表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕は透明人間

作者: あずき

ちょっと暗めです。

僕は透明人間だ。


皆には僕の姿は見えないし、声も聞こえないから会話や意思疎通ができない。

僕が見えないのは人間だけらしくて、猫や犬、鳩には僕の存在が分かる。だから猫は好きで、野良猫とかによく餌をやっていた。


誰にも気づかれないのは寂しいけれど、仕方ない。

僕は透明人間なのだからー。



そんなある日、僕は声をかけられた。



「あの、ゆうきくん!」

人けのない廊下を歩いていると、突然僕の名前を呼ばれた。驚いて、ぱっと振り返る。

そこにはクラスメイトの花園さんがいた。

他の人のことではないかとも思ったが、周りには彼女と僕以外の人間はいない。


「え…ひょっとして、僕に話しかけてる…?」

「うん、ゆうきくん…あの…」

彼女はなにやらもじもじと恥ずかしそうにしていた。僕は僕で、話しかけられるとは思わずに呆然としていた。


だって僕は透明人間なんだ。

皆には視えない。聞こえない。

なのに、どうして…。


「ごめんなさい!」

すると、彼女は勢いよく頭を下げて謝った。

「ほんとにごめん…」

「え?な、なんであやまるの…?」


訳が分からない。僕が見えたと思ったら、急に謝りだした。


「だって、あたし最低だ…関わったら自分がいじめられるからって…」


「君を無視しちゃった」


彼女の言葉に、僕を保っていた何かがぽろりと崩れだした。胸がぎゅっと締め付けられて痛くなる。


ああそうだ本当はわかってた。



僕は透明人間なんかじゃない。


ある日、突然クラスの皆にはぶられて、いじめの対象になったんだ。

本当は皆に僕の姿は見えていたはずなのに、見えていないかのように。

僕の声も聞こえてるはずなのに、何も返さない。

まるで僕がそこにいないかのようにするから、僕も僕が透明なのだとー。


いや、ちょっとちがう。

ただ、無視される毎日が辛くて、自分が透明人間であるふりをして、傷つかないようにしてただけだ。


でも、彼女は僕に話しかけてくれた。


「なんで…」

「ごめんね、ほんとにごめん。辛かったよね」

そう言う彼女の手は小刻みに震えていた。


「私もう、絶対に君のこと無視しないから…」


目頭が熱くなって、涙がボロボロ溢れ出した。おさえたいのに、それはどんどん溢れて、嗚咽までこみ上げてきた。


「もう大丈夫だよ」

彼女は泣きそうになりながら笑った。



僕は透明人間じゃなくなった。




お読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ