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君がそこにいる理由【創作短編】feat.青の時間/浜田省吾

作者: 深海周二
掲載日:2023/12/17

夕暮れの空には一瞬だけ、この世の色の全てがあるように思う。ただしそれは一瞬だけだ。


俺が車のエンジンをかけた時、空は青かった。

だからまだ、間に合うと思った。

空の色をアテにするものじゃない。

街は空の青さに合わせて動いてはくれないから。


高速道路に乗ると、そこは無数のテールランプで赤く染まっていた。

それでもまだ、間に合うと思っていた。

空の色を頼りにするものじゃない。

道は空の青さに合わせて動いてはくれないから。


俺が横を振り向くと、そこにはいつも、君がいた。

君はあまり、言葉を発しない。

無駄に空気を震わせたりしない。

たぶん、存在そのものが、声ならぬ言葉だと知っているから。


君が横を振り向くとき、俺はいつもそこにいただろうか?

たぶん、いなかったに違いない。

仮にいたとしても、俺は何も言葉を発しなかっただろう。

でも、それで君は満足したに違いない。


同じ無音であっても、無言に佇む存在は存在そのものを語り、無音の虚空は何も語らずに孤独を呼び寄せる。


存在とは、存在すること自体が、声ならぬ言葉だ。

俺がそのことを知ったのは、横を振り向いた時、そこに君がいなかったとき。


空は、茜色を帯びていた。

もう、間に合わないかもしれない。

かつて一度だけ、君に聞いたことがある。

なぜ君は、そうやって、俺の横にいてくれるのかと。

君は、言った。

もう横にいる人間に、なぜ、横にいる理由を聞く必要があるの?と

その時の俺には、君が何を言いたいのか、わからなかった。


夕陽が、まぶしい

黄昏時・・・太陽は無言のまま街の高さになで降りてきて、自らの存在を訴える


目を細めるほど光を放つ太陽に、なぜ、そこにいる理由を聞く必要があるだろう

つまり君が言いたかったことは、そういうことなのかもしれない。


そこに存在するという事実を超える理由など、何もない。

どんな理由も、どんな運命も、どんな嘘も、事実から生まれ、事実の上で演じられる三門芝居にすぎない

つまり君が言いたかったことは、そういうことなのかもしれない。


空は、幾重もの色に染まっている。太陽はもう・・・いない。

もう、間に合わないだろう。

空の移り変わりは、時の移り変わりより早く

人の心の移り変わりは、空の移り変わりよりも早い

君はもう、待ち合わせの場所には、いないだろう。


空は、漆黒に飲まれようとしている。

何も終わったわけではないのに、何かが確実に終わったような気分になる。

だから、空の色をあてにするもんじゃない。


どうやら俺は、その一瞬を見落としてしまったようだ。

この世の色の全てがそろう、夕暮れの一瞬を。

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