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きみの雫で潤して  作者: 餅月 響子


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第23話 不確かな未来、絆強くなる瞬間

病室の引き戸を開けた。


湊人は個室のベッドの上を見ると

誰もいない。


トイレにでも行ったのかと

出入り口に戻った。



「うわ!!」


 目にはぐるぐるの包帯を巻いた

 杏菜の姿があった。

 一瞬、ミイラでもいたのかと思った。

 入る時は視覚に入らずに杏菜がしゃがんでいることに気が付かなかった。



 湊人は改めて両膝に手をついて

 しゃがんで、杏菜をじっと見た。

  

 口から棒つき飴を取り出して、

 口の中に入れて、ぼりぼりと食べ終えた。



「ん?湊人?

 そこにいるの?」



 物音と気配でそばにいたのがわかった。

 さっきの叫び声は何だったんだろうと

 疑問に思う。



 甲高い声で湊人は返事する。



「いないよ。」


「え、誰。」


「僕は妖精だよ。」


 

 急に妖精劇場を始めようとする湊人。



「は?どこの妖精よ。

 声高すぎ。

 絶対湊人でしょう。」



「違うよ、妖精だよ。」



「は?」



だんだん冗談がすぎて、

腹が立ってくる杏菜。


自分の腕を無我夢中で振り回した。



危なく、湊人に当たりそうになる。


「おっと!」


 急に低い声が出てしまった。

 ジャンプして、その場から避けた。


「あ、その声は!?

 やっぱり湊人じゃん。

 嘘つきだ!!」



「ち、バレたか。」



 立ち上がって、ため息をつく湊人。

 杏菜の腕を持ち上げてぺたんと座った

 体を起こした。


「ちょっと、優しくやってよ。

 痛いじゃん。こっちは見えないんだよ。」



「これでも優しくやってますぅ。

 すいませんね、ヒカルみたいに

 お姫様だっこできなくて!!」


 ヒカルに対する嫉妬心がダダ漏れだった。


 そう言いながらもベッドの方に

 誘導した。



「ほら、ここ座って。

 ゆっくり横になれって。」


 ぶっきらぼうだが、なんだかんだ 

 的確にベッドに寝かせてくれた。

 

 杏菜は、嫌な言葉を発しようとしたが、

 今は何も出てこなかった。


「あ、ありがとう。」



「目、見えなくなったんだろ。」



「……うん。そうみたい。」



「俺のせいでごめん。

 ミカのこと、しっかり見てなかった

 俺が悪いんだ。」



「ううん。

 私も湊人のことを探しに

 あのホストクラブに行ったもんだから。

 バチが当たったんだよ。

 贅沢だって。」


「は?贅沢?

 なんの話だよ。

 杏菜は時々何考えるかわからないな。」


 湊人は、杏菜の頭をポンポンと撫でると、

 窓のブラインドを触って、外の景色を

 眺めた。


 たくさんの車が行き交っている。

 高いビルが立ち並んでいた。



「俺さ、ホストやめるから。」



「…え?」



 湊人は、杏菜の顔の近くに行き、

 まだ治療が完了していない包帯を外す。

 包帯が外された感覚はわかっていたが、

 目が空気に触れているというのに

 明るくならない。


 くすんだ灰色の瞳があった。

 焦点が合わないところを見ている。


 湊人はその様子を見て、

 杏菜の頬を両手で

 触れた。

 手が小刻みに震えていた。

 手から伝わる温かさがあった。

 杏菜も湊人の手を触れる。


「ほんと、ごめん。」


 また涙が出てきた。

 目が見えないのに、

 涙はとめどもなく出る。


 湊人は両方の親指で杏菜の涙を拭った。



「俺が、杏菜の目になるから。」



「…え。」



「杏菜の目が見えるようになる機械も

 開発する。それまで待っててくれるか。」



「ん?どういうこと?

 湊人、ホストじゃないの?

 しかも、やめちゃうし、何するの?」


「言ってなかったんだけど、

 本当は大学生だから。俺。

 ホストはバイトみたいなもんだよ。」


「バイト感覚でできる

 仕事じゃないでしょう。普通。」



「俺、普通じゃないから。

 大丈夫。」



「は?変な人。」


 笑いながら、楽しいひとときを過ごした。

 湊人は変わらずに

 いつも通りに対応してくれた。

 

 腫れ物にさわるようにいやがることは

 してない。

 

 ありのままの杏菜を受け入れた。

 目が見えなくなっても

 杏菜は杏菜のままだ。


 

 杏菜は何気ない会話をしてても、

 すぐに涙が出る。

 涙もろくなったのだろうか。


 ただそばにいてくれるただそれだけで

 救われた気がした。


「見えないくせに何度も泣くなって。」



「だってぇ〜…。」



「嘘、嘘。泣きたいだけ泣けばいいさ。」


 湊人はティッシュボックスから次々と

 ティッシュを渡した。



 2人でいる時間が愛おしかった。

  


 ずっとずっと続けばいいなって思った。


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