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育成 3

 演習が終わった後、クララが思ったことはマズイだった。


 演習が長引いたため、アドバイスの時間がなくなってしまった。


 クララは急いでアードラーから降りて、部下三人に声をかける。


「時間が無いので、即撤収!!! 続きはこの後、食堂で!!!」


「はっ」とまだらであるが返事が返ってきたのに安心して、アードラーを整備班に託した。




 クララは食堂へ続く狭い通路を足早に歩いていく。その後ろを部下三人も着いて来ている。


 しばらく歩くと食堂に着いた。


 時刻はもう夕暮れを過ぎた頃。続々と他のお腹を空かせた軍人達もやって来る。


 クララ達はメニューが書かれているパネルを見つめる。


「三人共、頑張ったし。好きな物食べていいよ。…………といっても、私のお金じゃないんだけど」


 食堂に限らず、他の軍の施設はフルーク国の税収から賄われている。


 クララの言葉に最初に反応したのはフランチィスカだ。


「じゃっ、今日は甘いものいっちゃおうかなぁ」

「お前はいつも食ってるだろ」


 すかさずメッサーのつっこみがはいる。


「だって軍人やってるんだもん。毎日好きなもの食べても、罰は当たらないって」

「!」


 その瞬間、メッサーの顔つきが険しくなった。そして何故か、その険しい顔をクララに向けている。


 何で、と思いつつ。クララは笑みを浮かべながら、「私も甘いの食べようかな」とメッサーを窺う。


 かなり前からだけど。メッサーに嫌われているみたい……。最初は他国から来た女の兵長だからだと思っていたけれど。どうもそれだけじゃなさそうな気が。


 クララはオニオンスープを中心に料理をとり、最後にショートケーキをトレイに乗せた。周囲を見ると、部下も料理を取り終えたらしい。


 さて、どこの席に着こうか。


 席はどんどん埋まっていっている。この状況で四人席を探すのは困難だ。

 そんななか「あの……」と声をかけてきた人物がいる。


「あ、あなたは……。えーっと」


 声をかけてきた人物は、去り際に頭を下げた第四部隊に所属している部下だ。


「ゾイヒェと言います。クララ兵長」と相手が爽やかに微笑む。


 ゾイヒェは「良かったら席、ご一緒しますか」と提案してくれた。


 ゾイヒェが指を指した場所を見てみると、大人数の席を一人で使っているようだ。


 ここしか席なさそうだし。


「それじゃあ、お願いします」




 傍から見たら奇妙な図だ。

 上司と部下が同じ席に着くだけならまだしも、違う部隊の部下が一人紛れている。


 まぁ、ゾイヒェは違う部隊かもしれないけれど。部下は部下だ。私のアドバイスが役立つかもしれない。


 クララはコホンと軽く咳払いをしてから、メッサー、アームング、フランチィスカとそれぞれの顔を見る。


「演習の話だけど。……正直、めちゃめちゃ良かったよ。皆、ちゃんと協力できるようになってたし」

「! ほんとですか!?」


 最初に反応したのはフランチィスカだ。フランチィスカはフォークを持ちながら、その場で飛び跳ねる。

 それをメッサーに「落ち着け」と(たしな)められ。アームングは二人の様子を横目に、クララと同じオニオンスープを啜っている。


 クララは頷いて、再度口を開く。


「それに予想外の出来事が起こっても、一応は対処できていたし」

「だって。やったね!」

「……分かったから」


 そんな第九部隊のやり取りの中に、「僭越ながら僕も見ていました!」とゾイヒェが入ってくる。


「凄いですね。個人的な感想ですが、うちの第四部隊よりも進んでいるような気がしました」

「ええ! うちのメッサー、アームング、フランチィスカは本当に凄いんです」


 部下を褒められると、とてつもなく嬉しくなってしまう。


 そこでクララは「そういえば」と気になっていたことを尋ねた。


「さっきの演習では皆がどのヴルムに乗っているか分からなかったけれど。それぞれどれに乗っていたの?」

「あれはアームングの策なんです。クララ兵長は絶対、まず私から狙ってくるから。誰か分からないようにするところからだー、って」

「へぇ」


 クララはアームングに視線を向ける。今まで食べることに夢中だったアームングは「ええ、まあ」と少し照れたように笑う。


「今回の作戦はほとんど私が」

「……ということは、あの挟み撃ち作戦も! アームングはそういう作戦立案の才能があるのね」

「ありがとうございます。ただ真っ先に撃たれちゃいましたけど」


 とはいえ。よくやっていた方だ。


「っで、クララ兵長に途中追い詰められていたのが俺です」


 そう言ったのはメッサーだ。メッサーは分かりやすく、むくれている。


 そして必然的に、最後まで残った機体はフランチィスカが乗っていたことになる。


「メッサー、凄いでしょう?」


 フランチィスカの目がキラキラと輝いている。


「ええ、もちろん。さすがの対応力だし。何より目もいい」


 後方に迫られたとはいえ、アードラーにかなり対応できていた。先陣を務めたら強いだろう。それにーー。


 フランチィスカに目を向ける。


 最初の演習で真っ先にカラーボールを当てられたと思えない……。窮地に追い込まれた時の冷静な判断力と、一対一で戦った時のヴルムの操縦力。


「作戦のアームングに、先陣のメッサー、後方のフランチィスカか……」


 ポツリとこぼした言葉に、三人は首を傾げた。

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