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決着! VSヤマタノオロチ!!

 皆の連携で確実に弱らせなんとかヤマタノオロチの首を半分まで討伐できたが、ジュランの「ブラキオサウルス」は流石に攻撃を一番受け続けていたこともあり、体力の限界が訪れ、ついに元の化石の状態に戻ってしまった。俺もひとまず奴から距離を取る。ここからが正念場といったところか。


「美麗。僕達も連携技だ」


「分かりましたわ。でもどうするんですの?」


「美麗は確実に奴の喉元に当てられるように狙撃に集中していてくれ」


「しかし狙撃銃(スナイパーライフル)の弾では……とても威力が足りませんわ」


「大丈夫、僕が属性付与魔法で君が撃つ弾に炎・雷・氷の3属性を付与するよ。」


「……でもたしか恵は幅は広くても初級レベルの魔法しか使えないはず……もしかして?」


「いや、君の言う通りさ。だから3属性を付与するとは言ったけど、〝それぞれ〟を同時に発動して重ね掛けするのさ!」


「そういうことですのね。分かりました。……いきますわよ!」


属性付与魔法(エンチャント)・ファイア! サンダー! アイス!」


美麗が引き金を引くその瞬間、その銃口に恵の詠唱した付与魔法の魔法陣が3つ重なるようにして現れる。そこへ放たれた銃弾が魔法陣を突き抜ける度にそれぞれの属性の魔力を纏わせて威力を増していく。そして一直線に狙い違わず奴の首元に吸い込まれ、着弾した瞬間とんでもない爆発を引き起こしてその首を木端微塵に消し飛ばした。


流石恵だな。使える魔法の範囲の広さの代償としてそれぞれの初級・基礎までしか使うことができないという制約の中でも、複数を組み合わせてこんな事ができるのとは。レジスタンスのリーダーを引き受けていたのも頷ける。そして相変わらずの美麗の射撃の正確性、一体どんだけ練習を重ねれば身につくのだろうか。


 2人の連携技に思わずそんなことを考えていた時、那月ちゃんが水の魔法少女の姿から光の魔法少女に再度変身し直して俺に声をかけてきた。


「歩くん! 即席ですが連携技をやっちゃうっすよ! 〝メイクアップ〟ホーリー・オーラ!」


那月ちゃんがそう唱え、ステッキを俺のレヴァーテインに翳すと輝き始め、光の力が剣に漲った。


「私の力を歩くんの剣に一時的に宿らせたっす。そいつでアイツに1発お見舞いしてきてください!よろしくっす!」


「おお、了解したぜ! 剣に宿りし光と炎! 今俺の求めに応じその力を振るえ! レヴァーテイン!」


俺は厨二魂に身を任せノリノリでそうセリフを叫ぶと共に背に生えた紅翼を羽ばたかせ空中に飛び出した。


え? さっきはなんで自分で飛ばなかったのか、ブラキオの上を走っていたのか……だと? ……そんなものロマンだからだ! 龍の背に乗って戦場を駆け、巨大な生き物の上を足場にしての大型の敵との戦闘、とても昂るシチュエーションじゃないか。


目の前に迫る奴の3つの首からの攻撃を躱し、その1本の首元に辿り着く。


「いっけぇぇぇ!!!」


炎と輝くオーラを纏った剣を振り降ろし見事に奴の首を切断。残りの2つに攻撃仕掛けようとする俺に、光の魔力が弱まってきたことに気づいた風ちゃんが声をかけてきた。


「歩さん! これを受け取ってください。ウインド・アビリティ・グレート!!!」


その詠唱と共に俺のレヴァーテインから風が巻き起こった。どうやら風ちゃんが剣に(かぜ)の力を付与してくれたようだ。俺は風の力で炎の勢いを増したその剣で、連続でヤマタノオロチを斬りつけ更に1つの首を切断して、地上に着地した。


「最後は私が仕留めます。暗奈さん力をお貸し頂けますか?」


「分かったわ。キャハ♡♡〝メイクアップ〟ポイズン・オーラ!!!」


暗奈がそう言いながらステッキを掲げると、早乙女さんの八重桜に毒のオーラを纏わせると、そのオーラを刀が取り込み色が紫状になり刀身もその長さを1.5倍程に変化した。


あの刀の変化は!! 彼女の「黒歴史」のルーツである「抜刀剣舞・八重桜」の劇場版で封印が解かれ蘇った化け物の攻撃で主人公 紅月 桜がピンチに陥った時、八重桜は妖刀として覚醒し化け物の攻撃を喰らい取り込み、その力を乗せた妖刀八重桜で桜閃一刀流の技を以ってピンチを切り抜けて化け物を打ち倒してみせた。


俺は多少の経緯の違いはあってもあの名作の一番熱いシーンの再現を見れるのかと興奮していた。


「名付けて毒刀 八重桜ってとこかしらキャハ♡♡ さあ八重! やっちゃいなさい!」


「はい! ……桜閃一刀流 特式ノ太刀・八重紅枝垂(やえべにしだれ) (しょく)!!」


風ちゃんの上で居合いの構えをしてそう技名を呟いた瞬間、俺の目には早乙女さんの動きがブレて映った初動以外は目視すらできなかった。チンッ! という音と共に風ちゃんの上で納刀した早乙女さんは、居合いの構えを解きヤマタノオロチに背を向ける。その直後、技の結果が遅れてやってきた。首元どころか胴体までが切り裂かれ、八つの断面を晒して地面へとその体を沈ませた。毒刀となった八重桜の力なのかその鮮やかに切り裂かれた断面がみるみる腐蝕していく。風ちゃんの上で膝を付き刀を支えにしている様子を見るに相当な反動があるようだが、それにしてもなんて威力なんだ……! これが早乙女さんの奥義か! と驚きと感動で俺は打ち震えていた。


……出発の前に教えてもらったことだがこの技は妖刀となった八重桜から己の身体にもその力を流して文字通り刀と一つになり、極限の一振りとなった居合い斬りから放たれた毒の斬撃を8度、あの瞬間に放っていたそうだ。


それがトドメとなり目の前の化け物は完全に力尽きて徐々に縮小化し、やがて元の石の形に戻った。……俺たちはやったんだ。あの巨大なヤマタノオロチを倒したんだ!


戦いが終わった皆は武装を解いて肩から力を抜いて安堵の表情を浮かべていた。暗奈と那月ちゃんはハイタッチ。美麗と恵は俺に向けて拳を向けたポーズを決めている。ジュランは拍手をしながら「Congratulations!」なんて芝居がかったように言って俺の元へ寄ってくる。早乙女さんは最終奥義の反動からすぐには動けないようで、刀を地面に突き立て息を荒立てている。風ちゃんは龍化を解き、早乙女さんへ回復の魔法を唱えている。俺も流石に力を使い過ぎていたようで、疲労による体の倦怠感からその場に座り込んだ。確かに疲労は凄いが何より、みんなで協力しこの危機的状況を乗り切った事に嬉しさが込み上げてきた。


「やったぞォォォォォォォォ!!!」


俺はまるでドラゴンが雄叫びを上げるように両腕を上に掲げて叫んだ。みんなもそれに応じるように腕を上げて喜びを分かちあってくれた。


「これは……」


恵が蛇石を調べるため近づくと、そこには気圧されてしまいそうになる圧を放っている一振りの剣が鞘に収まった状態で残されていた


「まさか……スサノオがヤマタノオロチを撃破した時にその亡骸(なきがら)から出てきたと言い伝えられている伝説の3種の神器の1つ、草薙剣、又の名を天叢雲剣……まさかここまで具現化の影響力が強いとは……」


恵は独り言ちるとその剣を拾って早乙女さんの元へ持っていく。


「八重……これはきっと君にこそ相応しい力だと思う。握ってみてくれないかい?」


風ちゃんの回復魔法でようやくわずかながら体力が戻ってきた早乙女さんが立ち上がり、そう言う恵から手渡された剣を握った。


「これは……すごい……この剣を握ると私の体に力が流れてくるみたい!」


「やはりね……君は刀がとても好きでその能力に目覚めこれまで極めてきた。当然の事ながらこの剣は知ってるだろう?」


「ええ知ってる。草薙剣又の名を天叢雲剣! まさか本当にこの手に収める事ができるなんて……」


早乙女さんさんは剣を鞘から抜き頭上に掲げ、目をキラキラさせて見つめている。彼女は俺と同じ「黒現」、日々成長を続ける力。この剣に認められたのもそれが理由だろう。彼女は鞘を八重桜とは反対に取り付けるとその剣を納めた。


その後は皆、那月ちゃんの「ホーリー・ヒール」と風ちゃんの回復魔法で傷の手当をしてもらった。


「フフ……彼らなら光明ちゃんの言うようにこの世界を救ってくれるかもしれないな……彼らのこれからの成長も実に楽しみというものだ」


屋敷の屋根の上で見物を決め込んでいた良平がそう呟いた。期待してしまうのも無理もないだろう。あのヤマタノオロチを復活直後で完全では無かったとはいえこの人数で撃破してしまったのだから。


「ふーん?あれがレジスタンスか。思ったよりもすごい能力者達ね~」


ヤマタノオロチ討伐現場から少し離れた上空にて、見物を決め込んでいた人がもう1人いた。彼女は箒に乗っていて魔女帽子を被って黒の魔女衣装に身を包み髪色は銀髪。髪型はロングだ。片手にはカメラを持っており、戦闘中の歩達の動画をとっていたようだ。


「これはいい資料が取れたわね。急いで国に戻って報告しなきゃ。にしてもあの恵って子。私達の求めていた力を持っているじゃない! 欲しいな! 欲しいな! あの力!」


彼女はそう言い残して箒で飛んでいき姿を消した。


俺たちはその後、出発日を1日遅らせ、体を休めることに専念した。


そして時刻は出発日の朝8時。俺主体のAチームの運転は慎一郎さん。恵主体のBチームは親父が運転を担当することになった。まあ親父が一緒にいたら地味に気恥ずかしくて俺の厨二魂が鈍ってしまうだろうからありがたい配慮だ。


俺は出発の直前、これから暫く会えなくなるメンバーに挨拶を交わす。


「恵、お前には世話になったな! また必ず会えることを祈ってるぜ!」


「おいおい歩! まるで僕が死亡フラグを立てられてるみたいじゃないか! 歩も絶対強くなって戻ってくるんだよ! 後、人を生き返らせる能力者は同時並行で捜索するから僕にドーンと任せて」


恵は胸に手を当てながら自信ありげな表情だ。本当に彼女の説得力がある頼もしさにはここまでずいぶん助けられた。状況判断、分析、作戦、ひらめきのどれをとっても彼女の右に出るものは無いだろう。妖との戦闘の時も即座に金色の弓の情報を思い出し、美麗に託した。最終的には光明さんと那月ちゃんに助けてもらったが、あれがなければその前にやられていたかもしれない。彼女はやっぱり天才だ。


「八重さん。短い間でしたが神田基地での事から色々ありがとうございました。ジュランとの事は本当に申しわけない」


「いえいえ、確かに秋葉の街を破壊されてしまった事には腹が立ちましたけど、今の歩さん前とは違って自信に満ち溢れている気がします。私も2人が生かしてくれたこの命でこの世界を守りたい。そしていつか2人と過ごした秋葉原の街を取り戻します!」


 彼女は涙を流しながら決意表明をした。そう彼女は秋葉原で事故とはいえ逃走中に2人の仲間を失った。ずっと強気に振舞っていたが決して悲しくない訳がない。俺は彼女の心境を汲み取り「頑張って下さい!」と最後に声をかけ会話を終えた。


続いては那月ちゃんだ。


「那月ちゃん。本当に色々助けられたよ。高速道路の一件もそうだけど、那月ちゃんがいなければ暗奈が泉の事を思い出して正気に戻る事もなかったはずだ。必ず俺はもっと強くなって光明さんを助ける!」


「いえいえ、こちらこそっす! そうっすね! 私ももっともっと修行を積んで必ずや隊長を救ってみせます! 歩さんも頑張って下さい!」


その言葉を最後に彼女と握手を交わした。


最後に良平さんだ。


「良平さん。俺達を(かくま)って頂きありがとうございました。このお礼はなんと言ったらいいか……」


「そんなに(かし)まらなくていいさ……他ならぬ光明ちゃんのお願いだからね。でも最後に1つ」


そう言うと良平さんはいつもの飄々(ひょうひょう)とした態度はなりを潜め、これまで見たことが無い真剣な表情で話し始めた。


「これから君は色々な困難とぶつかる事があるだろう。そこにはきっとこれまで以上に辛い事や仲間との永遠の別れ、色々な事があるだろう。でも決して諦めちゃいけないよ! それが命を落とした者や君の事を庇ってくれた光明ちゃん達への恩返しとなる。僕は応援しているからね」


そう言い終えると先程までの真剣で貫禄のある雰囲気が霧散していつもの良平さんに戻りニコニコしながら握手を求められた。俺は笑顔で手を取り「頑張ります」と伝え、その場を後にした。


最後の挨拶を終えた俺たちはそれぞれのワゴン車に乗り込み、それぞれの目的地に向けて出発した。

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