部下 1
クララは大きく深呼吸する。今日からクララは部下を持つ。フルーク国の兵長は五、六人の部下を受け持つらしいが、クララの場合は昇進が早い点を考慮して三人にしてくれると聞いている。
「……よしっ」
クララは意気込んで、訓練場に顔を出す。兵長になったからか、最初の時のような険しい視線はない。
「おはようございます」
そう声をかけると「クララ、来たか」とクンペルが歩いてくる。
ちなみにクンペルには昇進の話はなかったらしい。なので階級は曹長のままだ。
「すみません。待たせてしまいましたか」
「いや。時間ぴったりだ」
クンペルの言葉にクララはホッと息を吐き出す。
「部下の方は…………まだ来ていないみたいだから。先に伍長の方を紹介するか。ランツェ伍長と顔を合わせるのは……はじめてだろう。クララの場合はアードラーの操縦があったから少し特殊だし」
通常の新兵ならいくつかある小隊のうちのどれか一つに所属して兵長の指示を聞く。兵長は伍長の指示を聞いてそれを新兵に伝えていく。というのがフルーク国の軍隊の階級制度だが。クララの場合はアードラーの操縦に加えて、女性でおまけに他国の人間という事で、兵長ではなく伍長のエーレントと過ごすことが多かった。
「ランツェ伍長!」
クンペルが声を大にするとすぐに「はっ」と声が返って来て、ランツェがこちらに駆け寄ってきた。
ランツェは小柄だと聞いていたが、クララの目の前に立つとそこまでではない。身長はクララと同じくらいだが、筋肉がしっかりとついていて、体型ががっしりとしていた。スキンヘッドが太陽に照らされて反射している。
「今回、第九部隊の兵長を務めてもらう。クララ・フリューリングだ」
「よろしくお願いいたします」
クンペルの言葉の後に、クララが頭を下げるとランツェもお辞儀を返してくれる。
「話には聞いています。よろしくお願いします」
その話し方を聞いてどこか懐かしさを覚える。
クンペル曹長と最初に会った時と似ている。最初の頃は私も軍人じゃなかったし。他人行儀だったから。
「俺もこの前まで兵長で、今回から伍長になったので。上手くやれるかまだまだ自信がないですが。あ、それから……」
ランツェは口ごもる。だがそれも一瞬のことで、しばらくすると言葉を続ける。
「フックスの操縦も俺が引き継ぐことになりました。クララ兵長には引き続き、有事の際にはフックスと一緒に行動だそうです」
…………ということはエーレント伍長が亡くなってしまっても。フックスはまだまだ価値があると思われたのか。もちろん、アードラーと同じく開発中ではあると思うけれど。
クララはランツェにしっかりと頷く。
ここでクンペルが「やっと部下が来たようだ」と口を開く。三人一緒にクンペルの元に駆け寄ってくる。
その中に一人女性がいた。軍に女性は圧倒的に少ない。クララは一瞬目を見開くが、平静を装ってすぐに元の表情に戻る。
「第九部隊到着しました」
そう言って三人は敬礼する。
その姿がどこか初々しく見える。私だってまだまだ新米のはずなのに。そう見えてしまった……のは、兵長になったからなのか。
クララはちょっと微妙な心持ちになる。が、ブンブンと首を振って改めて三人を見た。
一人目は黒髪短髪の男性。体はランツェやクンペルと比べると細いが鍛えられていて、三人の中で一番筋肉があり身長も高い。
二人目はランツェ伍長と同じく、スキンヘッドの男性。褐色の肌をしている。身長は三人の中で一番低いのに、頬に細長い傷があって威厳がある。
そして三人目は私と同じで女性。長い紺の髪をお団子にしてまとめてある。筋肉も程よくついていて、髪型も相まってスポーティーな印象を受ける。
クンペルはクララの背を軽く叩く。
「これから第九部隊をまとめるクララ兵長だ」
「兵長のクララ・フリューリングです」
クララが軍に途中入隊なのに対し、この三人は長く軍隊にいるのだろう。
クララが敬礼すると三人はすぐさま敬礼を返す。
「おそらく、もう聞いていると思うので率直に伝えますが。私はまだ軍に来てから年数が経っていません。なので至らない点が多いと思いますが、何卒よろしくお願いします」
そう言うと三人は勢いよく「「「はっ」」」と返事をした。
いつも応援してくださってありがとうございます。
いよいよ私の中では新章、といった感じです。またここからストーリーが始まっていくので、何が起きるのか。皆様お楽しみに~




