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これはデートですか 2

 クララはしばらくシュティルの後ろを着いていく。と横に建物同士が連なっている店に着いた。


「ここは家族でやっている店でな。美味しいし、接客態度もいい。あと酒が上手い」


 シュティルはそう言いながら、連なっている建物の大きい方へ足を進める。シュティルは木製の扉を紳士的に開けた。


「どうぞ」

「ありがとう」


 クララは軽くお辞儀をすると、店の中に入っていく。


 ――いい匂い――


 まず店の内装より匂いが鼻全体にふわりと広がった。胡椒(こしょう)とワインの入り混じった匂いだ。

 内装は想像はしていたが、レンガ造りになっていてそのせいか少し蒸し暑い。ただ客がいる机や椅子は木製だ。オープンキッチンになっているのと、長い紐が付いているランプが目を引く。


「いらっちゃい、たいさしゃん」

「ああ。久しぶりだな」


 三歳くらいの小さな女の子がピンクのエプロンを着てクララ達の前に立つ。女の子はクララをジッと凝視している。


「あのー」とクララが声をかけようとすると女の子はクララにビシッと人差し指を突き立てた。


「このひと、たいさしゃんのかのじょ?」

「!?」


 その言葉にクララは思わずブッと噴き出す。対するシュティルは女の子の頭を優しく撫でながら「誰に教えられたんだ、そんなこと」と和やかに会話を続けている。


「おかーしゃん」

「そうか。それはそれとして席に案内してもらえるか」

「はーい」


 女の子はパタパタと小走りで店内を駆けまわると、オープンキッチンの端にある席をバンバンと叩く。


「どうやらあそこの席の様だな」

「そうですね」


 あえて「彼女」には触れない。


 シュティルは左の席を引いてクララを座らせる。次いでシュティルも右の席に座った。

 シュティルはメニューを開いてクララに見せる。


「俺としてはここのカレーがおすすめだ」

「カレー?」


 レーゲン国にもカレーはあった。ただ唯一違ったのはレーゲン国はカレーに米を合わせるのに対し、メニューの写真ではフルーク国はパンを合わせている。


 別にカレーは嫌いじゃないし……。


 クララは「じゃあカレーで」と答える。


 シュティルはオープンキッチンにいる女性に声をかけた。


「はいはい~」

「カレーを二つ頼む」

「はいはい」


 女性はとびきりの笑顔を見せて、後ろにいる女の子に声をかける。


「トイアー。カレーの温めとパンを用意して」

「はーい」


 トイアーと呼ばれた女の子は私達を席に案内してくれた女の子だ。


 そういえば家族で営んでいると言っていたし、女性は母親なのだろうか。


 トイアーは鍋を自動コンロのクリア板に乗せて板をコンコンと三回叩く。と、ボッと火が点いた。すぐにコトコトと沸騰してカレーの香りが辺りに広がる。

 クララは思わず大きく息を吸い込む。


 唐辛子のスパイシーな香りと小麦粉の匂い……。


 トイアーがパンを何種類か取り出す。母親はそれをレーザートースターに入れ、その間にトマトを手際よくカットする。トマトのカットが終わると温まったカレーを大きな皿に移し、その上に綺麗にトマトを盛り付ける。別皿にほんのり焦げ目がついたパンをのせたら完成だ。

 母親は「はい、どうぞ」とキッチンからお盆を差し出す。


「ありがとうございます」


 クララはジッとカレーではなくパンを見つめる。丸パンにナン、バケットの三種類がのっていた。


「こんなにたくさんのパンを見たことないです」

「そうなのか」

「はい。レーゲン国は米が主食で。パンは食パンくらいしか食べていませんでしたから」

「とりあえず食べてみたらどうだ」


 そう言ってシュティルは添えつけられたスプーンでカレーをすくうとバケットにのせて食べ始めた。クララもシュティルを真似てカレーをバケットにのせて口に入れる。


「っ!」


 辛っ!!!


 あまりの辛さに口を抑える。けれどその辛さの中に旨味が確かにあって、口を抑えながらもにんまりしてしまう。


「どうだ?」

「はい」


「美味しい」と答えようとした。その瞬間、目の前に瓦礫が降ってきた――。


 カレーをのせた皿は瓦礫で真っ二つに割れ、床を汚す。けれどそれ以上にクララの目をひいたのは瓦礫の下敷きになった母親の姿と真っ赤な血だった。


一時の平和が終わってしまいました。デート回、書くの楽しかったので残念……。


そういえば暑い国では辛い物を食べるんですが。あれ、不思議ですよねー。辛い物を食べて汗を掻くことで体を冷やす効果があるそうです。でもなんだか不思議な気持ちになります……。

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