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部下 7

「…………」

「…………」

「…………えーっと」


 最初に口を開いたのはクララだ。クララはゴホンと一つ咳払いして、机に置いてある空になったオニオンスープのコップを片付け始める。


「とりあえずその辺に座って」

「は、はいっ」


 フランツィスカは恐る恐る先程クララが座っていた椅子に腰かける。

 その間にクララは小型パネルを使って、オニオンスープとナッツを二つ頼んだ。すぐにドアがノックされて、扉の前にオニオンスープとナッツが乗ったプレートが置かれた。

 クララは机にプレートを置く。


「どうぞ」

「す、すみません。いただきます」


 フランツィスカがオニオンスープに口をつけたところで、クララはナッツの皿を手にしてベッドに腰を下ろす。


 オニオンスープとナッツ。この組み合わせがたまらないんだよね。


 クララはモグモグとナッツを三粒ほど食べてから、ようやくクララに「それで」と問いかけた。


「相談ってどうしたの」

「はい。その。就任されたばかりの兵長にこんなことを相談するのはおかしな話なんですが。最近メッサ―が変なんです」

「変?」

「なんと言うか。周りに対してやけに警戒心が強いというか。前はもっと人懐こい性格だったんです。それにやけに一人になりたがって。私、メッサ―が何かマズいことに首をつっこんでいないかって心配で」

「……」


 クララの頭に先程のシュティルとの会話が浮かんでくる。


 ――正直、俺はスパイが君の部隊にいると踏んでいるんだが――


 もしかしてメッサ―がスパイ……? それともこういう相談をしてメッサ―に疑いをかけようとしているフランツィスカの方が……。


 クララはその思考を振り切るように頭を横に振った。


 いけない。ついさっきスパイのことは考えない。部下といい関係を築いて、信頼してもらえるようになって。自分の役目をしっかりこなしていきたいって。そう思っていたはずなのに。


 クララはスゥと息を吸う。


「分かった。私もよくメッサ―のことを見ておくけれど。そもそも私は前のメッサ―のことを知らないし。メッサ―のことについては付き合いの長いフランツィスカがよく分かっていると思っているのだけど。フランツィスカはメッサ―をどう思っているの」

「へ? メッサ―を?」


 フランツィスカは何故か顔を赤らめた。


「よ、よく恋仲だとか。付き合っているとか。言われるんですけど。わ、私達は幼馴染なだけで。べ、別にそういうんじゃ……」


 どうもクララの「どう思う」を恋愛的な意味で受け取ったらしい。クララは苦笑いを浮かべながら「いや、そうじゃなくて」と言葉を続ける。


「メッサ―が信用できるかって話なんだけど」

「っ!? ああ、そ、そういう……」


 フランツィスカはさらに顔を赤くする。


 もしかしなくてもフランツィスカはメッサ―のことを……。


 その様子を見て、フランツィスカにはスパイは無理だろうな~なんて微笑ましく思ってしまう。

 クララはゴホンと軽く咳ばらいをしてから、真剣に考える。そして強く頷いた。


「信用できます」

「それじゃあきっと大丈夫。メッサ―は危ないことはしてないよ」

「でも」

「メッサ―が信用できる人物だってことを、付き合いの長いフランツィスカが一番分かってるんだから。だから私もメッサ―を。そしてフランツィスカのことも信じてるよ」

「……はい」


 フランツィスカはまだ納得がいってなさそうである。


 こういう問題は時間が解決するものだ。それにここでお互いがお互いに信用できなくなって、疑心暗鬼のまま戦場でチームワークがとれなくなる方がマズい。だからフランツィスカには無理やりにでも納得してもらうしかないわけだけど。


 クララはわざとらしく咳払いをする。


「そういえばアームングとはどう? 軍から仲良くなったって前に聞いたけど」

「あ、はい。変わらず仲良くしています。ただ……」

「ただ?」

「アームングは私達と話す、というよりも。結構いろいろな人と話していて、あちこちに交流があって。面倒見がいいです。それに成績もいいから。いろいろなところで頼りにされてます」


 クララはふーんと頷くのと同時に、ちょっとしたいたずら心が湧いてくる。


「で、メッサ―は? 頼りにされてる?」

「え? えっと、メッサ―も。頼りにされていますよ。メッサ―は身長が高いからか、第一印象が怖いって感じる人が多いんですが。話せば気さくですし」

「それで。そういうギャップにやられて好きになっちゃったんだ」

「はい。――……って、ち、違いますよ。や、やだなぁ、もうっ」


 そう言ってフランツィスカはまた顔を赤くする。クララはニヤニヤとしながらオニオンスープに口をつけた。


 前のレーゲン国も。そしてこのフルーク国も。女性の人と仲良くする機会がなかったから。上司と部下だとしても。こうやって話すことが出来るのは嬉しい――。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。


やっとクララの傷心が立ち直ってきました。やはり恋バナは全てを解決する(?)

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