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整備 1

 ヴルム演習は週二回。本来ならすぐにでも演習を続けてやりたいところだが、どうしても二、三日空いてしまう。けれども今回はそれが良い方向に働いた。第九部隊は次の演習までに三日間の空きがある。

 クララはそのうちの一日をあえて休みにあてた。三人にしっかり体を休めてほしいというのと、どうやって私にカラーボールを当てるのか話し合ってほしいからだ。


「さて」


 そんなクララは部下三人とは対照的にやることが多い。クララはひたすら地下通路を進んでいく。やがてアラートハンガーに辿り着いた。それと同時にクララはとある人物を見かけ、思わず駆け寄る。


「クンペル曹長!」

「ああ、クララか」


 クンペルのピアッシングがゆらゆらと揺れる。

 ついこの間会ったというばかりなのに、忙しいのもあって、かなり久しぶりに会ったような気分になる。


「珍しいな。ここにいるなんて」

「はい。実はシャル整備曹長に会いたくて」

「え……。シャル整備曹長に?」


 クンペルはあからさまに眉を潜める。クララはそれを見て思わず苦笑いをこぼす。


「ちょっとアードラーを壊してしまって……」


 いや、ちょっとどころではないのだけれど。


「壊した?」


 クンペルが首を傾げると「あら!?」と辺りに甲高い声が響き渡った。声のした上空を見上げる。とフリューゲルスーツ(背中に搭載された小型ジェットエンジンで人間が飛行できる機械)を背負ったシャルがぶんぶんと手を振っている。


「クララ兵長じゃないっ!?」


 シャルはゆっくりとこちらに下降してくる。かと思うと隣にいるクンペルを見つけて思いきり眉を潜めた。


「あら、あなたもいたのね」

「すみませんね。俺もいて」


 二人はバチバチと火花を散らしている。クララが「あのー」と声をかけると「あら、ごめんなさい」とシャルはクララの手を握る。


「今日はどうしたのかしら」

「そ、その。アードラーの様子を見に……」


 シャルからグイグイと来るのと、アードラーを派手に壊してしまった罪悪感で、ついつい小声になってしまう。そんなクララを見て「ああ!」とシャルは手を叩いた。


「アードラーならバッチリ整備済みよ。こっちこっち」


 シャルに手を引かれる。そんな二人の後をクンペルはやれやれと後をつけていった。しばらくして、ピカピカとした黄色の機体が見えてくる。機体はもちろんアードラーだ。アードラーの周囲には足場が組まれていた。


 シャルは腰に手を当てる。


「一応元通りに盾を直しておいたけど」


 クララはアードラーの左手を見る。左手には盾が握られていた。へこんだ跡が微塵も残っていない。

 クララは深くシャルに頭を下げる。


「すみません。助かりました」

「いやいや、このくらい。というより、演習であんなにへこむなんて凄いわね」

「? そんなに凄かったのか」


 クンペルの言葉にクララはハキハキと答える。


「ええ。さすが優秀と言われているだけあります。あの三人、凄いんです」


 統制はまだまだとれていないものの。相当強かった。きっと統制がとれはじめたら、一番強い部隊になる。


 クララが目を輝かせているとクンペルはフッと笑みをこぼした。


「まあ、クララがそう言うならかなり凄いんだろうな」


 クンペルの目は慈愛に満ちている。そこに「そういえば」とシャルが口を開いた。


「盾の強度、強くしてみる?」

「え……。そんなこと出来るんですか」

「既に作ってはいるの。ただね、重いから速度が落ちちゃうのよ」

「……」


 正直、速度が落ちるのは困る。アードラーは速度が命なわけだし。けれど盾を含め、機体が何かあるごとに大損傷を受けるのも困るし。


 クララはしばらく考えて恐る恐る口を開いた。


「あの。ひとまず実習で使ってから……でもいいですか」



ここまで読んでいただきありがとうございます。



今回はフリューゲルスーツとヴルムの整備について。ちょこっと解説を。


まずフリューゲルスーツとはジェットスーツのことで、小型のジェットエンジンを背負うと人が飛ぶことが出来る機械です。この世界では最初は戦争目的で開発されていましたが、ヴルムの登場や長距離移動に向かないのもあって、今は整備目的で使われています。


ヴルムの整備は現代の建築等と同じくまず足場を作って、ヴルムに必要な機材を運び整備していきます。フリューゲルスーツはそこまで大きな機材を必要とせず、ちょっとした整備のときに背負って使います。

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