物理文芸部の活動内容とは?
桜花は霜宮朱実と名乗る女子生徒の名前を手のひらサイズのメモ帳に書き込むと、慌ただしく化学準備室を出ていった。恐らくは生徒会室に戻って、文芸部と物理化学部の廃部手続き、そして物理文芸部という謎の部活の新設手続きを進めるのだろう。
うん改めてじっと考えてみて自分の部活が何する部活なのかさっぱりわからなくなった。
そして残されたのは俺とこの霜宮って女子だけ。今は二人で化学準備室の隅にあった文芸部の荷物を一個一個段ボールに詰めている。もっとも俺は四月に入部したばかりだから、あるのはおよそ先輩たちの本ばかりだ。しかもおよそ男子高校生が読みそうなラノベとかそういう類のものばかりで、たまに霜宮が表紙に描かれた女の子のイラストを眺めて溜息をついてることに気づいてしまう。なお、どう考えたって俺のせいとは思えない。無罪だ。
「悪いな。手伝ってもらって」
ちなみに女子と小さな教室に二人きりだからって一切やましいことなど考えてないからな。
「…………別に」
なぜならこの絶妙な沈黙の間からしてこいつちょっと怖いし。
「それより、貴方にはいくつか確認しておきたいことがあるのだけど」
「お、おう。なんだよ?」
そう呼び止められて恐る恐る霜宮の顔を見る。氷点下を思わせる冷たい視線はさておき、ただ同じ学年の女子の中ではやはり美人の部類なんだと思う。人を引き付けるようなぱっちりとした顔立ちに、思わず見上げてしまうすらりとした背丈。長くふわりと揺れる黒髪はまるで生きてるかのようで、主張の控えめな胸元の上で美しく踊っているかのよう。……おっと、最後のは褒め言葉だからな。多分だけど。
「何か今貴方にやましい視線で見られた気がするのだけど?」
「そんなことはない!」
だから小さな教室でやましいことなんて……いや何こいつもしかしてエスパー?
「それより確認したいことってなんだよ?」
「ああそうね。つい身の危険を感じたせいで確認内容を忘れるとこだったわ」
「…………」
もしかしてこの物理文芸部の活動内容って、バトルロワイヤルだったりするの?
「物理文芸部って、やる気のない部員を物理でぶっ飛ばす部活のことよね?」
「なわけねーだろ!!」
こいつ、ガチでバトルロワイヤルする気でいたわ。
「あら、そうなのかしら。今まさに手元にあるこの本がそうなのだけど、こんな手で触れたくもないような物を投げ合って相手を駆逐する部活なのだと思ったわ」
「やめて投げないでそもそもそれ俺の本じゃないから!!」
タイトルに『俺と五人の義妹の清純な高校生ライフ』と付けられた本を手にして、確かにごく普通の女子生徒ならその気持ちは全くわからないでもない。だってそれ主に男子高校生が読む本ですしね。ごく稀に女子も読んでるって話も聞いたことあるけど、そんなオタサーの姫など残念ながら俺は巡り合ったことはない。
「世の男子高校生って、義妹というのに憧れるものなのかしら?」
「そんな話はないはずだぞ。……多分な」
と自分で言ってて何か引っかかるものを感じるわけだが。
「でも貴方は、桜花とひとつ屋根の下で暮らしているのよね?」
そう。俺が全力で否定しても説得力がないことは当然了承もしているけどな。
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登場人物
嵯峨野泰史: 俺。元文芸部員
霜宮朱実: 心臓に氷を宿す元物理化学部員
嵯峨野桜花: 俺の義妹。生徒会庶務
※カクヨムでも連載しています
https://kakuyomu.jp/works/822139841863405829




