空気になりそうだったで陸(中身は凛)が立ち上がる。
陸(中身は凛)「ちょっとお茶取りに行ってくるから!」
階段を勢いよく下りる足音が聞こえた。
凛(中身は陸)「(2人だけだとドキドキするな……てか勉強してたらお腹減ってきた……そうだ!せっかくだから久しぶりにお母さんの手作り料理食べたいな!冷蔵庫に何か無いかな)」
凛(中身は陸)も部屋を出て階段を下りた。すると玄関の鍵がガチャ!と開く音が聞こえた。そこにいたのは予定よりも、かなり早く帰宅した陸の母だ。
凛(中身は陸)「お、お母さん!」
反射的に言葉が出てしまった。でも陸の母はお母さんと言われことに特に違和感を感じていない。
陸の母「あら!随分と可愛い女の子がうちにいる!いらっしゃい!」
眩しいくらいの笑顔で迎えてくれた。陸(中身は凛)は話し声が聞こえてきたので、急いで玄関にやってきた。
陸(中身は凛)「あの……これには……これには訳があって……」
凛(中身は陸)「私……羽瀬凛と申します。陸くんとは同じ駅伝部で、今日は一緒にテスト勉強をしていました!(危なかった……。本当の母さん相手だから、つい素の自分が出そうになるけど、凛さんのフリをしなきゃ……!)」
焦っている陸(中身は凛)の横で冷静に凛(中身は陸)が自己紹介をしていた。
陸の母「凛さん、ようこそ!でも、陸が駅伝部ってどういうことかしら?マネージャーでもやってるの?」
凛(中身は陸)「(凛さん……言ってなかったんだ……)陸くんも駅伝部として一緒に走ってるんですよ」
陸の母「あの陸が走ってる!?……あぁ、なるほどね!凛さんのような綺麗な子が一緒に走ってくれるなら、そりゃああのインドア息子も必死になるわよね!」
陸の母は凛(中身は陸)を見て何かを悟ったようだ。
陸(中身は凛)「(違う、そうじゃないんです、お母さん!)お母さん……ほら!お腹減ったからいつものクッキーお願いしていい?凛さんにも食べさせたいからさ!」
無理やり話をそらした。
陸の母「分かったわ!いつもの手作りクッキー作ってあげるから部屋で待ってて!」
陸の母はニヤニヤしながらキッチンへと向かった。
2人は部屋に戻る。
陸(中身は凛)「まさか、こんなに早く帰ってくるなんて………あぁびっくりした……」
凛(中身は陸)は下を向き、何か考えていた。ふと思い立ったかのように顔を上げた。
凛(中身は陸)「凛さんが嫌じゃ無ければ、テスト期間中、この家に来てもいいかな?同じ駅伝部の仲間というのは事実だし、勉強も教えてもらいたいし、実家のような安心感もあって凄く落ち着くんだ」
陸(中身は凛)「まぁ……確かに、変に隠そうとする方が逆に怪しまれるわね……その提案、賛成よ。毎日、みっちりと勉強しましょう!私の体で低い点数を取られるのも困るしね」
その後、陸の母が作ってくれたプロテインクッキーを食べながら勉強を進めた。
凛(中身は陸)「やっぱ、お母さんの作る料理はうまいなぁ」
陸(中身は凛)「ふふ!私もそう思うわ!私達は幸せ者ね!」
こうして、陸の母、公認のもと、凛(中身は陸)は不動家に通って勉強を教えてもらい、学力を上げることに成功した。そのお陰でテストはトップ30には入ることができ、陸(中身は凛)からはギリギリ合格をもらえた。
陸(中身は凛)は急にトップ10に入り、先生や亀山、佐竹から驚かれていた。
亀山「陸……すげぇな……体も痩せて、頭も急に良くなるなんて」
佐竹「やっぱり、今まで秘めたる才能隠していたのか……」
陸(中身は凛)「隠していたわけじゃない。ただ、本気を出す理由ができただけだよ」
そう言って少し顎を引いて不敵に微笑んだ。
亀山「なんか……最近の陸、セリフにもキレがあるな」
クラスの一部の女子からも陸(中身は凛)は少しずつ隠れ人気が出てきていた。痩せたこと、頭も良くなってること、発言もカッコよくなってることにより、本人の知らないところで話題になっていたのだ。
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