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クールな陸上女子のお風呂と秘密

一つ、外すたびに、布地の下から羽瀬凛の「秘められた部分」が少しずつ暴かれていく。 陸が三年間、校庭を走る彼女の背中だけを追いかけてきた、あの羽瀬凛だ。 指先が震えて、ボタン一つ外すのに一分近くかかった。ついにブラウスが肩から滑り落ち、床に重なる。

(ごめんなさい、ごめんなさい……!)

 心の中で何度も謝罪を唱え、目をつぶって全てを脱ぎ終えた。


そして意を決して、目を開け、鏡を見た。

「…………っ」

 息をすることさえ忘れた。 そこにあったのは、ただの「女子の体」ではなかった。絹のように滑らかな肌。けれど、その下には過酷なトレーニングで研ぎ澄まされた筋肉が、薄い皮膚を押し上げるように存在を主張している。 一ミリの無駄もないウエストのくびれから、美しく、それでいて力強く伸びる長い脚。 そして、それらすべてを包み込むような、仄かな石鹸と、少女特有の甘い香り。


凛(中身は陸)「なんて……綺麗なんだ」


恐怖や罪悪感、そして男としての好奇心。 それらすべてを塗りつぶすように、圧倒的な「感謝」が込み上げてきた。


この体は、彼女の努力の結晶だ。 冬の朝の凍える空気の中でも、夏の焼け付くような日差しの中でも、彼女が一歩一歩、泥を跳ね飛ばして積み上げてきた歳月のすべてが、この美しい肉体に刻まれている。

その「体」を、今は何故か陸に託されている。


凛(中身は陸)「……僕とは正反対の体だ。すごい」

思わず、独り言が漏れた。 見られることへの感謝じゃない。 これほどまでにストイックに、美しく鍛え上げられた「走るための肉体」がこの世に存在すること。そして、その一部を自分が感じさせてもらっていることへの、一人の人間としての敬意。震える指先で、凛の真っ白な肩にそっと触れた。 指先から伝わる体温。ドクドクと脈打つ、凛の心臓の鼓動。


凛(中身は陸)「僕は今まで何をしてきたんだ‥」

あまりにも違い過ぎる体に自分を情け無く思っていた。


お風呂では視線のやり場に困ってしまうが、なるべくは体を見ないようにしながら、彼女が作り上げたこの「体」を汚さないよう、丁寧に敬意を持って洗い上げて、浴室のドアを開けた。


陸は震える手で棚から自分のと思われる「寝巻き」を取り出した。 普段の彼女は、学校指定のジャージか、隙のない制服姿しか見せない。陸上界の鉄の女、氷の美少女。そんな彼女のことだ、寝巻きもきっと、機能性重視の味気ないTシャツか何かだろう――。

そう思っていた陸の目に飛び込んできたのは、予想を裏切る代物だった。


「……えっ。……う、嘘だろ?」

 

それは、淡いサクラ色の寝巻きで襟元には控えめなフリルがあしらわれ、胸元には小さく、本当に小さく、可愛らしいカピバラの刺繍が施されていた。

凛(中身は陸)「…………(絶句)」


脳内会議が、本日何度目かの爆発を起こした。  

凛(中身は陸 )「(凛さん……こんな……こんな可愛いパジャマ着て寝てたのかよ!?)」

 

あの、記録を1秒縮めるためにすべてを削ぎ落としているようなストイックな彼女が。 男子を寄せ付けない冷徹なオーラを放つ彼女が。  夜、一人で寝る時は、こんな「女の子」全開な姿に包まれているなんて。


凛(中身は陸)「……ギャップが、ギャップが殺人的すぎる……!!」

パジャマに袖を通すと、生地が吸い付くように肌を滑る。 今まで自分が使っていたザラついたスウェットとは全く次元が違う、優しくて甘い感触。 鏡の中の凛さんは、淡いピンクに包まれて、いつもよりずっと年相応の、守ってあげたくなるような少女に見えた。凛さんの「秘密」に触れてしまった背徳感と、見てはいけないものを見てしまった感動。  


凛(中身は陸) 「か、可愛すぎる……ダメだ。これ以上は、僕の精神がもたない」


逃げるように部屋へ戻った。


凛(中身は陸)「……なに、これ。部室?」


整然と並べられた数足のランニングシューズ。部屋の隅には使い込まれたヨガマットと、ローラー。壁には大会の記録証が数枚、表彰台に乗っている写真がいくつも貼られている。 甘いインテリアなんて一つもない。そこは「羽瀬凛」というアスリートを作るための、ストイックなトレーニングルームだった。

 ――けれど。  

凛(中身は陸)「……あ。……なんだ、これ」

唯一、ベッドの上だけが異質だった。 枕元に、妙に存在感を放つ大きなカピバラのぬいぐるみが鎮座していたのだ。


凛(中身は陸)「ここにも……カ、カピバラ……!? 」

ストイックな部屋にカピバラ。 一分一秒を削り出す彼女が、世界で最も急いでいないであろう生き物を、夜のパートナーに選んでいる。 そのギャップに、胸の奥がギュッとなる。


凛(中身は陸)「凛さん……普段どんな顔してこれを愛でてるんだろうなぁ」


陸は想像しただけで幸せな気持ちになっていた。部屋にはふわっと鼻腔をくすぐるものがあった。 それは石鹸の匂いだけじゃない。凛さんの部屋全体を包み込む、落ち着くような、でもどこか背徳的な、女の子の良い香りだ。


凛(中身は陸)は真っ赤になりながら、カピバラのぬいぐるみを抱き抱えてベッドに倒れ込んだ。 ぬいぐるみに顔を埋めると、そこからも凛さんの香りがする。


ふと我にかえると

凛(中身は陸)「そうだ!一度、僕の体に電話しないと!」

あまりにも色んなことが起こりすぎて向こうサイドの状況の心配などすっかりと抜けていた。


凛(中身は陸)「恐らく凛さんは自分の番号を覚えてないから電話をかけられずにいるのかも」


覚えていた自分の番号に電話をかける。


「もしもし」


3コール目で聞き馴染みのある声が出た。


ここまで読んで頂きありがとうございます!最終話までコツコツ投稿します!

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