あつまれ! こうこうせいの物語!
本話で扱う『The Dark Side of Japan』を見ていると「うわっ、現代日本の闇は深すぎ…?」と思わなくもないです。
このエッセイではたびたび海外の方からの日本のなろう系への反応を取り上げてきました。
今回もまた一つ海外のなろう系への反応を取り上げてみたいと思います。
意訳すると
――日本の物語の主人公は高校生が多すぎない?
なろう系と言いつつ、なろう系に限った話ではないでしょう。
読み手の方も一度は思ったことがあるかもしれません。
いつしかそれが当たり前すぎて気にしなくなりますが。
書き手としては、やはり書きやすいからでしょう。
高校生ということが物語を書きやすくさせる四つの理由。
ひとつ、子どもと大人の狭間。
ふたつ、ほどよい選択肢。
みっつ、規則的な生活。
よっつ、書き手の趣味。
それらを順に見ていきましょう。
◆ ◇ ◇ ◇
ひとつ、子どもと大人の間
高校生はその岐路に立っています。
登場人物を子どもにも大人にも見せることができます。
その岐路には――恋に友情に進路――悩みごとがいっぱい。
そしてそれは誰もが通る道。通ってきた道。
物語が読み手へと届きやすいです。
◆ ◆ ◇ ◇
ふたつ、ほどよい選択肢
大人になるにつれて選択肢も広がります。
すると、増えた選択肢の分だけ葛藤も増えます。
物語としては作りやすいです。
それが大人になった瞬間にいきなりオープンワールドですからね。
書き手としては選択肢が広すぎるのも大変なのです。
広すぎると世界を狭くする作業が生まれます。
◆ ◆ ◆ ◇
みっつ、規則的な生活。
高校生には家庭があって、クラスがあって、部活があって、バイトがあります。
ですが、その生活には原則的に規則性があります。書きやすいです。
一年間固定されたクラス制度が一番大きいと思います。
登場人物の仲が深まる下地ができていますからね。
あとは制服、というか風紀。
私服や装飾品を考えて描写するの結構たいへんです。
◆ ◆ ◆ ◆
よっつ、書き手の趣味。
物語なんてものは高尚に言うと「芸術」、俗に言うと「爆発した妄想」です。
脳内で爆発した物語が、現実に溢れてきたものです。
書き手に思い入れがあるのでしょう。
高校生に対して。もしくは、過去にできなかったことに対して。
インターネット上で情報を集めていたらあるの動画に出会いました。
それはYoutubeの『American Reacts to The Dark Side of Japan』という動画です。
動画タイトルに含まれている通り、『The Dark Side of Japan』という動画に対する、とある米国人Youtuberの反応です。
元の動画もその反応動画も、他国の方々からの切り口で全体的に興味深かったです。
動画では、日本の長時間労働についても触れられていました。
その際に、動画の投稿主が、
――なぜ日本のアニメは高校生、十代ばかりなのか?
これに対して持論を述べる展開があります。
その彼の持論が興味深かったです。
あくまで一米国人の意見ですが、意訳すると、
――学校を卒業するとクソみたいな世界が待っているからだ。
――書き手の最後の楽しかった記憶って言うのが高校生、十代の記憶なんだ。
――大人が舞台の物語を書いてみたら何が起こると思う?
仕事で主人公不在の物語ができあがっちゃうぜ。
そんな物語を誰が見たくない? 見たくねーだろ。
――大人の世界ってのは死ぬほど退屈だ。
それを知っているから誰も書きたくねーんだよ、大人の物語は。
――日本のアニメや漫画をバカにする奴もいるだろう。
だけどよ。同じ環境にいたらお前らもぜってー同じもん書いてるぜ。
私は好きですよ? 『小林さんちのメイドラゴン』。
念のためにお伝えしておくと、動画の投稿主は別に日本を貶しているわけではありません。
むしろ、語り口的には日本の漫画やアニメへは好感を持っているとも言えます。
ここまで物語における高校生について述べましたが、
物語の高校生って、ソーメンにおけるわさびみたいですね。
最初はその舌と鼻に走る痛みを嫌っていた人も、
――むしろソーメンにわさびはあって当然でしょう!
いつしか心変わりしていく適応現象のようです。
なくてもいいし、ないほうが好きな人もいる。
けど――高校生主人公――やっぱり好きな人が多いのではないでしょうか。
『The Dark Side of Japan』によると日本人は十二時間から十八時間働いて、居酒屋かパチンコが息抜きしているらしいです。そんなこたーないです……よね?




