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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編ホラー

良くない夢|引っ越し

作者: 壱原 一

視点は成人の立位。ファミリー向けマンションのリビングダイニングと思しき屋内に、梱包された家具家電や多くの段ボール箱が積まれている。


周囲は陽の光に満ちて明るい。恐らく背後にバルコニーへ通じる窓がある。風通しの為に少し開いている。


正面の左寄りにカウンターキッチン、右端にリビングと玄関を繋ぐドアがあり、ドアは開け放たれている。


ドアの先の廊下の全面に、やはり燦々と日光が注ぎ込んでいて、玄関も全開されていると分かる。


これから搬出と感じている。疑問や反発はない。


一方、光景に見覚えがなく、引っ越しも身に覚えがない。


仮に引っ越すとしても、段ボール箱が多過ぎる。こんなに沢山の段ボール箱が必要な訳はないと感じる。


特に左手前の下から2番目に積まれている段ボール箱が気になる。


黒い油性マジックで、大きく、雑に、片仮名らしき直線的な6字程で、内容物か置き場所が書かれている。


良く読めない。


知らない人の字で、知らない人の段ボール箱なので、知らない人のものが収められているから、業者さんに一緒に運ばれてしまわないよう隅へ除けておかなくてはいけないと思う。


隅へ除けておかなくてはいけないと思う。


隅へ除けておかないと引っ越し先に知らない人のものが収められた段ボール箱が運び込まれてしまうと思う。


一緒に着いてしまうと思う。


思う内に、燦々と日光が注ぎ込む全開の玄関の外の共用廊下から、業者さんの軽快な足音が近付いてくる。


「こんにちはぁー」と朗らかに間延びした挨拶が聞こえる。


開け放たれたリビングのドアへ歩み寄り、全開の玄関に向き合って、共用廊下に佇む業者さんへどうぞーと返すと、インターフォンが鳴る。


「こんにちはぁー」と朗らかに間延びした挨拶が聞こえる。


それで気付く。


搬出じゃない。


これから搬出じゃなかった。


もう引っ越しが済んでいる。


左後ろの下から2番目に知らない人のものが収められている内容物か置き場所が良く読めない段ボール箱が着いている。


開け放たれたリビングのドアの傍で、全開の玄関に向き合って、インターフォンの音を聞く。


燦々と日光が注ぎ込む共用廊下に佇む人が「こんにちはぁー」と挨拶する。


この人がインターフォンを鳴らしていると思う。


一緒に着いてしまったと思う。


逆光で良く見えない。


身に覚えがなくて怖い。



終.

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