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凛の真実

休日の早朝6時、霧が立ち込める山の麓公園で2人は会う。


1ヶ月間はそれぞれが自分の練習に必死になっていたので、2人でここで会うのは体が入れ替わった翌日以来だ。陸(中身は凛)の体は1ヶ月前とは明らかに違っていた。


凛(中身は陸)「おはよう。す、凄いよ。凛さん。僕の体を絞れている」

以前よりもシュッとしたアゴのライン、緩くなっていらウェアが何よりの証拠だ。


陸(中身は凛)「過酷ではあったけど……こっちは何とか、いまのところ順調かな。それよりも不動くんに伝えなければいけないことがあるの」


神妙な顔をしている。


凛(中身は陸)はゆっくりと頷く。昨日メッセージを貰ってから何を言われるんだろうと頭の中でずっと考えていた。


陸(中身は凛)「烈華があそこまで厳しくするのには理由があって……私に責任があるの。だから不動くんは悪くないからあまり自分を責めないで」


陸(中身は凛)の表情は、これまでの疲れとは違う、どこか怯えるような「深刻な影」を帯びていた。


凛(中身は陸)「何があったか聞いてもいいのかな?」


少しの間、沈黙が続いて、陸(中身は凛)が小さく頷いた。


陸(中身は凛)「去年の駅伝、アンカーを務めたのは私。先輩達と烈華、桃の頑張りで2位でタスキをもらい、最初の1キロで私はトップを抜いた。そのままいけば、確実に優勝して全国に行けたはずだった……」

陸(中身は凛)の瞳が、朝日に細められる。


陸(中身は凛)「でも、私は隠してたの。ずっと足を痛めていたことを。少し痛みを我慢すれば、あまりタイムも落とさず走れるという慢心があった。でも現実は甘くは無かった。無理をして走ったツケが、残り1キロで……足が動かなくなって、目の前で逆転されたわ。そして結果は2位。私の独りよがりな判断のせいで、チーム全員の夢を壊した……」


凛(中身は陸)「……そうだったんだ……」


陸(中身は凛)「みんな優しくて、あなたのせいじゃないよと言ってくれるけど、私はみんなに気を使わせてしまうのも申し訳なかった。烈華はまた私が怪我を隠して走っているんじゃないかと思っているんだと思う……だから怪我をしながら走るくらいなら駅伝を走らないでと、彼女なりの不器用な気遣いなんじゃないかな」


凛(中身は陸)「どうりで烈華さんはあんなにも厳しくしていたんだ……」

烈華のあまりにも厳しい態度に対して腑に落ちた。


陸(中身は凛)「春には怪我も完全に良くなって、医者からはお墨付きをもらったわ。でも……後ろめたさが消えなかった。このまま走っていていいのか、また駅伝で迷惑をかけるくらいなら辞めるべきなんじゃないか……あの日、上の空でそんなことを考えながら走っていたら、あなたとぶつかって……」


凛(中身は陸)「……そこでこんな僕と入れ替わっちゃったんだね……凛さん、辛かったんだね……」


凛(中身は陸)は、初めて知る「完璧なエース・羽瀬凛」の弱さと、彼女が背負っていた孤独な責任感に胸を打たれた。


陸(中身は凛)「あなたと入れ替わった後は早く元の体に戻らなきゃ!と思い必死にやってきたけど、たまに思うんだよね。また私が私の体で走るのが怖いって」


凛(中身は陸)「(凛さんはみんなのこと、僕のことを考えながら、あんな100キロの体をここまで絞ってるというのに……それに比べて僕は……この1ヶ月間、一体何をしていたんだ)」


凛(中身は陸)はこの1ヶ月を改めて振り返って後悔をしながらも、弱気な心を奮い立たせた。


凛(中身は陸)「凛さん。話を聞かせてくれてありがとう。やっぱり謝るのは僕の方だ。僕は凛さんのためにと言いながら自分のことしか考えていなかった。いつも自信が無くて、凛さんに支えられてばかりで、一回、タイムトライアルで負けたくらいで落ち込んで……でも僕がやることが分かったよ。僕は凛さんのこの体で県大会で必ず勝つ」


陸(中身は凛)「不動くん……?」


凛(中身は陸)「烈華さんに『もう大丈夫だよ』って、僕が走りで証明する。凛さんの心の傷を、僕がこの体で癒す。……だから、信じて任せてよ」


凛(中身は陸)の力強い言葉に、陸(中身は凛)は初めて不動陸の顔で、少女のように小さく頷いた。


陸(中身は凛)「不動くんて不思議だよね。頼りになるのか、ならないのか、よく分からないわね。ふふ。でも次県大会……お願いします」


顔を下げて、上げると暗かった顔から少しだけ笑顔が戻っていた。


凛(中身は陸)は自信があるわけでは無かったが、あんな弱気な姿を見せられたら、やるしかない、やらなければいけないと小さい勇気振り絞って一歩を踏み出す決意を決めた。足の震えを隠しながら、凛の細い手をギュッと握る。




ここまで読んでいただきありがとうございます!引き続き1日数話を投稿していきますので読んでいただけますと幸いです!

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