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はじまりの章

誰もが知っている白雪姫のパロディです。力を抜いて、さらりと読めるを目指して、スタート! 最後までお付き合いいただければ幸いです。

 ある王国に、それはそれは美しい姫が誕生した。雪のように白く透き通るきめ細やかな肌、林檎のようにみずみずしい赤い唇、漆黒に輝く艶やかな黒髪。いつしか誰からともなく、その美しさを讃えて彼女は白雪姫と呼ばれるようになっていった。

 王国の皆に愛され、すくすくと育った姫が4歳になる年。もともと病弱であった母である王妃様が、病で亡くなられてしまった。

 王妃様を喪った悲しみにくれる王と姫だったが、そんな悲しい日々もいつしか緩やかに過ぎ去っていった。やがて心の傷が少しずつ癒え始めた頃、王は悩んだ末についに再婚を決意する。


「姫や、新しい母上だよ」

「新しいお義母様?」


 7歳の白雪姫の前に現れたのは、冷たくも美しい美貌の女性だった。それが、王妃と白雪姫との出会いである。


 なんて愛らしい姫なのかしら。もう、めちゃくちゃ可愛いわ! 愛する王から紹介された義娘は、それはそれは愛らしい容姿をしていた。噂には聞いていたけれど、なんて可愛いのかしら! と、王妃は内心悶えながらも平静を装った。


「今日からよろしくお願いしますね」


 そのせいか、緊張で顔がぎこちない動きをしている。分かってはいるのだが、気を抜くと腑抜けた情けない笑顔になりそうで、ぐっと眉間に力をいれた。初めの印象は大事だもの! と思っての事だったのだが… 冷たい無表情、いや寧ろ怒っているのか? とすらとられかねない表情であった。

 実際、控えている家臣達は新しい王妃にいくらかの恐怖を覚えていた。まさか姫の愛らしさに悶えているなどと誰が考えただろうか。


「はい。お願いいたします、お義母様」

「くっ」


 はにかんで微笑む姫が、もぅ可愛くて可愛くて! ヤバい抱きつきそうだわ。などと変態じみた事を考えているなんて、微塵も感じさせないように優雅に微笑む。

 その不気味なまでに壮絶で美しい笑みは、周りの者達の背にさらに悪寒を走らせていたのだが、当の本人はそんな事とは露とも知らないのだった。


 自室に戻った王妃は一人、魔法の鏡の前に居た。王妃は昔から魔法が得意で、ここにある大きな壁掛けの鏡も魔法の鏡であった。


「鏡よ鏡。この世で一番美しいのはだあれ?」

『それは王妃様です』

「違うわよ! 姫よ、白雪姫! いえ、私の義娘だわ」


 自分で言って「きゃっ! 義娘って言っちゃったわ」などと悶えている王妃に、鏡がため息混じりに答える。


『えー。まぁ、姫は勿論可愛らしいですけど。美しさを聞かれたら、今は王妃様ですよー』


 と、軽い調子で返してくる鏡に王妃はちっと舌打ちする。


「まぁ、そんなことは良いのよ。それよりあの子を見せてちょうだい」


 そんなこんなで、姫のことが可愛くて仕方がない王妃は姫の成長を日々、鏡を通して見守っていた。


 それから数年がたち、姫は16歳になった。それはもう美しい女性に成長した白雪姫は、王国の宝だと皆が口々に噂するほどだった。

 が、世の中そう上手くは行かないもので、見た目とはうって変わって、性格は深窓の姫君とはかけ離れてしまっていたのだ。


「姫様、危のうございます!」


 乳母が慌てたように姫の後を追いかける。当の姫はというと、楽しげに馬上にいた。


「大丈夫よ、婆や」

「大丈夫ではありません! 先日も落ちかけたでは有りませんか!?」


 つい先日、突然暴れた馬から振り落とされそうになったのだ。幸い偶然(日課のように)鏡から見守っていた王妃が、慌てて魔法で密かに助けたため大事には至らなかったのだが…


「あら、でも怪我もしなかったし何事もなかったのだから良いじゃない」


 クスクスと笑って平気だと口にする姫に、乳母は深くため息をついた。


「王妃様に知られたら、また何を言われるか…」

「お義母様は私のことが嫌いなのだから、何をしていても同じよ」


 王妃は姫と接する時、照れ隠し(というか、気を抜くとデレデレになるせい)で普段の(秘密の)溺愛ぶりが嘘のように、よそよそしく冷たい態度になるのだ。

 そのため誰もが王妃は姫を厭わしく思っているのだろうと考えていた。もちろん白雪姫本人にも、悲しいかなその愛情は全く伝わってはいなかった。


「だから、今から遠乗りに行ってくるわね」

「どこが、だからなのですか! 姫様!」


 笑顔で手を振って馬を走らせて行く姫の後ろ姿に、乳母の声が追いかけていった。


 森へと向かう道に、馬を走らせる。この道は、最近の姫のお気に入りだ。木漏れ日が降り注ぐここには、色とりどりの花々が咲き乱れている。駆け抜けた先には陽の光を浴びて、キラキラと輝く湖があった。

 そこに到着すると、姫はひらりと馬から降りた。そして、そっとその首筋に顔を埋める。


「ありがとう、少し休憩よ」


 愛馬の手綱を外してやると、好きに草を食み、水を飲み始めた。こうして自由に放しても、姫の馬はとても賢く、呼べば必ず戻ってくるのだ。そんな愛馬の姿を微笑みながら眺めて、ふと先日の事を思い出す。

 こんなに賢い子が、あの日突然なんの前触れもなく暴れたのが、未だに信じられない思いだったのだ。そんな物思いに耽りながら、姫自身も靴を脱ぎ捨て湖に足を浸す。


「皆の言うように、先日の落馬はお義母様の魔法だったのかしら…」


 誰もが、王妃が姫を疎んで魔法をかけたのだと噂した。だがそこまで恨まれているとは、正直思いたくはない。そんな思いをのせて暗い表情で呟いた姫の声は、誰にも聞かれることはなく湖に消えていった。




  …はずだったのだが、しっかりバッチリ聞いた人物が一人。勿論それは、日課の姫の見守りタイム(ストーカーという)を楽しんでいた王妃であった。


「何故バレているの!!」

『恐らく認識に大きなズレがある気がしますが…』


 真っ赤な顔で何故か恥ずかしがる王妃に、残念ながら鏡の冷静な突っ込みは聞こえてはいないのだった。

実は姫の愛馬は、ただ突然出てきたもぐらにビックリしただけなのですよね。もぐらもビックリして隠れちゃうし、皆は誤解してるし…

愛馬くんとしては、申し訳ない気持ちでいっぱいだったりします。

『ごめんなさい、姫』

しゅん。と数日過ごしましたとさ。

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