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エースパイロット目指します 2

 どの国でも公に出来ない歴史というのはあるものである。


 クララは「あ、あともう一つ。気になったことがあって」と話す。


 シュティルは肩眉を上げて「なんだ」と答える。


「フルーク国の歴史についてなのですが」


 クララはゆっくりと問いかける。


「この国を一つの国として成り立たせたのは武人ではなく参謀だという話ですが。何故武人が王にならなかったんですか」

「ああ。やはり気になるか」


 シュティルはおでこを指先でトントンと叩いて少し考えてから口を開く。


「どうも当時は国が成り立った後、参謀と武人で権力争いが起きたらしい」

「そりゃそうですよね……」


 一国の王様ともなればこの先食べるものにも困らなくなるわけだし……。豪遊し放題だし……。どちらもフルーク国に深く関わった人物なら尚更揉めるだろう。


 クララが宙を仰いでいると「まぁ実際には」とシュティルがクララの思考を遮った。


「争いが起こるには起こったが参謀の一人勝ちだったらしい。どうも武人はその参謀に上手くのせられたようだ」

「のせられた?」

「詳しくはよく知らんがな。それは無様な負け方だったとか」


 かつて同じ目的で手を取り合ったもの同士だったのに。参謀はそんなに手心無しの(いくさ)をしたんだろうか。


 クララはシュティルをジッと見つめる。


 私はもう何があってもこの国でエースパイロットを目指すって決めたけど……。


 クララの視線に気付いたのか「何だ」と問いかけてくる。


「その。シュティル大佐は平気なんですか。そんな話知っていて……。その……。よく戦えるというか。その……」

「愛国心が薄れないかって?」

「!!!」


 シュティルの言葉にクララの肩はギクッと跳ね上がる。それを見てシュティルは大げさにため息を吐いた。


「そんなわけないだろう。むしろ俺はフルーク王を尊敬しているよ。昔も今も。どんな手段を使ってもこの国を守ろうとする姿勢を」


「それに」と今度はシュティルがクララを見つめる。


「クララだってそうだっただろう? 多少の国の汚い歴史くらいなんてことは無かったはずだ」


 クララはレーゲン国であと一歩とはいえど王妃になれなかった。だからかレーゲン国の歴史についてはマイナスイメージの話を聞いたことがない。


 ……とはいえ。やっぱりレーゲン国にもそういう話はあったんだろうな。そしてもし婚約破棄されていなかったとしたら。大佐の言う通りなんてことは無い、と思っていただろう。


 クララは「そうですね」と静かに頷いた。それをシュティル大佐は確認すると「さて」と立ち上がった。


「女性の部屋に長居しすぎたな。そろそろ出るとしよう。俺もクララの口から聞きたいことは聞けたし、クララも言いたいことは言えたようだしな」


 シュティルはキビキビと部屋の入口まで歩き、ドアをわずかに開けると「クララ」と名前を呼んだ。


「はっ」

「明日もよろしく頼む。期待しているぞ」

「! もちろんです」


 クララが元気よく答えるとシュティルはほんのわずかに笑みを浮かべて、今度こそ部屋を出て行った。


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