レベッカ
春の終わり頃 夕食を終えた時間帯に扉を叩く者がいた
こんな時間に誰だろうと思いながらも「どなた?」と聞くと
名は名乗らず「こちらにレベッカさんはいらっしゃるでしょうか?」と聞いてくる
あの国は追放だけではなく 私を亡き者にしようとしているのか?と戦慄するレベッカ
ここで嘘を言って 助けてくれたウッドおじさんとライナおばさんに迷惑をかける訳にはいかない 少し考えて扉を開けると 黒いフードを着た女性が立っていた
「私がレベッカですけど?」言うや「レベッカ・ヴァン・マルラス様ですか?」
微笑みながら聞いて来るが「私は追放された身なので 今はただのレベッカです」
「失礼しました では質問を変えます メリル様とアリア様のお母様ですか?」
「あの子達に何かあったんですか?」子供の名を出され慌てて聞くと
「お二人共 今はマルラス国の駐在大使として聖王国で元気に暮らされてますよ」
「え? 駐在大使? 聖王国?」意味が分からず聞き返すレベッカ
「名乗りが遅れて申し訳ありません 私は聖王国に拠点を持つシリウス旅団のミキと申します」フードを上げ頭を下げるミキ その頭には猫耳がピョコンと出ていた
黒猫獣人族?レベッカが猫耳を見つめていると
「ああ 申し訳ありません 黒猫獣人族なんてビックリしますよね」
フードを被りながらミキが言うと
「え ええ ちょっと驚きました」素直に言うレベッカ
「それでですね シリウス旅団の団長シリウスがメリル様とアリア様と友人になりまして お二人の現状に心を痛めてレベッカ様を探すように団員に指令を出されてマルラス王国の近辺を虱潰しに捜査していたわけです」
「シリウス旅団の団長と友達?」ますます意味が分からない
「はい 友人だそうです そしてメリル様とアリア様はレベッカ様にとても会いたがっておられるとの事 私と一緒に聖王国に来て頂けませんか?」
「は はい」真偽は分からないが 娘達に会える可能性があるなら死を覚悟してもいいと思いながら頷く
「それでは ご不安でしょうから明日町の冒険者ギルドにいらして下さい」
そう言ってミキは帰って行った
本当だろうか?不安と希望の気持ちが入り混じる夜えを過ごして 朝も早くに冒険者ギルドに行くと 昨日のミキと同じ服を着た若い男女がギルド前に集まっていた
レベッカが近づいていくと その集団の中から
「レベッカ様ー ここです」ミキが声を上げて手を振って来る
ミキと一緒にギルド内に入ると カードのようなのを職員に見せ
「馬車をお願いします」と言うと職員はカードを見て
「シ シリウス旅団!!少しお待ちください」驚いた顔をして奥に走って行った
奥から屈強そうな男と共に戻ってきた職員 男が
「ここのギルド長のアンバだ」手を出しミキと握手をしながら
「じゃあ 悪いけど合言葉を言ってくれるか?」言うと
「春の森にさえずる鳥は青い鳥」ミキが答えると
「分かった」奥に行こうとするアンバに「これも一緒に本部に送って下さい」と手紙を差し出した
アンバが奥に入ってる間に 今のやり取りの理由を聞くレベッカ
「私達の冒険者カードは冒険者ギルド発行では無く 聖王国発行の特別な物で物凄く価値というか利便性が高いんです そこに目を付けた愚か者が シリウス旅団のカードを団員を襲い奪って不正に使用した事があり 旅団カードを使用する時は本部に確認をするようになったのです シリウス旅団は聖王国との関係が密接であり ギルド本部も難しい案件を多数受けてくれる我々の保護に乗り出し 各ギルドに旅団本部との転送装置を置いてくれているのです 多分今頃 合言葉の確認と手紙を送り 返事を待ってると思います」
併設された食堂でミキと果実水を飲んでいると アンバが来て
「お待たせしました 確認も取れたので馬車の用意をしました」
丁寧にミキに言い 頭を下げる
「ありがとうございます」ミキもギルド長に頭を下げ 近くの団員に「皆に出発だと伝えて」そう言って立ち上がった
一か月程かけて50人の団員達に守られながら聖王国に着いた
最初は20人ぐらいだったが旅の途中でレベッカを探すために各地に散っていた団員が合流しこの人数になった
増えていく団員を見ながら 自分を探す為こんなに大勢の団員が動いていたのか?今更ながら聖王国は私に何をさせたいのだろう?何かの交渉の材料にでもするのだろうか?等の不安も頭をよぎるレベッカ
「着きました 先ずは国王様に挨拶に参りましょう」御者台に座るミキに声をかけられるが
着ている服を見て「こんな 汚れた服で御前に出てもいいのでしょうか?」
「構わないと思いますよ 国王は服では無くレベッカ様を見たいのですから」
ミキに言われ 一緒に玄関ホールに入るとメイドが「国王様がお待ちです」
そう言って案内してくれる
大きな扉の前で止まり ノックをして
「クロノス国王 レベッカ様をお連れしました」言って扉を開ける
中には美しい男女と 荘厳な雰囲気をした初老の男性の三人がいた




