06
アネスの町に到着。
街道沿いの宿場町、といった風情の、落ち着いた雰囲気の町。
「この町の名産は、魔うさぎ肉を使った保存食だそうです」
「干し肉や燻製肉とは違う独特の製法と風味で、保存食ながらとても美味しいそうですよ」
『試食三昧希望、むしろ欲望!』
そうだね、まずは情報収集も兼ねてお店屋さん巡りでも。
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確かに、燻製よりも風味にクセが無くて、
干し肉よりも旨味が凝縮している、
評判通りの美味しさの保存食でした。
流石は魔うさぎ、相変わらず侮りがたし。
そして、肝心の竜さん情報の方も、収穫アリです。
オタケ山には古くから竜が住み着いており、
町の人たちがふもとの祠に供物をお供えしているそうです。
いえ、若い娘を生け贄に、では無く、
お野菜とか魔うさぎ保存食とか、
収穫祭の恵みを、適量お供え。
とても古くから続けられてきた慣わしだったそうですが、
ずっと長い間、良くも悪くも問題が起きなければ、
みんなの関心も徐々に薄れていくわけで。
今では、町の人たちと竜さんとの関わりは、
年一回の収穫祭のついで、という程度の扱いとなっているそうです。
昔からずっと様子の変わらなかった竜さんですが、
山から降りてきてくれなくなったのは数年前。
そして最近の異常気象に、もしやと気付いたのが町長さん。
「天候不順が続くようになったのは、代替わりして僕が町長になった頃からなんです」
この件について、もっと詳しい事情とか分かります?
「すみません、皆目見当も付きません」
「話しを聞こうと祠を訪ねても、竜様が会いにきてくれないんです……」
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まだ30代前半のお若い町長ケイトさん。
急逝した先代町長に代わって、町民推薦で担ぎ上げられた新米町長さん。
同い歳の奥さまサラミさんに支えられながら、日々勉強の毎日だとか。
天候の異常と、竜さんの異変、
もしや関連がと思い立ったケイト町長。
古い書付けや前の町長が残していた記録などを丹念に調べたそうですが、
残念ながら何も分からなかったそうです。
「これだけ天候が不順だと、狩りや耕作にも大きな影響が出てしまっています」
「直接竜様に会いに行くことは禁忌とされてますので、オタケ山に登ることも出来ません」
「やはり、話しを聞いてもらえるまで、ふもとの祠で待つしかないのでしょうか」
もし何でしたら、俺たちが行ってきますけど。
「訪れたばかりのこの町のために、なぜそこまで……」
えーと実は、町のためうんぬんではなく、
あくまで自分たちの都合なのですが。
「都合、ですか」
俺たちは訳あって世界中を旅して回る生活を余儀なくされているのですが、
天候不順は快適な旅とは相容れないのです。
もちろん自然現象ですから、本来は人がどうこう出来ることではないのですが、
もし原因が竜さんで、話し合いで何とかなるようでしたら、
早めに解決出来るとうれしいのです。
「本当によろしいのでしょうか」
問題解決の確約は出来ませんが、原因調査くらいはやってみせます。
「……よろしくお願いします」