禁断のビキニ。受動から能動
覚悟を決めた凛(中身は陸)は家に着くと自室で、今後1ヶ月間の練習をどうすればいいか考えていた。
凛(中身は陸)「(体が入れ替わってから全て凛さんに任せきりで、僕は自分の考えなんて一つも無かった。受動的に言われたメニューをこなしているだけではダメだ。体と相談しながら自分で考えてメニューを作り、そして走りに対してもっと勉強しないといけない)」
何の練習をやっているかも分からず、何の意思も無く、それに対して疑問を持たなかった自分に腹がたってきた。
凛(中身は陸)「(くそっ!ただでさえ、凛さんの体はトップを争えるポテンシャルがあるのに、僕はこの体に慣れることしか考えていなかった。だから速くなれるわけがないんだ!走力の上積みをするために考えて、考えて、考え抜いてその先にタイムを削るヒントがあるはずなんだ)」
凛(中身は陸)は人生で初めて『考える』ことの重要性を学び、そして壁にぶち当たっていた。
凛(中身は陸)「(どうすれば速くなれるんだろう……僕が凛さんと入れ替わった意味も何かあるのかな……きっと何か僕にしかてきないことがあるはず……)」
30分ほど考えた結果……
凛(中身は陸)「(何も無い!僕には何も無いのか……いや無いからこそ無いなりに、もがくしかないんだ!無い中でやれることを……そうだ!1番近くに教えてくれる人がいるじゃないか!)」
思い立ったらすぐ行動と思い、勢いよく自室を出て、兄である駿の部屋をノックして部屋に入る。駿は宿題をしている最中だった。
凛(中身は陸)「お兄ちゃん、ちょっと相談があるんだけどいいかな?」
駿はペンを置き、凛を見る。
駿「珍しいな、凛から相談するなんて」
凛(中身は陸)「今、私が速くなるためには何が必要か教えてほしいの!」
駿は少し考えて答えた。
駿「そうだな。最近のお前は決められたメニューをただこなしているだけのように見える。以前はコンディションに合わせて、走りながら本数を減らしたり、増やしたりしていた。だが今はそれが無い。曖昧な答えかもしれないが、体の声を聞けていないように感じる」
凛(中身は陸)「(よく見てるなぁ駿くん……確かに僕は言われメニューをこなすだけでいいと思ってた)わ、分かった。お兄ちゃん!他には何か無いかな?」
駿は更に考えて答えた。
駿「怪我の影響もあるとは思うがランニングフォームが少しおかしい。いやだいぶおかしいな。まるで違う人物になったような。1度、昔の自分の映像でも見てみたらどうだ?確か、レースのDVDは凛の部屋にあったはずだが」
凛(中身は陸)は、思わず自分の膝をぎゅっと抱え込んだ。まるで、中身が別人であることを駿にはバレているんじゃないかと思い、背中に冷たい汗が流れる。
凛(中身は陸)「あ、ありがとう!お兄ちゃん!参考にするね!」
急いで部屋に戻り、DVDがどこにあるか探す。陸(中身は凛)からは余計な場所は開けてはいけないと言われていたが、2人のためだから、ごめん!と思いながら棚を物色する。
すると古いノートがいくつか出てきた。表紙には練習日誌と書かれている。人の日誌を勝手に見るのはよくないと思いながらも、手にとってページをめくる。
凛(中身は陸)「(練習日誌?こんなに細かく書いてある。高いポテンシャルだけじゃなく、走りについて凄く勉強をしたんだ……本当に凄いよ凛さん)」
パラパラとページをめくる指が止まらない。そこには、タイムや記録だけでなく、その日の体調、食べたもの、烈華や桃葉たちへの感謝までが、凛の丁寧な文字でびっしりと書き込まれていた。ギュッとノートを握りしめて凛の凄さを実感していた。
凛(中身は陸)「(ここまでの情熱をぼくが継続できるか不安だけど今は前に進むしかない)」
更に読み進めていくと、その中に見慣れない練習内容を見つける。
凛(中身は陸)「(あれ?凛さんから何も聞いてなかったな、この練習は。プールでの練習かぁ。ちょっと調べてみようかな)」
すぐにインターネットでプールでのトレーニング効果を調べて、足への負担が少なく、心肺機能を高められることが分かった。
凛(中身は陸)「(こんなに良い練習、何で教えくれなかったんだろう。早速やってみようかな)」
翌日の日曜日。
早速、凛(中身は陸)は市民プールにやって来た。すると偶然にも同じタイミングで陸(中身は凛)もプールに到着する。
陸(中身は凛)「えっ?不動くん……ここで何をやっているのかな?」
何故か引きつった笑顔になっている。
凛(中身は陸)「凛さん!僕は気付いたんだ。今までは自分で何も考えず、練習をしていた。でも今は違う!自分で考えて、色んなメニューを工夫して鍛える必要があると!」
陸(中身は凛)「それは分かったわ!ち、因みに水着は?」
心配そうな顔しながら、困惑もしていた。
凛(中身は陸)「それはもちろん、プールだから持ってきてるよ!ほらっ!」
凛(中身は陸)は、自信満々にカバンから「それ」を取り出し、広げて見せた。 朝の光に照らされて、極限まで布面積の少ない、鮮やかなピンクのビキニがひらひらと舞う。
陸(中身は凛)「ちょっとぉ待ったぁ!!!」
陸(中身は凛)は、バレーボールのレシーブのような速さでビキニをひったくると、周囲に誰もいないかを確認しながら猛烈な勢いでカバンに押し戻し、顔が真っ赤になっていた。
陸(中身は凛)「それは海とか遊ぶ場所で着る用の水着だから、トレーニングの時は競泳用の水着があるの!それに、その水着は桃が勝手に買ったやつだから私が買った訳じゃないからっ!!」
凛(中身は陸)「そ、そうなんだ!ごめん、分からなくて……」
陸(中身は凛)「まさか、不動くん、その水着を着たの!?」
凛(中身は陸)「(ヤバい!家で試着したのがバレたら殺される!確かにけっこう露出は高いと思ってた……めちゃくちゃ似合ってたんだけどなぁ)いやいや!全く……着てるはずがねいよ!」
後退りしながら必死に弁明するも日本語がおかしかった。ブンブンと首を横に振りすぎて、長い黒髪が自分の顔にバシバシと当たる。視線は泳ぎ、指先は意味もなくウェアの裾をいじっていた。
陸(中身は凛)「その言葉!信じるわよ!もしその水着を着たら……あなたの部屋のお宝の命は無いと思ってちょうだい」
あまりの鬼の形相にビビりまくっていた。
凛(中身は陸)「(これでプールに入ったら相当ヤバかったな……プールに入る前に凛さんに会えて良かったー!!!)」
陸(中身は凛)「プールのトレーニングは100歩譲って認めるから、棚の1番下の奥の競泳用を使って!(本当は競泳用でも水着姿は見られたくなかったのに)」
プイッと顔を背けた陸(中身は凛)の耳たぶが、リンゴのように赤くなっている。
凛(中身は陸)は家に戻り、競泳用を持って再びプールに訪れた。
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