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コ、コブラ!?

 その日、小人たちとリックが山へ仕事に行っている間、アメリアは夕食の食材集めの為に森へと入っていた。


「今日は何が捕れるかしら」


 動物たちに気づかれないように、なるべく足音を消して進む。昨日はリックと川で初めての釣りをしたが、彼ばかりが釣り上げて彼女の竿がしなることはついぞなかった。

 リベンジだとばかりに今日は得意の弓を背負って出掛けてきたは良いが、森はいつも以上に静まり返っていた。


「何にも居ないわね…」


 暫く探し回るも、動物の気配がここまで感じられないのも珍しい。


「おかしいわね。いつもなら兎くらいは居ても良いはずなのに…」


 ポツリと呟く。皆から一人で森の奥に入ってはダメだと言われている為、あまり遠くまで行くとバレた時に怒られそうなのだが… このまま手ぶらで帰るなど彼女のプライドが許さず、こっそり行って帰えれば問題ないわよね、と足を進めた。

 そんな時だった。少し先の茂みの向こうから悲鳴のような声が聞こえた。


「っ!?」


 その後すぐに、怒号と剣戟の音が森の中に響く。どくんと胸が大きく鳴り、嫌な予感がした。


(誰かが戦ってる? まさか、皆!?)


 この森の先には皆が仕事に向かった鉱山がある。いつもよりは少し早いが、もうそろそろ帰ってきてもおかしくはない時間なのだ。その途中で何かあったなら?

 そう思うと居ても立ってもいられず流行る気持ちを抑え、音の響く方へと慎重に進んで行った。

 木の影から少し先を見通すと、そこには黒ずくめの男達数人に囲まれたリック達の姿があった。なんとかリックが短剣で応戦しているが、多勢に無勢。しかも、小人達を庇いながらでは思うように動けないのだろう。


(っ!?)


 体制を崩したリックが辛うじて男の剣を弾く。その瞬間、危うく叫びそうになって、慌てて両手で口を塞いだ。アレは何者? 盗賊?


「どうにかしなきゃ!」


 だが、自分が出ていったところで、おそらく事態を悪化させるだけだろう。それならばと背の弓に手を伸ばした。弓だけは誰にも負けない自信がある。これならば姿を見せずとも皆を助けられる! と彼女は彼らの視界から完全に外れる位置を探し出すと、そこから男達を狙った。

 ドキドキと早鐘を打つ心臓をなんとか宥めると、意識を集中させて真っ直ぐに一人の男の利き腕だけを狙う。


(大丈夫、私ならやれるわ)


 すーっと息を吐き出して、弓を絞る。研ぎ澄まされた空気の中、放たれた矢は一直線に男の腕を捕らえた。


「よし!」


 間髪いれず次の矢を放つ。動揺して体制を崩している男達に、リックが畳み掛けるように応戦していた。次いで、もう一矢。


「ちっ、退くぞ!」

「だが…」


 ぼそぼそと何事かを囁き合う男達の内の一人の足を矢が掠めたのを合図としたように、彼らは負傷者を支えながら森の中に逃げて行った。

 男達の足音が完全に聞こえなくなるまで、息を潜める。誰も動かない中、沈黙を破ったのはドサッとそれまでの動きが嘘のようにリックが倒れた音だった。

 彼が倒れいくのが、アメリアの居る所からもハッキリと見えた。まさか、切られて!? 


「「リック!!」」


 小人達とアメリアの声が森に響く。アメリアは慌てて皆の元へと駆け出した。足元の草木が邪魔で思うように進めないが、それでもなんとか皆に駆け寄ると真っ青な顔のリックがそこには横たわっていた。


「リックは!?」


 慌てふためく小人達にアメリアは問いかける。


「蛇が!」

「こ、コブラが!」

「いきなり襲いかかってきて」

「僕を庇ってリックが…」

「足を咬まれて」

「なのにあいつらに襲われて!」

「たぶん、毒が回ってるの!」


 口々に伝えてくる小人達の話に、アメリアは驚きと戸惑いの表情を見せた。そもそもコブラなんてこの森に存在するのか? いや、居ないはずだ。城の書物では、もっと熱帯の森にしか生息しない毒蛇だと見た。この北の森には持ち込まれない限り、生息していないはずなのだ。

 小人達も本でしか見たことはないが、あの独特な形は間違いなくコブラだったのだと言う。それが本当だとしたら、あれだけ動けば猛毒が全身に回ってしまった可能性は高い。


「動き回ったせいで、毒が早く回ってしまったのね」


 真っ青な顔で荒く息を吐く彼の足を、冷静に確認する。2つの赤い斑点を足首に見つけると、アメリアはその傷口を持っていた飲み水で洗った。そして、躊躇せずに唇を寄せる。


「ッ」


 傷口から毒を吸い出すと、ペッと吐き出した。それを何度か繰り返すと、最後に自らの口を濯ぎ一息ついた。こういう時は焦ってはダメだと何度も言い聞かす。

 城の騎士隊長から直々に護身術を教えられていた時に、一通りの応急処置も教わっていたのだが、こんなところで役に立つとは思いもしなかった。


「どうしよう。毒消ししないといけないけれど、私たちだけじゃリックを動かせないわ…」


 アメリア達だけではリックを担いで、街まではおろか家までも辿り着けない。家に戻れば毒消しの薬草があったはず。それがコブラの毒に効くのかどうかはわからないが、なにもしないよりはマシだろう。手分けして家まで戻るか、街まで助けを呼びに行くか…

 アメリアが悩んでいると、オロオロとしていた小人の一人が、ハッ! としてリックの鞄に飛び付いた。


「そういえばッ!!」

「あっ! そうだ、リックが持ってた!!」

「たぶん…」

「前に話してたね」

「毒ならほとんどのものに効くって」

「いつも持ち歩いてるからって」

「何かあったら使えば良いって!」


 次々に皆が、ハッ! としてリックの鞄から次々と中身を取り出していく。その中から、必死に何かを探し始めたのだった。

最近、王妃様を見かけませんね。お城はどうなっているのか覗いてみましょう。


「駄目ですわ。有り得ません」

「うむ。そもそも、姫は留学中だからな。話は本人が帰ってからになるとお伝えいただこう」

「し、しかし…」


隣国の使者を前に、国王夫妻は憮然と言い放ちます。どうやら姫の縁談についてのようですが、使者さんはタジタジですね。


そんなこんなで、姫の縁談を潰すべく奮闘中な為にお忙しいお二人のようです。勿論、この他の公務もされているでしょうからね。

道理で鏡での見守り(ストーカー)タイムが出来てなかったんですね。さて、今後はどうなることやら?

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