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きみの雫で潤して  作者: 餅月 響子


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第47話 見えないけれど信じる絆

街の中の交差点。

たくさんの人が行き交っている。

歩行者信号機のカッコウの音が耳に響く。


杏菜は、白杖をついて前に進んだ。

横にはヘルパーの堀込が様子を伺いながら、

前に進む。先々と進むのは結子だ。


目が見えるようになって、どこに出かけても新鮮さを増す。テンション高めな子供のようにわちゃわちゃ動いている。落ち着いてといっても落ち着きはしない。嬉しすぎるのだ。

目で見えるという世界が変わったから。


まだ、見ることはできていない杏菜は、

今日家を出てくるのにも苦労した。



****


誰と出かけるのか。

どうして、白杖を使ってまで行くのかと

問い詰めてくる湊人がいる。


試作品として、

堀口教授から預かっていた

SEE GLASSESは湊人の部屋にある。

使おうと思えば、いつだって使えた。


でも、杏菜は拒否をした。


「今じゃない!」


「は?今じゃない?

 どういうことだよ。」


 湊人は明らかに見えることの方が

 何百倍も便利なはずなのを

 拒否する意味がわからなかった。

 理解に苦しみ喧嘩する。

 逃げるように飛び出してきた。


 まだ気持ちが落ち着かない。

 見えたら、目の前に湊人がいる。

 金髪じゃない黒髪の杏菜が理想とする

 男性が近くにいるのだ。

 今でさえもその顔を想像して、

 近寄りがたい。

 できることなら一昔前の湊人に 

 戻ってくれないと日常生活に

 きっと支障が出る。


 超推しのアイドルと一緒に生活するくらい

 緊張するのだ。


 こんな経験は今までなかったのに

 なぜだか心臓が早まるのを止められない。


 マンションを飛び出して、

 ヘルパーの堀込と結子と待ち合わせにと

 電車で10分はかかる駅前の犬の

 銅像前に着いた。


「杏菜ちゃん!お待たせ。

 ほら、堀込さんもしっかり連れてきたよ。

 今日は、髪、大丈夫そうだね。」


「…うん。

 今日は、やってもらったから。」

 

 下を向いて答える。

 結子は、杏菜の顔を覗き込む。

 堀込も心配そうに見つめた。


「杏菜ちゃん、大丈夫?」


「うん。大丈夫。

 切り替えないと楽しくないもんね。

 んじゃ、行こう。

 掘込さん改造計画!」


「うん。掘込をさらに

 かっこよく掘り起こせ!

 エイエイオー。」


 結子は気合いを入れて、拳をあげる。

 掘込はそこまで望んでないのに

 どうしてやる気に満ちているのか

 不思議で仕方なかった。

 2人の後ろを追いかけるように

 着いていく。


 今日は仕事上というよりは

 プライベートの付き合いのため、

 緩く接していた。


 アパレルブランドが

 たくさん入ったデパートに向かった。


 あっちもいいなこっちもいいなと

 結子は目移りして、自分の着る服を

 見始めた。


 掘込と杏奈は結子を見守るように

 着いて歩いた。


「杏菜ちゃん、その後、どう?

 しばらく、ヘルパーの仕事依頼は

 受けてないけど、一ノ瀬さんからは、

 だいぶ自分のことできるように

 なってきたって聞いたよ。」


「…うん。

 卵焼きとか、少しずつ料理してた。

 洗濯機のスイッチ入れるくらいなら

 できるようになったし、掃除はロボットに

 お任せだけど。」


「…そっか。少しずつ

 自立できているんだね。安心したよ。

 あ、あのさ、杏菜ちゃん。

 僕さ…。」


「あーーー、2人して、話しててズルい。

 私も混ぜてよ。」


 自分の服を見ていた結子は

 仲良さそうに話す杏菜を

 うらやましく感じた。

 結子は掘込に片想いしていたからだ。


「結子ちゃん。

 掘込さんの服見るって言ってたのに

 違うの見てるよ。」


「……あ、そうだった。

 ごめんなさい。

 ついつい、可愛い服がいっぱいあるから。

 目が見えちゃうとさ、

 いろんなこと楽しめちゃうよね。

 早く杏菜ちゃんもつければいいのに…。」


「私は見えることが全てじゃないからさ。

 むしろ不自由なこともなんだか

 慣れてきたかな。」

(全部嘘。見えた方がいいに決まってる。

 そう言い聞かせたいもう1人の

 自分が言う。)


「そうなの?」


「いいから、早く服見つけに行こうよ。」


「うん。そうだね。」


 3人は、

 メンズファッションのお店が

 並ぶフロアに移動した。


 エレベーターの移動中、

 どこか気まずそうな3人だった。




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