烈華と隼人。幼馴染のデート
烈華と隼人が早速、2人で歩き出す。
隼人「急過ぎるだろ……予定とかあったらどうしたんだよ……」
烈華「そん時は1人で行くだけ。でも予定が無かったなら良かった!」
どうせ予定なんて無いだろうと言わんばかりに、烈華はわざとらしく言う。
隼人「てか何年ぶりだろ。2人ででかけるの」
ソワソワしながら隼人が先に話しかける。
烈華「そうね。3年振りくらい?中学に入ってからは部活も忙しかったし、あんまり遊んでなかったなぁ」
隼人が歩きながらチラっと烈華の私服を見る。3年前とは服装も明らかに違って、大人っぽくなっているのを感じていた。最近は制服かスポーツウェアしか見てなかったから新鮮だった。だが、めっちゃ見てるって思われるのも嫌なのでそれは口には出さない。だが烈華は気付く。
烈華「今日の私服……結構似合っているでしょ?」
隼人「まぁ……」
似合ってるや、可愛いなどという言葉は中3男子には言えるはずもなく、「まぁ」が隼人に出来る最大限の返事だった。
隼人「ところで、今からどこに行くの?」
何となく勢いで、家を出てきたがどこに向かうかまだ分かっていなかった。
烈華「最初は映画館かな!ちょうどバスが来たから急いでアレに乗ろう!」
隼人「最初って……一体どこ連れ回されるんだ?」
隼人はブツブツ言いながらも急いでバスへ向かう。2人とも走ってバスに間に合った。駅伝部はこういう急いでるときに走っても息が切れないの便利だ。
その後、バスを降りて大型ショッピングモールに到着する。
烈華「時間もちょうどいいわね。異世界スポーツ系のこの映画、見てみたかったんだ」
隼人「烈華もこういうアニメ見るんだ。なんか意外だな」
3年も遊んでないと知らないこともあるもんだなと思っていた。そうしてチケットを購入し、ポップコーンと飲み物を買って、いざ着席。
すると前の方に見たことのある顔が2人。
隼人「なんで亀山と佐竹がここにいるんだよ……」
烈華「ふふ。凄い偶然ね」
烈華は笑いながら面白そうにしている。
隼人「まぁ、こっちの方が席が上だし、出るタイミング見計らえばバレることはないか」
烈華「バレたらなんかまずいの?」
隼人「まずくもないけど、見られたら烈華も困るだろ?」
烈華「私は困らないけど」
烈華が物凄い真顔で言うので、隼人はキョトンとしている。
隼人「(困らないって……どういことだろ)」
そして2時間の映画が始まり、内容はスポーツの才能が無い主人公が異世界で苦労しながらも、努力を積み重ねて、最後には有終の美で幕を閉じるという映画だった。
隼人は映画に集中していたが、烈華の「困らないけど」が頭の中で何度も再生されていた。
映画が終わり、見ていた人達は何人かが感動して泣いていた。その中で亀山と佐竹も泣いていた。
亀山「報われて良かったなぁ」
佐竹「良い話だった……俺は何かをくよくよしてんだ!この主人公のように俺だって這い上がってやる!俺だけ置いてかれてたまるか!」
佐竹は映画を見て吹っ切れることがてきたようだ。ハンカチを片手に映画館を出ていった。
隼人「(あの2人……随分泣いてたな……)」
烈華「けっこう楽しかったね」
烈華は泣くまでではないが、感動しているのが分かった。
隼人「こんなに楽しい映画があるなんて知らなかった」
隼人も普段は映画をほとんど見ないが楽しめたようだ。
烈華「下の階のゲーセンに行って見ない?映画のチケットでクレーンゲーム無料みたいだし」
隼人「あぁ!行ってみようか」
隼人はエスコートなんてできないので、やりたいことを言ってくれるのは助かっていた。
ゲーセンではどのクレーンゲームをやるか悩んでいたが、烈華がカピバラのキーホルダーを見つけて、これをやることにした。
烈華「お願い!この可愛いカピバラ取って!」
隼人は集中していた。全神経をこのボタンに集中させじっくりと狙いを定める。アームはしっかりとカピバラを挟み込み、無事に取ることができた。
隼人「まさか取れるとは思わなかったな」
烈華「一発で取るなんて凄い!ありがとう!次は私が隼人の分取るね」
烈華も果敢に挑戦するも失敗。
烈華「取れたらお揃いだったのに」
隼人「お揃い?」
隼人の頭の中でお揃いが何度も再生されていた。するとそこへ、亀山と佐竹がこちらのほうへ向かってくるのに隼人は気づいた。隼人は咄嗟に後ろのプリクラに烈華の腕ギュッと掴み隠れる。
烈華「随分、積極的ね」
烈華は少し顔を赤くさせながらも、いたずらっぽく笑った
顔が近いこと隼人は驚き、すぐ離れる。
隼人「あ、ごめん。あの2人が近くにいたから……」
烈華「せっかくだしこのまま撮る?」
隼人「撮ろうか」
2人でプリクラを撮ると2人とも目が大きすぎて笑った。
烈華「そろそろ、お昼でも食べようか。パスタでいいよね?」
隼人「そうだね。行こう」
幼馴染だからこそ、好きなものが分かり、スムーズだ。
席に座り、食事をしながら烈華が切り出す。
烈華「最近、悩みがあるなら、特別に幼馴染としてアドバイスをしてあげてもいいけど」
今日は落ち込んでいた自分を励ますために誘ってくれたんだと分かり、嬉しさともどかしさが込み上げてきた。
隼人「最近……走るのが辛い……俺達っていつまで走ればいいんだろうな……」
隼人が重い口をようやく開けてくれた。
隼人「いくら走っても、どんなに走っても、どうしても越えられない壁が近くにあって、それが苦しいんだ……」
烈華「鷹斗ね……彼も相当な化物よね」
隼人「高校、大学とこのまま競技を続ければ、練習の質と量も中学の比ではないし、また毎日のように走らないといけない。走り続けても2個下の弟に勝てない、自分の思うような結果が出ない事が続くのはやっぱりキツいよ。本当、みんなは凄い……毎日、毎日、熱心に走り続けて……俺にはその熱量が無い。みんなに合わせて走ってるだけなんだ」
隼人の沈んでいる表情に対して、烈華は今日1番の真剣な顔をしている。
烈華「確かに走る練習って大変だよね。勝てない辛さも私はよく分かっている。でも私が走る理由は私が走ることで家族が喜んでくれる。友達が友達に自慢してくれる。そして本気で走ることでチームメイトが一つになれることをこの前の凛の走りで教えられた。だから私は走る」
隼人「烈華は強いな……羨ましいよ」
烈華「1つ提案があるの。あなたのその走る辛さ、私が半分持ってあげる」
隼人「辛さを半分持つとは……?」
烈華「隼人は毎朝、あのコース今も走ってるんでしょ?私も毎朝付き合ってあげる。一緒に走って半分持って上げる」
言葉の意味はすぐに理解できなかったが、自分の辛さを和らげようとしてくれている気持ちで、重い気持ちが少しだけ軽くなるのが分かった。
隼人「ありがとう。そう思ってくれるだけでも嬉しいよ」
烈華「あと、これだけは伝えておかないと。鷹斗は中学に上がる時に兄貴とタスキを繋げるのが嬉しいって言ってたわよ!兄貴に走る楽しさを教えてもらったから恩返しをしたいって!」
隼人「鷹斗がそんなことを……俺はそんなつもりは無かったけど、そんな風に想ってくれていたのか……俺は……自分のことしか考えていなかったから周りをちゃんと見れていなかったよ」
烈華からの提案と鷹斗の言葉で、隼人の落ちていた目線は上向き、烈華の目を見た。力が無かった目に光が差し込んだようだ。
隼人「烈華……俺からも提案がある」
烈華「えぇ。何でも言って」
隼人「烈華の全国出場の想い、俺にも半分持たせてくれ。必ず男女で全国を成し遂げよう。いや、俺はが必ず全国へ導く。明日から練習パートナーとしてもよろしく」
隼人が深々と頭を下げて拳をギュッと握った。
烈華「それでこそ、私の練習パートナーだわ。私の想いは重いわよ?」
良い感じの話をしている所に亀山と佐竹が同じ店内に来て隼人と烈華を見つけてしまった。
隼人「あっ」
亀山「隼人くんと九条さん!?お2人はもしや!?」
佐竹「隼人くん、恋愛マスターの僕には分かっちゃいましたよ。ちょうどいいところでしたね」
隼人が弁明する間もなく、邪魔ものはずらかりますと言い、そそくさと去っていった。隼人が頭を下げていたので、告白と勘違いをしてしまったようだ。
隼人「変なこと言いふらさなきゃいいけど……」
お会計を済ませて、そのレシートでまたクレーンゲームができることが分かり、さっき2個目が取れなかったカピバラのキーホルダーへ。
烈華「次こそ、絶対取るわよ!」
烈華は操作しながら先程取ったキーホルダーをギュッと握り締めていた。隼人も取れるように祈っていた。アームは思わぬ方向へいってダメかと思われたが運良く端っこが引っ掛かり、取ることができた。
烈華「やったぁ!」
子どものようにはしゃいで、それを隼人にすぐに渡した。
烈華「お揃いね!」
お揃いねが、また頭の中で何度も再生されていた。その後はバスを使って帰宅をして解散した。
この日の夜、布団の中で隼人は烈華の言葉を何回も繰り返していた。困らない、お揃いね。
隼人「(烈華ってもしかして俺のこと好きなのかな?)」
1人悶々としながら夜の眠りについた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!読んでいただけることが大変嬉しいです!引き続き、コツコツ投稿していきますので宜しくお願いします!




