練習と成長。運命の号砲に向けて
プールで競泳用の水着に着替えた凛(中身は陸)は早速トレーニングを開始する。あまりにも鍛え抜かれた美しい体のラインに周りの視線が気になる。
先に始めていた陸(中身は凛)は水着姿で改めて体が変化した、というのが一目瞭然だ。
凛(中身は陸)「(あの体はもう僕の体じゃないみたいだ……水着姿だと変化が更に分かりやすい。僕も凛さんのように頑張らないと!)」
水中ウォークは慣れず、顔に水がかかってグシャグシャの顔で歩いていた。美しい体のラインからは真逆で、凛(中身は陸)があまりにも酷い顔で思わず陸(中身は凛)が小さい声で話しかける。
陸(中身は凛)「ちょっと、不動くん!顔がヤバいわよ……もっとシャキッと歩いて!その顔は私のイメージじゃない!」
凛(中身は陸)「(歩くのも慣れないのに顔まで意識するのは難しいな……)わ、分かったよ!」
一瞬、顔がいつもの凛に戻るもすぐグシャグシャの顔になる。
陸(中身は凛)「まだまだ色んなトレーニングが必要そうね……」
こうして凛(中身は陸)の定期的なプールトレーニングが始まった。
休みが明け、男子駅伝部の練習。
駿、隼人、犬飼、鷹斗が激しいインターバルトレーニングをしていた。次の大会に向けてそれぞれが真剣な顔つきで取り組んでいる。
あまりのペースの速さに最初は犬飼が遅れ始める。その後に隼人も段々と離れていく。最後まで駿に離されないでいたのは1年の鷹斗だ。
練習直後、まだ息が切れている中、犬飼が隼人に声をかける。
犬飼「鷹斗のやつ1年なのに、駿についていくなんてすげぇな」
隼人「まぁ、あいつも相当な化物だからな……」
Tシャツで汗を拭きながら静かに答える。
鷹斗「駿さん、ラスト1本、60秒はヤバいっす!」
興奮気味に鷹斗が駿に言う。
駿「本当はもう少し抑えるつもりだったが、鷹斗が粘っているから想定よりも上げてしまった。よくついてきたな」
駿は厳しいトレーニングを終えた後にも関わらず、疲れを感じさせずに話している。鷹斗は駿に褒められて嬉しそうにしていた。
一方、亀山と佐竹もゆっくりだけのジョグから次のフェーズに入っていた。そして、陸(中身は凛)もようやく60分は走れるようになり、2人と一緒に練習をすることに。
本数は少なく、ペースもさほど速くはないが、着実に3人でインターバルをこなしていく。
その中で亀山が頭角を表してきた。
最後の一本、高身長な亀山は大きなストライドでグングンと伸び、3人の中では目立つ存在になっていた。少し遅れて佐竹、陸(中身は凛)もフィニッシュ。
走り終わった後、呼吸がまだ切れている中で佐竹が亀山に話しかける。
佐竹「はぁはぁ……亀山……お前……なんでそんなに速いんだ?」
亀山「はぁはぁ……自分でも驚いている。1ヶ月間はゆっくりなジョグとちょっとしたダッシュしかしてなかったが、こんなに速くなっているとは思わなかった」
陸(中身は凛)「(凄いわね、亀山くん、あの高身長を更に活かせれば伸びしろがありそう。佐竹くんは粘り強いし、あの2人は良い意味で想定外ね)」
亀山「俺は陸が凄いと思っている。痩せたとはいえ、まだ相当重いはずだ。なのに俺たちとはそんなに変わらない走力なのは驚異だな……痩せたらどこまで速くなるんだ?」
亀山は3人の中では速くなったとはいえ、陸は対してレギュラー争いで厄介な存在になると感じている。
佐竹「それに初心者の割に、やたらとフォームが綺麗なんだよなぁ。実際、凄い才能あったりして?」
陸(中身は凛)「そうだね。この体にはまだまだ隠された力が眠っているように感じる……」
亀山「陸……そのセリフ、カッコいいな!」
陸(中身は凛)は初めの1ヶ月で痩せる事と同時にフォームの改善に取り組み、元々あった脂肪の中の筋肉を少しずつ呼び起こすことができていた。
一方、女子の練習もピリついた雰囲気だ。
烈華は桃葉と競り合いながら設定タイムよりも速いペースで前を走っていた。その後ろで凛(中身は陸)は淡々と練習をこなしている。
走り終えると凛(中身は陸)だけはまだいける表情をしていた。
凛(中身は陸)「追加で1キロ走ります!」
そういうとみんなが疲れている中で1人走りだした。
桃葉「凛ちゃん、気合い入ってるね!」
桃葉は嬉しそうにしているが、烈華は厳しい目で見ていた。
烈華「あれが強がりじゃないといいけど」
今までなら、終えていた練習も自分なりに体の限界値、ペース配分、足への負担などを考えて探り探りながら1つずつの練習メニューをこなしていった。
その後も凛(中身は陸)はプール、フォームの改善、補強トレーニング、ストレッチなど、ありとあらゆる走りに繋がることを実践して1週間、2週間、3週間、4週間と過ぎていった。
凛(中身は陸)は自分なりにアレンジをしたトレーニングの中で速い動きをしている際に1つ掴んだものがあった。
凛(中身は陸)「(プールで心肺機能が上がっている……フォームも良くなったお陰か、走りの感覚がかなり良い状態だ。ぶっつけ本番だけど、これならやれるかもしれない……いや、やるしかないんだ!)」
そして、いよいよ県総体。それぞれの運命のレースが始まる。
凛(中身は陸)はかつての凛さえも浮かべたことのないような、静かで、それでいて燃え上がるような瞳でトラックを見つめていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!多くの方々に読んでいただき非常に嬉しいです。完結まで全話執筆済みなので、1日複数話の投稿していきます!引き続き宜しくお願いします!




