水神様の花嫁は何処に?
私は水が好き、水を見つめていると色々な人の思いが音として聞こえてくるの。
特に雨は面白い1度に色々な音を聞くことができるから。
恋愛が成就した人は炭酸弾けるような音、試験に受かった人は太鼓が鳴っているような音、子供を授かった人達の木琴のような優しい音だったり。
水からは良い人の思いしか聞こえないから聞いていて心地が良いの。
申し遅れました、私は水輝 夜雨と申します。
私の家は神社をしており水神様を祀っています。
今は平安の世です。貴族たちはよくこの神社に訪れるのですよ。
私は生まれつき白銀の髪に瑠璃色の瞳と風変わりな体をしていてこれだけでも避けられていたけれど極めつけは眉間の真ん中に青い蓮の紋様また、右肩と左ふくらはぎに水の波紋のような青い紋様が浮き出ているものだから親族からは水神様に近い人であると同時に恐れられ私はみんなから1番遠い離れで暮らしている。
『夜雨だー‼門を閉め札を貼れ!巫女は穢を祓うために夜雨の儀式を!』
夜に雨が降っただけで何で大騒ぎしてるかって?一般的に雨が降ったときに水神様は天界から地上へ降りてきていると言われ、普通ならばより一層加護が強くなるので喜ぶべきことなの。
だけど、私の一族はずっと昔に水神様の花嫁様を離れに閉じ込め花嫁と引き換えに神社のさらなる繁栄を求めたの。
水神様はそれから天界で1年間ずっとがむしゃらに働きとらねばならない休息も全てとらず、願いにきた人たちの願いを全て叶え、神社はさらに繁栄したの。
そして水神様は花嫁を返すよう地上に再び降りて来たの。
しかしそこには花嫁はいなかったの花嫁さんは体が生まれつき穢に蝕まれて水神様の放つ神力がないと生きていけなかったみたい。
それを知った上で当時の神社ではコキ使われてわずか18歳で花嫁さんは亡くなったらしいの。
通常水神様が降りてくる兆しは快晴の空からだけなの、夜降りてくると穢に体が蝕まれやすいからなんだそう逆に快晴のときなどに降りることができれば穢を祓うことができるの。
でもその時は花嫁を助けたい一心で夜降りて来られたらしいの。
水神様が夜降りてこられた後は様々な災いが起こったの火事や飢饉、土地の乾燥など。
困ってしまった神社は巫女の舞を捧げ、花嫁さんを弔ったの、すると災はピタリとやみ元の生活に戻ることができたの。
ただ、水神様はそれから一度も明るい時に降りてこられたことはなく1年に2度ほどの夜雨でしか降りてこられなくなったの。
そうなると穢を祓うことができないまま穢に蝕まれつづけてしまうとこの先水神様は消滅してしまう可能性だってあるの。
っと、こんなもんかな。都市伝説のような不思議なお話なんだよね。
まだ夜雨やんでないの…?
私の部屋は結界がはってあって外に出たことは10回もない。
でも今は結界が緩んでいるきっとこの結界をはった人が神力を使いすぎているためだろう。
今扉を開けば結界が解けるからきっと怒られる。だけど、外に行かなくちゃ…。
重そうな扉は思っていたよりも容易に開いた。
親族らは私を見るなり青ざめてすぐに部屋の中に押し戻そうと大勢に押され私はまた部屋に閉じ込められそうになり、助けを求めたの。
「水、神…様っ。」
次の瞬間目の前が明るく輝いたのと同時に強く降っていた雨は優しく降り注ぎ空には満月が浮かんでいた。
急にあたりが明るくなりびっくりして目を瞑っていたのをゆっくりと開けると私は誰かに抱きかかえられていて周りの親族たちは皆青ざめていた。
自分で立とうとしたけれどうまく体に力が入らない。状況がわからないまま抱きかかえてくださっている方を見ると青い蓮の紋様がその方の眉間の間に浮かび上がり、着物のような独特な服から除いている首から右の鎖骨にかけてと左のこめかみから左の頬までに水の波紋のような紋様が浮かび上がっている。
私と同じ柄、何か関係が?
頭では理解できてないけれど、魂が叫んでる。会いたかったって。
私この人とどこで…。しう、時、雨…。時雨!
この人は水神様の時雨だ!私が前世愛していた人。
そして私の名前は紫雨!
紫雨は紫雨とよむこともできるから時雨がつけてくれたの。
重い口を一生懸命開けて声をかけた。
「時雨!私、紫雨。もう一度あなたの花嫁になりたい!」
時雨は驚いたような顔をしたあとにっこり微笑んで私の耳元でこう囁いたの。
「僕はもうこの一生君としか歩まないとずっと昔に決めただろう?君が望んでくれて嬉しい。僕の花嫁になってくれ。もう二度と紫雨を離さない。」
「うん!」