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部下 3

「お疲れ様です」


 ロイヒテの労いにクララとランツェは敬礼を返す。


「お二人に話したいことがあるのですが。よろしいですか」

「「はっ」」


 クララは返事をした後、急いで第九部隊を呼んだ。

 第九部隊はさすがの早さでクララの前に整列する。


「しばらく私は抜けます。戻るまで体を休めて下さい」

「「「はっ」」」


 三人はそう答える。だがフランツィスカの表情がどこか曇っていた。


「どうかしましたか?」


 クララはフランツィスカと目線を合わせた。フランツィスカの瞳はクララを捉えたかと思うと、ゆらゆらと揺れ動く。


 おそらく何か言いたいことがあるんだろう……。


 クララは辛抱強くフランツィスカの言葉を待つ。それはこのまま何か違和感のようなものをもったまま、上司・部下の関係になるのはマズいと思ったからだ。


 数十秒の沈黙。再びフランツィスカは真っすぐにクララを見た。


「私は…………もう少し体を鍛えたいです」

「…………」


 その言葉には焦りがあった。

 フランツィスカは他の二人に比べると体力はないが、そこまで問題視される程ではない。けれど。


 私は基本エーレント伍長と一緒にいたから、そこまでじゃなかったけれど。優秀な同期がいると劣等感や嫉妬があるのかもしれない。


 クララは少しかがんでフランツィスカと目を合わせる。


「それじゃあ10分だけ許します。10分を過ぎたら休憩してください」

「でも」

「やる気があるのは評価しますが。体を休めることも訓練の一つです。適度に体を動かして、適度に体を休める。体を壊してしまったら元も子もないですから」


 フランツィスカはこくこくと頷く。


「それでは少しこの場を抜けます」




 クララとランツェは前を行くロイヒテとクンペルに着いていく。訓練場を出て少し歩くと、小さな部屋がある。簡易救護室だ。ロイヒテがそこに入っていったのを見て、クララ達も後から続いて中に入る。

 「簡易」とつくだけあって、中はベッドが二つだけ。棚に消毒液と包帯しかない。


 クララとランツェが中に入ると、クンペルが中から鍵を閉めた。


「…………」


 ……薄々感づいていたけれど。鍵を閉めるなんて。相当重要な話だ。


 ロイヒテが真っすぐにこちらを見た。


「この前の戦争で捕らえていた人物は、やはりアルム国のものでした」


 クララとランツェは黙って頷く。


「それで。その捕らえているアルム国の人間から聞きだした情報ですが。どうもスパイが忍び込んでいるようなんです。それも新兵で」


 クララとランツェは黙って頷く。だが、二人とも顔は険しい。


 ロイヒテは二人を見て頷くと「もう分かっているかと思いますが。二人にはスパイが誰か探ってほしいのです」と言葉を続けた。


 ここでランツェはクララに意味深な目線を向けながら手を上げる。


「ロイヒテ少尉。このことは兵長以上のものは知っているのでしょうか」

「いや。クララ兵長は別です」

「!?」


 突然に自分の名前が挙げられて、クララはロイヒテに目線を向ける。


「実はエーレント伍長も特例なのですが。この件は曹長以上の階級にしか知らせていません」


 ロイヒテはスッと息を吸ってから一気に言葉を繋げる。


「まず、クララ兵長ですが。クララ兵長はすでに他国から来ていることが分かっています。その他国がアルム国やその周辺国と関りがないことも分かっています。ですから今、一番スパイと無関係なのはクララ兵長です。そしてそんなクララ兵長のパートナーはランツェ伍長です。二人がタッグを組むことを考えると、ランツェ伍長にも知らせておいた方がいいかと。クララ兵長がランツェ伍長を疑って、実力を発揮出来なくても困りますし」

「…………」


 なんだかありがたいのか、ありがたくないのか。よく分からないな。


 クララはロイヒテのちょっと上を見ながら心の中で呟いた。


「そういうわけですから。二人には新兵に目を光らせていてほしいのです。少しでも怪しい人物がいたら、知らせてください」

「「はっ」」

「話は以上です。二人はそれぞれ持ち場に戻って下さい」


 ロイヒテの言葉に「はっ」と答えたのはランツェだけだ。今度はクララが手を上げる。


「クララ兵長、どうかしましたか」

「その……」


 クララは周囲を見渡す。


 私が「気になっていること」はフルーク王とシュティル大佐しか知らないはずだ。もしかしたらロイヒテ少尉とクンペル曹長は知っているのかも知れないけれど。ランツェ伍長は……。


 ランツェはクララが話し出さないのを困惑しながら見ていた。クララはランツェの視線にあえて気付かないふりをする。

 クンペルも同様に困惑してクララを見るが、ロイヒテだけは様子が違った。眉に力を込めると眼鏡を直してから「分かりました」と頷いた。

 まだクララが何も話してないのにロイヒテと会話が成立していることに、クンペルとランツェはお互いに顔を見合わせている。


「後で自室に向かいましょう。それで構いませんか」

「はい。ありがとうございます」

「では持ち場に戻りましょう」


 そう言ってロイヒテは先に簡易救護室から出て行った。


ここまで読んでくださってありがとうございます!


実はスパイ関係の話は前からやってみたいと思っていまして。今回、思い切ってやっちゃいました。ミステリー系を書くのが苦手なので。どうなるのか、正直不安ですが。精一杯頑張ります。

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