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襲撃 3

 最初のうちは良かった。最初のうちは。五機程落としてから形勢が変わってくる。敵がこちらの動きを完全によんでいる。

 もちろん動きがよまれるのはクララも分かっていたが。アードラーの速度ならいけるだろうと思っていた。


 やっぱり二人じゃ無理だ。援軍がほしい。でも今はどこも手一杯だって。


 クララは眉をひそめる。


 何か新しい策を考えなくては。そうはいっても新しい策を考える方が先か、その前に撃たれる方が先か。……いやどう考えても撃たれる方が先か。


 クララは自嘲気味に唇を歪ませる。


「おいクララ」


 クララが黙ってしまったのを心配したのかエーレントが声をかけてくる。


「……はい」

「まだ諦めるなよ」

「……」


 そうは言っても……とクララは黙ってしまう。

 そんなクララとは対照的にエーレントには策があった。とはいえ、いい策とはいえないが。


「クララ。聞け。今まで通り俺が先行する。その間、クララは隙を見て最大速度でこの場を離脱して救援を呼んでくれ」

「っ!? それはつまり」


 救援を呼ぶというと聞こえはいいが、実際はクララにこの場から逃げろと言っていた。そしてクララもその意味を分からないほど愚かではない。


「そんなのっ、できませんっ」

「いいから行けっ」

「でも」

「お前の方がアードラーの操縦が上手い。この場を離脱できるとしたらクララだけだ」

「でもっ!!!」


 クララは必死に叫ぶ。その悲痛な声にエーレントはグッと唇を噛みしめた。


 俺はクララほど動体視力が良くない。アードラーも上手く扱えないだろう。だからここで生かすならクララの方がいいはずだ。それに。俺の方が階級が上だし。いつもの。ちっぽけなプライドだ。


「私はクンペル曹長にエーレン伍長を頼むと言われているんです」

「これは上官命令だ!!!!!」


 エーレントの怒鳴り声にクララは思わず肩をすくめる。エーレントは真っすぐに敵に向かって行った。


 ちっぽけなプライドだけど。捨てられない。この場面で捨ててはいけない。


 エーレントは強く唇を噛みながら操縦桿を握る。


「伍長っ!!!」


 クララの声を遠くに感じながら、エーレントは次々と弾丸を撃っていく。

 クララの心臓はバクバクと音を立てていた。自分は果たしてどうするべきなのか。このままの状態が続くのであれば逃げた方がいいのは分かっていた。


 けど。見捨てられない。


 クララは操縦桿を握る。そして銃をぶっ放しながら一気に前方に出た。


「おい!」とエーレントの制止が入る。クララはそれを無視しながら敵のヴルムの足元に最大速で潜り込む。


「こんなところで死なせません。もちろん私も」


 ――死ぬわけにはいかない。


 クララは真上に銃を向ける。目を細めて上空を見つめる。


 あと少し。三、二、一。


 敵のヴルムのかかとを視界にとらえた。スッと息を吸う。そして一気に銃の引き金を引いた。――見事に命中。


「よし!」


 クララは集中力を保ちながらその調子で続けて三機を落としていく。


「クララ、お前」


 エーレントから感嘆したような声が聞こえる。


「命令無視とか言わないで下さい。エーレント伍長を頼むって曹長から言われているんですから。伍長命令より曹長命令の方が優先されますから」


 頼むって言われたんだ。それに応えたい。


 ……とはいえ簡単にはいかない。空中戦は位置が下の方が不利になる。敵は一斉に下に銃を向ける。


「!」


 そして一斉に目の前に火花が散った。弾丸がこちらに向かってくる。盾で防ぐ余裕はない。クララはギュッと目を閉じる。


 嫌だっ。死にたくないっ。

 まさかここでこんなことを思うだなんて。


「クララ!」


 エーレントの声がやけにゆっくりと耳に届く。


 終わりだ……。


 そう思った時、「よくやった」と低い声が聞こえてきた。クララはハッとして瞼を開ける。一気に光が入って来て、視界に黒のヴルムが目に入った。黒のヴルムはアードラーの前に立って盾を取り出し、クララに打たれた砲撃を防ぐ。


 ――あの時と同じだ。私がこの国に空陸家庭用自動車で来た時と同じ――。


 一気に張り詰めていた緊張の糸が切れる。クララの瞳に涙が浮かんだ。


「シュティル大佐……」

「もう大丈夫だ。あとは俺に任せろ」


ここまで読んでいただいてありがとうございます。そしてたいした宣伝をしていないにも関わらず、いつの間にかブックマークが増えていて。本当に嬉しいです!!!


だんだんとクララ以外のキャラクターの性格というのが私にも分かってきたといいますか。作者なのに……。

ということでこれからもキャラクターをより魅力的に書けるよう精進していきますので、皆様応援よろしくお願いします。

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