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部下 6

 クララの思考が停止する。だがそれも一瞬のことですぐに頭を働かせる。


 三人の中の誰かがスパイ? 一番怪しいのはずっと訝しむ様な目線を送ってきていたメッサ―だけれど。まだ私のことが信用できないのかもしれないし。フランツィスカは嘘をつけないように見えるけれど。まだ会ったばかりだから、逆にスパイでないとも言えないし。アームングに関してはメッサ―とフランツィスカと違って昔からの知り合いじゃない、ということしか分からないし。


「…………」

「………………おい。大丈夫か」


 黙ってしまったクララにシュティルが声をかけてきた。


「あ、はい!」

「で。どう思う」

「正直。まだ何とも」

「まぁ、会ったばかりだしな」


 クララはシュティルの言葉に頷いて「でも」と口を開いた。


「今はあえてそういうことは考えないようにしようと思っています」

「ほう」

「まずは部下といい関係を築いて、信頼してもらえるようになって。自分の役目をしっかりこなしていきたい」


 エーレント伍長のように――。


「ですから。スパイのことはすみません。二の次になりそうです」

「いや、そうか。そう決めたなら俺は何も言わない。それよりもクララらしい判断で安心した」


 そう言ってシュティルははじめて会った時と同じような、子どもっぽい笑顔を見せる。


 珍しい。シュティル大佐が笑うなんて。


「エーレント伍長のときはどうなるかと思ったがな」

「あの時は……すみません」

「いや。何はともあれ今が大丈夫そうなら良かった」


 相変わらずシュティルは笑っている。


「それじゃあ、第九部隊とは上手くやっていけそうか」

「今のところは。まだまだお互いを知っていかないといけないですけど」

「そうか。……それじゃ、俺はそろそろ行くよ。トリューベ国のことも一通り話をしたしな」

「はい」


 シュティルが立ち上がった。その時、トントンと扉が叩かれる音がする。


 ? オニオンスープのおかわりは頼んでいないはずだけど。


「はい」


 クララがシュティルの時と同様、わずかにドアを開けて外を覗き込むとフランツィスカがいた。


「フランツィスカ?」

「その。相談したいことがあって」

「相談?」


 その時、フランツィスカの視界の片隅にクララの後ろにいたシュティルが見えた。フランツィスカは一瞬で顔を真っ赤にする。


「っ! シュティル大佐! すみません。お楽しみのところ! 申し訳ありません」

「!!! いや、全然! 何も! し、仕事の話をしていただけで。そ、そうですよね。シュティル大佐」


 クララも顔を真っ赤にして反論するが、余計に怪しく思われる。

 シュティルは額を人差し指で二、三回叩いた後に「勘違いしないでくれ。本当に仕事の話をしていただけだ」と深くため息を吐く。


「それじゃあまた」


 シュティルは軽く手を上げて部屋を出て行く。後に残されたのは顔を赤くした女性二人だ。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


自分で書いていて思うことは。この小説、男性キャラよりも女性キャラのほうが好き……ということ。フランチィスカ……いいなぁ。あんまり贔屓しちゃダメなんですけどね。

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