勇者ノエル
[お前は 追放だ 今すぐこのパーティーを抜けろ]
魔法使いのコルテと治癒士のニーナにいきなり宣言された
「ちょっと待て いきなり何を言ってんだ」
「俺らはSクラスダンジョンの探索を許可された 一流のパーティーなんだぞ
そんなパーティーにお前みたいな役立たずは不要なんだよ」
俺だって付与魔法でサポートしてきたじゃないかと思うが1.3倍程の強化しか出来ないから
仕方がないのかな それでも理不尽だ ここまで頑張って来たのに
「どうかしたのか?」
お花摘みから 帰って来た勇者ノエルが聞いてくる
「なに シリウスをクビにしただけさ」コルテが悪びれもせず言う
「なに?シリウスをクビだと 何故だ?」ノエルが少し慌てたように問いただす
勇者ノエルは幾つものパーティーを渡り歩き偶然俺たちを見つけてお試しでパーティーに入っている
「いや 勇者ノエルも入ってくれたし もう役立たずのこいつはいらないかなと思って」
「そうか それでは私もこのパーティーを抜けよう」
突然の宣告に二人は慌てる
「いや ノエルがいないと 俺たちだけじゃ 無理だ」
「そうよ 貴女がいるから Sランクダンジョンの許可も出たのに」
ニーナとコルテが叫ぶ
「二人共 そんな大声を出すとモンスター共がやってくるぞ」
前方からミノタウロスが三匹歩いてきた
「じゃあ 私とシリウスはここで失礼する」
言うやノエルは俺を抱えて出口に向かって走り出した
「「ギャー!! 待ってー」」
二人も死に物狂いで走り 追いかけて来る
全員ダンジョンから無事脱出できた
「おい! ノエルふざけるなよ」コルテが真っ赤な顔でノエルに詰め寄る
「何もふざけてはいないぞ お試し期間を終了させただけだ それにシリウスをクビにしたのなら
私が貰っても文句は無いはずだ では今度こそ本当に失礼する」俺を抱っこしたまま
街への道を歩き始めた
「すみません ノエルさん そろそろ降ろして貰えますか?」
「む?そうか? 私はこのままで一向に構わんのだが」
(いや 俺が恥ずかしいから)
ノエルに降ろしてもらい二人で街に向かう
「何でノエルさんも抜けちゃったんですか?」不思議に思って聞くと
「そりゃあ シリウスのいないパーティーに居ても仕方無いだろう」さも当然のように答える
「でも 俺は効果の薄い付与魔法しか使えませんよ」
「別に そんな事はどうでもいいんだ 大事なのはシリウスが側にいることなんだよ」
「はあ!?」
街に着いてギルドでパーティーを抜けた事とノエルさんのお試し期間が終わった事を報告する
その後 飯を食おうとギルド併設の酒場で食事と酒を楽しんでいると
ギルドのドアがバーンと開いてコルテとニーナっが入ってきた 俺達を見つけるとズカズカと
やってきてコルテが俺をいきなり殴った 俺は椅子から転げ落ち呆然とコルテを見る
「どうせ 貴様がノエルさんをそそのかしたんだろう?」
何を言ってるんだ こいつは? おれの頭に?マークが湧き続ける
「何を言ってるんだ?」言いながら立ち上がろうとする俺の横を光の速さで駆け抜け ノエルさんが
コルテの顔面に ズシャという鈍い音を立てて拳をめり込ませた
「ティブ!!」変な声を出してコルテは吹っ飛んでいった
「こ この野郎!食らえ ファイアボール」ヘロヘロした火の玉がノエルに向かって飛んでくる
「フン」気合一閃 剣でヘロヘロ火の玉を霧散させる
「シリウスのパフが無ければ こんな物か?」ノエルさんが冷たく言い放つ
「へ!?」コルテが間の抜けた声を出す
「おい!ニーナ 唯一のパーティーメンバーだろ 早く治してやれ」
ニーナがヒールを掛けるが一瞬光るだけで 傷は回復しない
「ニーナ これで分かっただろう シリウスのパフが無ければおまえもそんなもんだ」
ノエルさんが俺の手を取ってギルドを出て行く
宿屋に帰るとノエルさんが俺の部屋にやってきた
「なあ シリウス 聞いてくれるか?」少し酔っぱらった声で話しかける
「私はなあ 昔犬を飼ってて銀の体毛に黒い目のそれはそれは可愛い犬だった」
潤んだ瞳で俺を見つめる
「小さい時から おはようからおやすみまでずっと一緒だった そして10歳の時に
隠れスキル「シリウスへの愛」というのが発現した 私は嬉しかった シリウスへの愛が
かたちになったような気がしてな」
ノエルさんは一息つくと
「だがな13歳の時 二人で家の裏の森に入ったら 普段は居ないはずの森狼に襲われてね
私は嗜みとして剣を習っていたが 身体が固まって動けなかったんだ そしたら臆病なシリウスが
森狼達に勇敢に立ち向かって行ったんだ だが 数が違い過ぎた フラフラと倒れこんだシリウスに
奴らが群がり始めた 覚えてるのはここまでだ 気が付いた時には森狼が十数頭死んでいて
シリウスも虫の息だった 彼は体も大きかったから私一人では運べないので屋敷の者を呼んで
屋敷まで運ばせた 懸命に治療したが彼は帰って来なかった」
ノエルさんは目に涙を溜め話し続ける
「そして15歳の時に勇者のギフトを得た だがそれよりうれしかったのが「シリウスへの愛」が進化して
「シリウスへの溺愛」になった事だった これで生涯彼の事を忘れる事は無い 心に彼が宿ったような気分だった」
そして 彼女は冒険者になり 数々のダンジョンを攻略していったらしい
しかし一度コアを破壊してもまた 別の場所に同じ等級のダンジョンができるそうだ
この世界にはS~℉までの等級のダンジョンがあり 等級に応じた冒険者クラスでないと中に入れない
パーティーの平均値を上げるためだけに ノエルさんを勧誘するのが多かったらしい
しばらく そういったパーティーに付き合っていたそうだが パーティーに飽きてしまいソロでやってる内に孤高の勇者と呼ばれるようになったそうだ そんな人が何故うちなんかにはいったんだろう?
「何故 うちのパーティーに入ってくれたんですか?」俺が尋ねると
「お前の銀髪と黒い濡れたような瞳 シリウスという名前 運命だと思ったね」
ねっとりと見つめられ 思わず目を逸らしてしまう
「もう遅いし 寝ましょうか?」そう言っても自分の部屋へ帰ろうとしない
「シリウスー!!」突然叫んで抱き着いてきた ふくよかな胸なのは知ってますが それを包むプレートは鉄製ですよね
「ウギュ 痛い 痛いです」引き剝がすと 悲しい目でこちらを見てくる
「それはそうと これからは二人パーティーだな」なんかニマニマ嬉しそうに言う
「俺が 勇者とパーティーなんて!!従者 従者でいいです ノエルさんのパーティーメンバーなんておこがましいです」
「む? そうなのか シリウスがその方が良いならそれでいいが どうせなら 従者じゃなくてペットにならんか?」
「一応 俺も人としての矜持がありますので 従者でお願いします」
「一つお願いがあるんだが たまにでいいから シリウスの名を呼んだ時「ワン」と言ってくれないか?それと甘える時は「クウーン」で頼む」
「俺の話 聞いてました?」呆れて呟く
結局 精神的な疲れからかいつの間にか眠ってしまったようだ 目覚めると眼前に巨大なおっぱいがあった
「なんじゃ こりゃ?」目を凝らすとノエルさんの胸の谷間に顔を埋めていたようだ
「シリウスー(犬)」嬉しそうに寝言をいいながら俺をギュウギュウ抱きしめてくる
昨日の話によるとシリウスという名のメンバーがいるパーティーにも在籍していたが 金髪碧眼だったので
いまいち愛着が湧かなかったそうだ