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第4話 仕事

ビルとビルの間にネオンが輝いている。


たくさんの人が行き交っている。


夜の飲み屋街のとある店が

繁盛していた。


「はーい!7番テーブル様に

 シャンパンタワー入ります!!」


 ガヤガヤ賑わってきた。

 お客さんたちは7番テーブルの

 茶髪のふわふわクルクル

 パーマの女性客に注目した。


 シャンパンタワーの他に

 ドンペリニヨン マチュザレムを

 注文していた。


 市場価格は90万円するところを

 お店では120万円で売っていた。


 興奮のあまりにつけまつ毛が

 取れそうだった。


「羽振りいいっすね。あのお客さん。」


 ホールのスタッフとともに

 休憩室の暖簾からのぞいていた。


 タバコを咥えて天を仰ぐ。


 金髪でスーツの一ノ瀬湊人は、

 ホストクラブで働いていた。


「今日も先輩のヘルプ

 行かなきゃないんかな…。」


「アキラさんの指名客、

 今日来る予定じゃなかった?

 約束してましたよね。」


 湊人の源氏名は『アキラ』だった。

 

「マジかー。

 やりづらいな。」


「先週、やばかったっすよね。

 八重城兎矢やえしろとうやさんと

 バトったって聞きましたよ、

 大丈夫でした?」


「八重城?ってだれ?」


「あ、すいません、本名言っちゃった。

 ヒカルさんでしたね。

 源氏名。絶対ナンバーワンじゃないと

 気が済まない人。」


「あー、あいつね。

 俺の客も持ってくやつだろ。

 結局、

 その客もヒカルよりも俺がいいって

 言ってたよな。

 まさか、これ以上邪魔するならって

 言われるとはね。

 殴られるとは思わなかったよ。」


「あー、大変でしたね。

 気をつけてくださいよ、アキラさん。

 ヒカルさんのバックには

 《《これ》》がいるらしいですから。」

 

 ホールスタッフのユウジは、

 頬に傷をつけるような

 ジェスチャーをした。


「薄々ね、知ってたけどさ。

 お金絡みも怖いしさ。

 サツにパクられたくないもんね。

 気をつけるわ。」



店の出入り口で、声が聞こえてきた。


「いらっしゃいませ!

 お客様、ご来店です!!」


「いらっしゃいませ!」


スタッフの威勢の良い声が響く。


「アキラさん、噂をすれば、

 例の彼女来てますよ。

 ミカさんでしたよね。」


モデル体型の豊満な胸を持つ常連客ミカは、

アキラをいつも指名する

大事なお客様だった。


「ああ、

 いっちょ、仕事してきますかー。」


 アキラは腕と肩をポキポキと鳴らして

 戦場に向かった。


 いつものテンションから

 営業スマイルへと変化する。


 アキラの源氏名を持つ一ノ瀬湊人は

 表と裏の顔が存在する。


 スーツをビシッと着直して、

 ネクタイを整えた。


 カツカツと靴が鳴り響く。


 ミカが座る席に着いてすぐ、

 膝を曲げて、まるでプリンセスを

 相手するかのような体制になった。


「いらっしゃいませ。

 いつも、

 ご指名ありがとうございます。

 アキラです。

 ミカさん、

 隣座ってもよろしいでしょうか?」


「そんな、堅苦しい挨拶なんかいいからー

 こっち来て〜!」


 ミカはおしゃれなドレスを身にまとい、

 アキラの腕を胸におしつけて、

 席に座らせた。


 言われるがまま、席に座って

 丁寧に対応していく。


 一歩引いた対応がミカにとっては

 心地よいようだ。


 何もしないうちから

 ドンペリが入る。


「1970年製のドンペリミニオン

 入りました!!

 200万円お買い上げです!」


 ホールスタッフ数名がクラッカーを鳴らす。


「ありがとうございます!!」


 スタッフ全員が叫んだ。


 今日の売り上げのトップだった。


 奥の部屋で遠くから見ているヒカルは

 苦虫を潰した顔をして

 悔しがっていた。


「ヒカルくーん、

 私もドンペリ注文しようか?」


「ごめんなー、ユキコ。

 あのドンペリは店に

 1本しか置いてないんだよ。

 次来た時にお願いしていいかな?」


「えー、そうなんだ。

 残念。

 ヒカルくんの

 笑った顔見たかったのに〜!」


「んじゃ、今日、アフター行く?」


「え?いいの!?

 もちろん行くぅー。」


 少し体格のいいユキコは

 ベタベタとヒカルの横にくっついた。

 大手社長の孫でかなり金持ちであった。


 アキラはせっかく

 売上に貢献できたというのに

 あまりいい顔をしていなかった。


「アキラさん?

 大丈夫っすか?」


 シャンパンタワーを準備していた

 ユウジが声をかける。


「あ、ああ。

 まあ、そうだよな。

 売上貢献できてるもんな。」


 悩むところもあるが、

 まずは成績を残せたと自分を褒めた。









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