夜会
昨年に続き今年もマルラス王国の夜会の招待状がクロノスの元に届いた
豪奢な馬車2台に作物を載せた荷馬車が十台続くちょっとした
キャラバンみたいな様相だった 理由はマルラス王国からの支援要請 マルラス王国では作物が育たず食料不足になった為 聖王国から輸入の形で賄おうとしていた
クロノスは今回はドラゴに頼まず 自ら馬車に乗り指揮を執った もちろん周囲はシリウス旅団が警備している 一台目はクロノス王とシリウスにノエル今回はマリアート様は欠席されている
二台目はメリルとアリア 「また私達は罵声を浴びせられるのでしょうか?」
アリアがメリルの手を握りながら震え声で言う
「大丈夫よアンナ 私達は聖王国の駐在大使だし 何よりシリウス旅団の一員なのよ 自信を持って胸を張りましょう」アリアの手を強く握る
この大キャラバンを狙う馬鹿はいないと思ってたが いた
キャラバンに50人ぐらいの盗賊団が襲撃してアッと言う間に旅団員に取り押さえられていた 最後尾に盗賊を数珠繋ぎにしてキャラバンは進む
マルラス王国正門に着くと 貴族専用門から入国する 貴族専用門に入る荷馬車や数珠つなぎの盗賊を見て普通門に並ぶ人達から驚きの声が上がる
門内に入り 衛兵に盗賊の集団を引き渡し そのまま王宮の門前に行き 荷馬車と共に王宮に入っていく
王宮の入り口には王をはじめ多くの貴族が待っていて シリウスとノエルに続きクロノス王が馬車を降りると歓声と拍手が起こる
二台目の馬車からメリルとアリアが降りると周りがざわつく
取り替え子と嫌悪していたが シリウス旅団の正式な窓口であり旅団のメンバーになった事も知れ渡っている 貴族達もどう反応していいのか分からずにいた
遠巻きにメリル達を見る者の横を作物を積んだ荷馬車が備蓄庫へ誘導される
夜会が始まり クロノス王が紹介され 続いてシリウス ノエル メリル アリアと着席していく 順番は昨年と一緒だ ただクロノス王以外の四人は正装やドレスの上にシリウス旅団のマントを着用していた
マルラス国王の乾杯の声で夜会が始まった
壇上からホールを見ていると可愛らしいピンクのドレスにシリウス旅団のマントを着ている女の子に老若男女問わず群がっていた
中心にいるのはエメットだった
エメットより少し年上の少年が
「テメエ 俺の婚約話を断りやがって!!」エメットに掴みかかろうとするが 給仕に扮していた団員に投げ飛ばされる
「大丈夫か? エメット」裏返して前掛けに見せかけていた旅団のマントを周りに見せつけるように羽織る
「あ ありがとうございます」エメットが頭を下げると
「なーに 旅団は家族だ 家族を助けるのは当たり前だろ」そう言うとマントを前掛けに偽装し給仕の仕事に戻って行った
メリルとアリアも見ていたらしくフーッと息を吐く
そんなシリウス達の前に挨拶の順番待ちの貴婦人達が列をなしていた
時候のの挨拶と相変わらずのお茶会や夜会の誘いを受け流していると
「貴様がシリウスか? 俺様が旅団に入ってやる!! そうすれば旅団の名も更に上がるだろう!!」シリウスより少し若い青年が吠える
「先ずは貴様の腕を見てやろう」青年が剣の柄に手を掛けると同時に喉元にノエルの剣先が当てられていた
「グッ」固まっている青年の顔をノエルが蹴り上げ壇上からホールに落とし
「国賓に剣を向けようとした反逆者だ!! 衛兵 牢にぶち込んでおけ!!」転がる青年を衛兵が取り押さえ外に連れていく
そんな騒ぎがあったというのに
「家の子をシリウス旅団に入れて下さい」だの「家の娘を側室に」と貴婦人達が言ってくる
「入団試験に合格すれば誰でも入れますよ」「側室はいりません」
と軽く流す
旅団のマントを着て楽しそうに喋っているメリルとアリア エメットを羨まし気に見る貴婦人達
そして 最後の爆弾が落とされる
「皆の者 今日は楽しい夜会であった 今年はワイバーンの出現や作物の出来が悪かったりといろいろあった だが原因は分かっておる レベッカは竜帝の加護を持っていたのでそれを畏れてワイバーンや下級竜は現れなかった メリルとアリアはそれぞれ緑竜と水竜の加護を持っているので今まで我が国は豊作続きだった だが今三人はこの国におらん これがお主達が私に求めた答えだ」国王が言うと
ホールはざわつき 怒号が飛び交う
「三人を連れ戻そう」皆が言うが
「どの面下げて言うのだ? ちなみにメリルとアリア この国に帰ってきてくれるか?」国王が二人に問うと
「残念ですが国王陛下 私は生涯聖王国駐在大使として生きたいと思います」
メリルが言うと「私もです」アリアも続く
「と言うわけじゃ 自分の愛する妻と娘を手放した儂への罰だと思っている」
国王は寂しげに呟くと壇上から立ち去った
ホール内は遅くまでざわついていた




