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操り人形

 僕達レジスタンスBチームは、忍者の里から出発し西へ車を走らせていた。歩の父親。健二さんの話によると秋葉原の街は無事みたいだ。今は自衛隊以外の侵入は制限しており、後始末の真っ最中との事。しかし、八重のチームの萌え萌え桜のメンバー、剣君と魔将院君の遺体がまだ見つかってないとの事で調査中だそうだ。光明さんは神田基地内の医療ルームにて治療中との事。見つかった時は酷く衰弱しており未だ意識は戻っていないのだという。


「皆、すまないが少し寄り道をしてもいいか?」


「構いませんが、何かあったんですか?」


「いやな。先程から名古屋にいる組織の隊員に連絡を試みているのだが繋がらないんだ。その隊員は今ある別荘に滞在していてね。何か胸騒ぎがするんだよ」


「そういう事ですか。僕達に協力出来ることがあれば力になりますよ」


 僕はそう健二さんに返答した。どうやら別荘は山道の途中にあるらしい。別荘に向かうため、ナビの行き先を変更し車を走らせる。


 暫くすると山奥の別荘に到着した。外観は姫野原邸とは対照的に黒く染まっている。不気味さを感じながらも、車から降りて4人で館内に足を踏み入れた。何度か健二さんが隊員の名前を叫び呼びかけるが返事はない。


 突如後方から不穏な気配を感じて振りむいた瞬間、玄関の扉がひとりでにバタンッ!と勢いよく閉まり施錠された音がした。僕達は急いで扉に駆け寄って扉を開けようと試みたが開く気配はない。


 4人で周囲を警戒しつつ話し合った結果、二手に別れ館内を調査することになった。話し合いの結果、僕と八重のペア、拳銃は持っているがあくまで一般人の――この場合の一般人とは能力者では無い人――健二さんはいざという時に強力な回復魔法が使える那月ちゃんとペアになってもらった。健二さん達は1階、僕達は2階だ。


 館内は昼間というのに異常な静けさに包まれている。本当に隊員がまだこの別荘に滞在しているのだろうか。……いや、扉がひとりでに閉まる事など自動扉でもない限り通常は有り得ないはず。それから導き出されるのは、極めて高い確率でこの建物の中には能力者が潜んでいるということだ。気を引き締めておかないといけない。そんな事を考えながらも八重と共に周囲への警戒は怠らず慎重に廊下を進んでいると、不意に目の前に、恐らく健二さんと同じ物であろう黒いスーツをきた赤髪短髪の女隊員が現れ此方に向かって歩いてくる。俯いているのでその表情は確認できない。


 警戒していたにも関わらず直前まで気配を感じられなかったことに違和感を抱きながらも、僕は話しかけようとその隊員に近づく。その瞬間、彼女は急に顔を上げると腰に下げていたホルスターから拳銃を取り出して僕に向けて発砲しようとした。しかしそれは僕に放たれることは無かった。


 あまりに気配を感じられないその隊員に対して、細心の注意を払い一挙手一投足を見逃すまいと警戒しながら刀に手をかけていた八重が、その隊員の腕の動きで何をしようとしているのかを看破して鞘に納めたままの刀で弐の太刀・関山を放ち、突進して鞘の鐺で手を突き拳銃を弾き飛ばしたのだ。


 八重は突進技を受け体勢を崩した隊員の背中に回り、刀の柄で首を軽く小突いて気絶させた。


 彼女はどうやら誰かに操られていたようだ。ならば操っている能力者を見つけるしかない。しかし、闇雲に探しても彼女のように操られている人に出くわすと厄介だ。


 僕は頭脳をフル回転させてどうするべきかを考える。ここは別荘とはいえ外から見た通りかなり大きい建物。だとすれば……そう考えながら天井を見渡す。すると隅にやはりあった。監視カメラだ。そもそも僕達のいる位置が分からなければ彼女を操り僕たちへ差し向けることは出来ないはず、ならばこの事態の元凶がいるのは管理室だろう。僕達のことを高みの見物を決め込んでいるはずだ。そう結論を出した僕は、魔法攻撃によりその場の監視カメラを破壊してスマホで健二さん達を呼び出し合流して管理室に向かうことにした。


 管理室を探す道中にも操られている人達が僕達を襲ってきた。攻撃し、傷つける訳にもいかないので基本的には僕の一般人なら十分効果を発揮する麻痺魔法と気絶させる方法で対処した。


 そして虱潰しに館内を探索していると操られている人が異常なまでに群がって廊下を塞いでいる状況に出くわした。恐らくこの先に管理室があるのだろう。そんな事を考えてた直後、その群がりが左右に分れて整列して奥の部屋から1人の少女が姿を現した。


 身長140cm前半、お団子ツインテールで黒髪。黒いドレスを着ている。容姿から察するにまだ幼い年齢だと推測できる。


「何なの貴方たち、私のお人形さんをいじめて!!」


 彼女は僕達にひどい憤りを感じているようだ。恐らく、彼女の操っている人々を無力化している事が原因だろう。しかし、相手が少女であってもやってることは洗脳と同じだ。許される行為じゃない。


「もう許さないもん。貴方たちも操音(あやね)のお人形さんにしてあげる!!!」


 彼女はそう言うと、周りにいる操っている人に僕達を再び襲わせてきた。しかもどうやら今度は唯の人間ではない。僕達と同じ黒歴史能力者のようだ。しかし彼らに罪はない。無闇に技を繰り出し傷つける訳にも行かない。


 僕たちが対峙している能力者は2人。飛んでくる攻撃や能力から察するに大体のルーツの検討は着く。


 1人目の厳つい見た目をした、黒Tシャツ黄色の短パンのソフトモヒカンの金髪の男は恐らくエレキビート・ダイキの主人公。ダイキが能力がルーツだろう。彼が持つエレキギターは戦闘の際には音楽を奏でる度に雷撃を放つ。諸に攻撃を喰らったら只では済まないだろう。



 そして2人目の赤いチャイナドレス姿で髪形がお団子をシュシュでまとめているヌンチャクを持った女性。いかにも中国人を彷彿させる彼女のルーツは恐らくたが、人気ゲーム銅拳乱闘菊一文字の少林(シャオリン)だろう。ゲームに登場するこのキャラは作中でもかなりの強キャラで全国大会でも多数の選手に使用される。2人とも厄介な能力だ。


 那月ちゃんは魔法少女の姿に変身。八重は刀を構え、健二さんは銃を構える。戦闘はやむを得ないが極力傷つけないように注意して無力化するしかないか。


 万が一傷つけてしまっても致命傷ではなければ那月のホーリー・ヒールの治癒能力で回復はさせられる。しかし、それには魔力を残しておく必要もある。そう考えた僕は彼女に余程戦況が不利にならない限りは戦闘に手を出さないでほしいと説明し、後ろで待機してもらうことにした。


 何とかして操っている本体である彼女を無力化させなければ……そうか! 僕の微弱な電流を八重の刀に纏わせ彼らを気絶させればいいんだ。そうすれば最小限の被害で抑えられる。よし作戦が決まったら行動だ。奴らの体力を削いで攻撃の隙を作らないといけない。まずは彼らの攻撃を避けきるためにも「強化魔法〝ボトムアップ〟――フィジカル」で身体能力の底上げからだ。そう考え僕は皆に強化魔法をかけていく。さらに「加速魔法〝アクセラレート〟」も重ね掛けしておく。


 よしこれで相手の動きには余裕をもって対処できるようになった。僕と八重は相手からの攻撃を上手く躱しながら、相手にはなるべく攻撃を直接当てないように魔法と刀を用い牽制し、体力を削る。健二さんも彼らの足元に銃弾を発砲することで牽制できているようだ。


 かれこれ10分ぐらいこの戦闘状態が続き、ついにその時が来た。彼らのスタミナ切れだ。正直僕達もかなり疲労をしているが、僕が合図して那月ちゃんからホーリー・ヒールの治癒魔法をかけてもらう。事前に伝えていた事が功を奏した。


 僕は「付与魔法(エンチャント)・サンダー」によって八重の刀に纏わせる。僕の方でも人間が耐えられるギリギリに威力を調整して男に浴びさせた。成功だ。2人とも気絶し戦闘の継続はできる状態ではない。


「な、なんで……私のお人形さんが……」


 彼女は困惑した表情になり、その場に蹲って泣きだしてしまった。流石に少女を痛ぶるような趣味は持ち合わせていないため、少女を最低限の拘束だけをして話を聞くことにした。


 話を聞いた所、少女の名前は結形(ゆいがた) 操音(あやね)。能力のルーツは戦慄のパペットドールのドリエというキャラで、人間を人形のように操ることが出来る。何故このような行動に至ったのか経緯を尋ねると少女はお友達が欲しかっただけだという。丁寧に諭すと素直に反省もしてくれたので後から健二さんが呼び出した自衛隊に引渡してこの事態は収束した。


 そして操られていた2人の能力者は名古屋大須支部に在籍するメンバーのようで、男の方が(いかずち) 武也(たけや)。女性の方が(あかつき) 海那(かいな)と言うらしい。2人はこの別荘に在籍する健二さんと同業の河音(せせらぎ) (かえで)さんとの連絡が途絶え調査に来たところ不覚にも少女の能力にかかり操られてしまったのだという。


 3人から諸々のお礼をしたいので大須支部に来て欲しいとの申し出があり、少女の引き渡しが終わった後、一同は車に乗り込み大須に向けて出発した。


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