部下 2
クララはひとまず体力づくりの基礎訓練を三人に指示する。クララ自身は懸垂が出来るスポーツ器具で腕を鍛えながら、三人仲良く鍛錬場を走っているのを観察していた。
観察しながら三人の名前を頭に叩き込む。
先頭を走っているのはアームング。スキンヘッドと頬の傷が特徴的だ。意外にも身長が低い彼が先頭を走っていてびっくりする。
次にメッサ―。黒髪短髪で一番筋肉があり身長もある男性だ。
最後に女性のフランツィスカ。最後尾なのはやはりといえばやはりだけれど……。そこまで男性達から引き離されていない。
基礎体力は三人ともありそうだ。というよりも私よりもあるかもしれない。……あとは肝心のヴルムの操作だけだが。
「……」
クララはスポーツ器具からおりて周囲を見渡す。
この第九部隊の日程はどうなっているんだろう。場合によってはヴルム演習を増やしてもらって……。
そうすれば第九部隊が他の部隊より一歩先を行くかも。
三人に期待を膨らませながら、変わらず周囲を見渡すと目的の人物を見つけた。クララは足早にその人物に駆け寄る。
「ランツェ伍長!」
「クララさ……いえ。クララ兵長。どうされましたか」
声をかけたのは伍長のランツェだ。
「教えてほしいことがありまして。第九部隊のヴルム演習の日程はどうなっていますでしょうか」
「ああ。それはどこの部隊でも週二回で行っています」
「週二回ですか」
クララは少し考える。
こうやってどこの部隊も週二回と決められているということは。ヴルムの演習を増やせそうにない。ということは。一回の演習を実りあるものにしなくては。…………そこは私の腕にかかってくるわけか。
クララがうんうんと唸っていると、何故かランツェ伍長は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「あの」
クララがおそるおそる声をかけると「ああ、すみません」と答える。
「きちんと三人のことを考えてくれるのだな、と」
「?」
「なかには指示するだけして放置の方とか。逆に何もしない方とかいますからね」
それを聞いてクララは「ああ」と一人納得する。
前にロイヒテ少尉が言っていたやつだ。人によっては指示されるがまま動いた方がベストだという人がいるし。昇進して上の立場になったら好き放題して、自分のお気に入りの部下だけ優遇して、そうでないものには酷い扱いをする……っていう。
そんなに酷い状態なのか。
「だから助かります。あの三人は特に優秀ですし。新兵の中でもいろいろなところから注目が集まっています」
「!?」
それは聞いてない!
クララは思わず口をポカンと空けてしまう。
優秀だとは思っていた。いきなり経験が浅い新人が兵長をやると言われても文句も言わず。指示にも素直に従い、なおかつ体力も筋力もある。……とはいえ、そこまでとは。
「……どうしてそんな優秀な三人を任せてくれたんでしょう」
ポツリとクララが尋ねるとランツェ伍長は「そうですね」と顎に手を乗せる。
「いろいろと理由はあると思いますが。有力なのはまだクララ兵長の軍人としての歴が浅いから、でしょうか。部下として扱いやすい三人を選んだのかもしれません。他にもクララ兵長は、王とシュティル大佐から直々に昇進の話があったとかなんとか……」
「!」
多分、フルーク王とシュティル大佐は私のレーゲン国元王妃候補、のところに目をつけているんだろう。私が立場が下の人に対して、どう接していくかっていう……。
「食えない人たち……」
「? 何か言いました?」
「いえ、何も」
小声だったのでランツェには聞かれていなかったようだ。
「それでは私はあの三人を」
「見てきます」とその場を立ち去ろうとした時だ。
訓練場にロイヒテが入ってくる。ロイヒテはクンペルに足早に近づいたかと思うと、何故かこちらを見た。
「!?」
そしてロイヒテはクンペルを伴ってこちらに歩いてくる。
なんだか嫌な予感がする……。
いつも応援してくださってありがとうございます!
早くクララには部下と普通のおしゃべりをさせてあげたいのですが……。話の展開的に難しそうですね




