指導 2
クララはアードラーから降りて、先程まで乗っていたアードラーに視線を移す。アードラーの盾は大きくへこんでしまっていた。比べて部下の三人が乗っているヴルムは、アードラーほどボロボロではない。
シャル整備曹長に言ったら直してくれるかな。戦争ならまだしも演習でこんなになっちゃったし。とはいえ……。得た者は大きかった。
私はアードラーに乗っても冷静でいられるということ。そして――。
クララはヴルムから降りてきた部下たちを見る。三人はクララの前で敬礼をし、クララが口を開くのを待っている。
クララはゆっくりと口を開いた。
「まず、三人共操縦技術は完璧でした。三人共、重力がかかるのに一気にトップスピードにできているし。動体視力もいいし。それに敵に攻撃されても冷静さを失わないのは戦場で最も大切なことです。よくパニックにならずにヴルムに乗れていたと思います」
「「「ありがとうございます」」」
三人はお互いに顔を見合わせて嬉しそうにはにかむ。クララは申し訳なさを感じつつも「ただね」と再び口を開く。三人は先程の嬉しそうな表情から一転、一気に真面目な顔つきになった。
「新人はいきなり戦場でひとりになることはありません。ひとりで行動できるとしたら、階級が上の人だけです」
黒のヴルム、ティーガー。単独行動ができるとしたら、ティーガーに乗っているシュティル大佐くらいのものだろう。
「新人は常に誰かと組むことになると思います」
「「「……」」」
「そして有事があったときに組むとしたらこの三人です」
クララはここで一度呼吸を整えて、再び口を開く。
「私は演習が始まる前に「皆さんで協力して、私にカラーボールを当てて下さい」と言いました」
そう言うと三人はお互いの顔を見合わせる。
クララが演習にアードラーを持ち出した最大の理由。それは三人の協力体制を整えること。
演習を見ていて気付いたこと。例えばフランツィスカが走るのが遅れている時、心配や励ましの声をかけることがない。そう。三人は優秀でお互いにコミュニケーションもとれているが、お互いに助け合うことがないのだ。
だから私自身が敵役になって……。
「先程も言った通り、三人で協力して私にカラーボールを当てること。まずはそれを目標にしましょう」
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