夏空
「は 初めましてレベッカと申します」カテーシーをしようとしてズボンの端を摘んでしまい慌てて赤面するレベッカ
「こ これは なんと 竜帝様の加護をお持ちとは!!」初老の男性がレベッカの前で跪き頭を下げ「なるほど だから緑竜と水竜は子供達に加護を与え従魔になったのか」意味も分からず見てくるレベッカに
「もし 次にお子を産まれるなら 是非にこの黒龍の加護を授ける事をお許し下さい」顔を上げ真剣な表情で言ってくる
「ドラゴ 急にそんな事を言われて レベッカさんも困ってるじゃないか」若い美しい青年が言うと
「は も 申し訳ありませんクロノス王」言って青年の後ろに立つ
「初めましてレベッカさん 僕はこの国の王をやっているクロノスだよ 隣りの女性は現女神のマリアート 後ろにいるのが黒龍のドラゴだ よろしくね」
若い国王に現女神 おとぎ話でしか知らない古龍 ここはなんなの!!
理解が追い付かないレベッカに
「それでね 実は僕もメリルとアンナの友達なんだ あの二人が時折見せる寂しげな顔がどうも気になってね シリウスに言ったら彼も同じ考えだったんで旅団で探してもらってたんだよ」クロノスに言われ
「あ ありがとうございます」頭を下げるレベッカ シリウス旅団の団長と友達? 聖王国の国王と友達? パニックになりそうな自分を押さえていると
「じゃあ 二人に会いに行こうか?」クロノスが立ち上がる
玄関に着けてある馬車に乗る時 クロノスが「ああ もう夏だねー」呟き
レベッカも上を見ると 眩しい程に青い夏空が広がっていた
[ああ もう夏なのね]そう思いながら馬車に乗るように促され乗り込む
中央通りを進む馬車の窓から 人族 黒猫獣人族 エルフが楽しそうに買い物したり 喋ったりしているのを レベッカは不思議な気持ちで見ていた
賑やかな通りを外れた先の大きな建物の前で馬車が止まり ドラゴが中に入って行き 若い男女を連れて戻ってきた 男女二人は馬車に乗り込み
「初めまして 私はシリウス旅団の団長シリウスと申します こちらは副団長のノエルです」
「こ この度はご迷惑をおかけしました メリルとアンナの母レベッカと申します」
「迷惑だなんて こちらこそ無理を言って聖王国に来ていただいて ありがとうございます 二人も喜ぶと思います 今日は学校も休みなんで家に居るはずです」
「学校?」訝し気にレベッカが聞くと
「ええ この国の子供は午後か午前に学校に行く事が義務付けられているんです」
「あの子達が学校ですか?」
「ええ 楽しんでいるようですよ」
取り替え子と言われて 虐めとか仲間外れになっているのではと不安になるレベッカ
「さあ 着きましたよ」御者台に移っていたドラゴが声をかける
シリウスが馬車から飛び出し 畑に向かって大声で叫ぶ
「おーい メリルー アンナー」
レベッカも馬車から降り広大な牧場と果樹園に見とれていると手前に植えてあるトウモロコシ畑がガサガサ揺れ小麦色に焼けた二人の少女が出てきた
「「シリウス兄さーん ノエル姉さーん」」声を上げながらこちらに走ってくる
最後に見た時は 表情も乏しく青白かった二人が少し大きくなった姿に満面の笑みを浮かべ走ってくる 途中立ち止まり不思議そうに私を見て目を見開き「「お お母様!!」」叫んで私に抱きついて泣いてくれる
「黙っていなくなってごめんなさいねメリル アンナ」泣きながら謝ると
「いいの お母様が悪いんじゃないって知ってるから 私達が取り替え子だからいけなかったの 嫌いにならないで」メリルは泣きじゃくりながら言ってくれるが
「可愛いあなた達を嫌いになんてなる訳無いじゃない」二人の頭を撫でながら言うと
「「本当? お母様」」
「もちろんよ メリル アンナ あなた達を愛してるわ」
抱きしめてくる二人からそっと離れてクロノスの前に跪くと
「クロノス王様 私の移住をお許し頂けませんか?」
「もちろん そのつもりで来てもらったんだから」クロノスに言われ メリルとアンナの所に行き
「これからは 三人ずっと一緒よ」レベッカに言われ「「うん うん」」メリルとアンナはレベッカの腰に抱き着きながら顔をグリグリとレベッカに押し付けている
少し落ち着いたところで 「お茶でもいかがですか?」メリルが言い
みんなで屋敷に入ると「「お帰りなさいませ お嬢様」」ロッテとアンが出迎える
お茶を出す人数を確認する為 メリル達を見ていたロッテとアンが同時にレベッカを見つけ 目を見開いて「「お 奥様!!」」叫んでレベッカの足に縋りつく
「久し振りね ロッテ アン 二人の世話をしてくれてありがとう」しゃがんで二人の顔を見ながら労うレベッカに「「いいえ もったいないお言葉です」」涙を零しながら言うロッテとアン
屋敷の奥から銀色の毛並みのフェンリルが出て来ると
「あ 母ちゃん お母様が来てくれたの!!」メリルがフェンリルに飛びついて 嬉しさを爆発させている
レベッカの所に行き
「お母様 母ちゃんは 慣れない土地で寂しい想いをするんじゃないかって言って ずっとこの家にいてくれたの」言われたレベッカは恐る恐るフェンリルに近づいて
「娘達がお世話になりまして ありがとうございます」頭を下げる
母ちゃんは尻尾を振って 「なあに 気にする事は無い 二人共良かったな」
メリルとアンナの頬をペロリと舐めると「「うん ありがとう 母ちゃん」」
二人は母ちゃんに抱きつく
その夜 レベッカ メリル アンナは久し振りに親子で一つのベッドで寝た メリルとアンナの寝息を聞きながら窓の外を見ると
夏の夜空が見え涙が零れた




