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女子駅伝部。三つ巴のタイムトライアル

凛(中身は陸)はこの体でトレーニングを始めて2週間ほどで段々とこの体にも少しずつ慣れてきた。それと同時にある思いが芽生えていた。


今日も練習が終わると、走る練習って思ってたよりも、過酷じゃないかもと思い始めている。


実際、毎日息が切れるくらい走る訳でなく、ほとんどがゆっくり走るジョグだからだ。体を追い込む練習のポイント練習は週に2回。それ以外はジョグと補強トレーニングとストレッチ。


もちろん、凛の鍛え抜かれた体を使っているから、というのもあるが陸の小学校時代にやっていた野球と比べると非常にやりやすかった。


小学校の野球の練習では長い時間、過酷な練習を毎日続けて、スポーツの練習はキツいイメージという固定概念を持っていた。その反動もあり、中学校では動くことを辞めて、あのだらしない体になってしまったのだ。


練習への取り組み方、体の動かし方も含めて凛(中身は陸)は徐々に自信がついてきた。


凛(中身は陸)「(今の状態なら2週間後のタイムトライアルで凛さん本来の走りができるかもしれない)」


女子駅伝部の練習後に1人考えていると桃葉が声をかける。


桃葉「ねえ凛ちゃん! 駿くん、最近私の走りを見てくれてる気がするの! これって絶対、告白成功するサインだよね!? 2週間後のタイムトライアルが楽しみ!」


凛(中身は陸)「(桃葉さんは走ることより駿くんのことしか考えてないんだね)楽しみね桃!」


凛(中身は陸)もタイムトライアルに対して前向きに考えていた。


その後も凛(中身は陸)は陸(中身は凛)から毎晩届く練習メニューの内容をこなしながら、同時に部活での練習をこなして順調に進んでいた。


タイムトライアルに向けての残り1週間の練習の際は普段よりも烈華がピリつき、桃葉は相変わらず駿の話ばかりをしていた。


そしてタイムトライアル当日を迎える。種目は1500m。


スタート地点には、女子駅伝部8人が集まり、独特の緊張感が漂っていた。


烈華「……今日こそ引導を渡してあげるわ、凛。覚悟しなさい」


凛(中身は陸)「……(ひぇぇ、目が怖いよ……。っていうか、女子のユニフォームってスースーして落ち着かないなぁ)」


桃葉「ねえねえ凛ちゃん! 私、昨日、駿くんが履いてるのと同じモデルのレースシューズ買っちゃった! 今日はこれで走って勝つね!」


烈華は桃葉の発言を気にもせず、凛(中身は陸)を射貫くような視線で見つめる。凛(中身は陸)はそれぞれ違う圧倒的な熱量に挟まれて困惑していた。


そしてスタートの号砲が鳴り響く。


序から凛(中身は陸)は驚異的な加速を見せて飛び出した。


凛(中身は陸)「(うおっ!? なにこれ、軽く地面を蹴っただけで体が飛ぶみたいだ! いける、これなら逃げ切れる!)」


凛(中身は陸)は「天才の肉体」に興奮し、ペース配分を完全に無視して飛ばし始める。体が軽いのは陸(中身は凛)の練習メニューのおかげで調整がバッチリだからだ。


スタートで出遅れていた烈華が驚く。


烈華「(……凛が最初から飛ばしている!?本気なの?舐めてるの……!?)」


桃葉「(面白い作戦ね、凛ちゃん、ふふ)」


最初の1周400mを先頭の凛が68秒通過し、続いて烈華と桃葉が72秒で通過をする。


烈華「(このペースは速すぎる、最後まで持つはずがない!)」

冷静に後ろで烈華が前を狙っている。


2周目になり、凛(中身は陸)は呼吸が苦しくなってくるも、この400mは74秒で粘っている。


後ろの烈華と桃葉は2人で競り合いながら73秒で通過し、ジワリジワリと先頭の凛(中身は陸)との差を詰めていた。


烈華「(一気にペースダウンするなんて、凛らしくない走りだ……)」


桃葉「(今日の凛ちゃんになら勝てそう!ふふ)」


3周目になり、凛(中身は陸)は体急激に重くなっていた。


凛(中身は陸)「はぁはぁ(おかしい……あんなに体が軽かったのに……呼吸が苦しい……腕が振れない……足も思うように前に進まない……)」


この400mは78秒かかり、後ろにいた烈華と桃葉は76秒で走り、凛(中身は陸)に前半の暴走の代償が、一気に押し寄せる。失速する真横を、2つの影が並ぶこともなく、風のように突き抜けた。明らかに凛(中身は陸)との違うスピード感だ。2人と凛(中身は陸)はラスト300mで更に離れていき、烈華と桃葉は最後まで競り合ってゴール。


1位 4分39秒 烈華 

2位 4分40秒 桃葉

3位 4分50秒 凛(中身は陸)


凛(中身は陸)はラスト100メートルの直線では視界が急激に狭く、ヘロヘロになりながらゴール。


凛(中身は陸)「はぁはぁ……(体が、最後動が動かなかった……肺が焼けるみたいだ……!)」


凛(中身は陸)はあまりのキツさにその場にしゃがみ込む。部内のタイムトライアルで敗北を喫した、初めての瞬間だった。


ゴール後、烈華はしゃがみ込む凛(中身は陸)の前に立ち、失望と怒りが混ざった声で吐き捨てた。

烈華「……何よ、今の無様な走りは。後半の失速、あんなのただの素人のミスじゃない。……私は、あんな凛に勝ちたかったわけじゃないわ!」

烈華が悔しさに唇を噛んでいる隣で、桃葉は飛び跳ねて喜んでいた。


桃葉「やったぁぁ! 凛ちゃんに勝っちゃったぁ! えへへ!これで明日、駿くんに告白するね!」


意気消沈して地面を這う凛(中身は陸)と不本意ながら勝ちを手にしたことで怒りや失望が入り混じる烈華。その真ん中で、桃葉だけがキラキラした笑顔で「駿君への告白プラン」を語り続けている。側から見たら非常にカオスな状況だ。


烈華「凛、その走りでは今年の駅伝は辞退しなさい。あなたに託せるタスキは無いわ!他のメンバーで駅伝に出るから!」


凛(中身は陸)は何も言い返せなかった。自分の走りの不甲斐なさ、凛への申し訳なさ、烈華への期待、桃葉の暴走……


凛(中身は陸)「(凛さんはこんな厳しい世界で戦ってたんだ……僕は体を借りているだけでアスリートじゃなかったんだ……)」


頭の中がぐちゃぐちゃになりながら帰宅をした。とても凛には言いにくい状況だが、駅伝を走れなければ戻れないので、相談をするために普段はかけない電話をかけ、すぐに出てくれた。


凛(中身は陸)「凛さん……緊急事態です……」


ここまで読んでいただきありがとうございます!1日に数話投稿しますので、引き続き読んでいただけますと幸いです!

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