男子の苦闘。王者の壁
男子1500m決勝。ライバルである王杜中学校からは3人が決勝に残っている。
スタート前から犬飼はピリついていたが、王杜中の3人は他校は眼中に無かった。まるで自分達だけで順位争いをするかのような会話をしている。
犬飼「隼人、あいつらには負けられねぇぞ」
さっきまで浮かれていた犬飼も真剣な顔になっていた。
隼人「あぁ、そうだな」
決勝の号砲が鳴ると同時に犬飼が飛び出す。
犬飼「(俺も凛ちゃんみたいに前半から突っ込んで押し切ってやる!)」
隼人「(あのバカ……)」
2位集団を王杜中の3人と隼人で集団となりレースを進める。
2周半の1000mを過ぎたあたりで、前半から飛ばしすぎた犬飼が段々と落ちてきて2位集団にあっさりと抜かされた。
犬飼「はぁはぁ(凛ちゃんにカッコいいとこを見せようと思ったのに……こんなはずじゃ……)」
隼人は最後まで王杜中学の3人に食らいついたが最後は力負けし、4位に。3位までは全て王杜中学に独占されてしまった。
犬飼は自分の不甲斐無さに呆然としている。隼人もレースが終わると犬飼と会話もせず、すぐ更衣室に向かった。
続く3000mはレースは予選無しの一発決勝。駿と鷹斗がスタート前にアップをしている。
そこへ王杜中学のエース・千石が駿の元へやって来た。
千石「羽瀬!今日は良いレースをしようじゃないか」
そういうと握手を求め、駿もそれに応じる。
駿「こちらこそ宜しく」
ギュッと握る手が強くなる。
鷹斗「駿さん、流石に有名人ですね!」
鷹斗は駿が他校の強い選手から握手を求められているのを自分事のように喜んだ。
それぞれの学校のエースクラスが集まる3000mの号砲が鳴り響く。
飛び出したのは駿、千石、鷹斗の3人だ。
1000mの入りは2分50秒で鷹斗にとってはハイペースだったが、駿と千石は涼しい顔で先頭を引っ張る。
駿と千石は互いがどこで仕掛けるか探っている中で鷹斗はただただ着いていくのに必死だ。
そのまま3人で2000mを5分45秒、この1000mは2分55秒で走り、駿がロングスパートを仕掛ける。千石もそれに対応し、鷹斗はついていくことができない。
駿はラスト1周で2段階目のスパートを仕掛け、千石を引き離す。
そのまま駿が1位でゴール。タイムは8分32秒。
千石は2位で8分36秒。
どちらも一歩も譲らない全国レベルだ。
鷹斗は最後に失速してしまったが3位の8分59秒。1年生としては上出来の結果となった。
ゴール後した直後。
千石「流石に速いな……羽瀬……それだけにもったいない。速い1年生が入ってきたとはいえ、2人しか速いのがいなければ駅伝ではうちには勝てない」
駿「それはどうかな。今年のうちのチームは一味違うチームだ。秋が楽しみだな千石」
千石の負け惜しみとも言える発言に対応した駿だが、実際今回の大会結果を見ると王杜中学には惨敗している。
応援席で応援をしていた亀山、佐竹は初めて見た生のレースに驚きと感動をしながら現実も見ていた。
亀山「キャプテン……ヤバいくらい速いな……けど王杜中学の総合力もかなり高い……あのチームに勝たないと全国に行けないのか……」
佐竹「鷹斗も1年生なのにすげぇ……しかし、王杜中学のレギュラークラス……あの隼人くんや犬飼くんでも勝てないのか……」
全国を目指すという目標でライバルとなるチームの強さに不安になっていた。
犬飼「俺はただレース展開をミスっただけだ!ちゃんと走れば勝てた!」
陸(中身は凛)「(その言い訳はあまりにもカッコ悪いわ……)」思わず心の中で突っ込んだ。
席に戻ってきた鷹斗が兄の隼人にすぐ報告する。
鷹斗「兄貴!俺やったよ!3位で東北大会の出場決めたよ!」
喜んでいる弟とは裏腹に兄は静かに返事をする。
隼人「……おめでとう」
隼人は自分の結果の不甲斐無さに影を落としていた。弟の鷹斗意外は声をかけにくい雰囲気だ。
こうして総体の全てのレースが終わり光と影のある結果だったが、補欠組のレースはこれから組んである。学校のグラウンドに戻り、3人で3000mのタイムトライアルだ。ここで陸(中身は凛)と亀山と佐竹のレベルを確かめる。
陸(中身は凛)「(隼人くんや犬飼くんがあれだけやられて、悔しくないはずがない。……元々100キロ近い体が、どれほど速くなったか見せて、男子駅伝部に少しでも明るい未来を見せてあげる)」
それぞれの走りを見た陸(中身は凛)は触発されて静かに闘志を燃やしていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!多くの方々に読んで頂けて大変感謝しております!引き続き1日数話投稿していきますので宜しくお願いします!




