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襲撃! ウルフ・予期せぬ邂逅

ーー同時刻ーー忍者の里屋敷ーー

皆が鍛錬に励む中、俺と恵は一足先に客間に戻り、これからの方針を話していた。親父と慎一郎さんは俺達に配慮して別の建物に滞在してくれている。俺はどうも親父がいるとどうしてもペースを乱されてしまうからな。親父にしては気が利いているじゃないか。


部屋には俺たちの他に良平さんがいて、腕を組み胡座をかいた状態で居眠りをしていた。正直このマイペースさにはまだ慣れていない。


「恵、そっちのこれからの方針は……」


「ああ。僕はまず名古屋に向かおうと思う。あの地の大須と言う町には秋葉原と同じようにオタク街があってね。仲間を見つけるには持ってこいだろう」


名古屋大須。正直俺は秋葉原と地元のオタク街にしか訪れたことは無い。なので行先については俺が下手に助言をするよりも彼女の判断に任せた方がいいだろう。そう考えていた時に事件は起きた。


突然居眠りをしていたはずの良平さんが目を覚まして俺達に「伏せろ!」と指示してきたのだ。俺達はその唐突な声に反射的に身を屈めた直後、庭へ通じる障子を貫き大量の刀が飛んできたのである。俺もどうやら緊急事態に対して体が動くようになってきたみたいだ。


そして間髪入れずに障子の襖が蹴り倒され男が部屋に侵入してきた。俺はその男を見た瞬間、頭の中で何かが切れる音とともに竜爪を発動し紅蓮拳を繰り出し殴りかかった。その男とは、ウルフのボスである切矢遼。俺の大事な人である泉の命を奪った張本人だ。自分でも驚くほど自然に、自分らしくないほど感情的に行動に出てしまった。


「切矢遼ォォォ!」


俺が声を張り上げながら切矢の前に飛び出し全力の一撃を浴びせようとする。しかしその攻撃は半身(はんみ)になる最小限の動きで避けると奴は淡々と話し始めた。


「おっと……誰かと思ったら歩君じゃないか。どうしてここにいやがるのか……まあいい。今日の獲物はお前じゃねぇ。おいそこの忍者の格好をしたお前、蛇石をどこにやりやがった!」


切矢は何かを捜索しているようで良平さんに対し声を荒げて在処を聞き出そうとしている。俺はその間にも何度も攻撃を繰り返すが、さすがの身のこなしで避け又は捌かれ続けていた。


「蛇石……? さて……何の話かにゃ?」


蛇石という代物が何処にあるかを尋ねる切矢に対し惚けた表情で良平さんはそう返答した。


「……まあいい。素直に吐かねぇなら無理やり聞き出すまでのことだ」


そう言うと切矢は周りに刀を6本展開し良平さんに向けて一斉に放った。だが、流石の良平さんだ。飛んでくる刀を初見だというのに正確に見切り、素早い身のこなしで完璧に躱していく。これが守りに特化した忍者、戸隠流の戦い方と言う訳か。


「戸隠流忍法・影縫い」


良平さんはそう唱えながら印を結ぶと切矢の足元から黒い影が広がりその場に縫いつけるかのように拘束した。


「な、なんだ? これ?」


「さ、みんな今のうちに!」


その掛け声と共に部屋から一斉に逃げ出した。俺自身も突然現れた切矢に対し怒りの感情が思わず爆発してしまい手を出してしまったが今は我慢のときだと心を落ち着かせ恵、良平さんと共に外に出てその場からの離脱を試みる。しかし、切矢は出現させていた刀を使い、影縫いによる影を強引に切り落とすと即座に俺たちを追ってきた。


俺たちは逃げ切きれないと判断して再び戦闘態勢に入る。


「手こずらせやがって! そこの忍者もどき! さっさと蛇石の在処を教えやがれ!」


「もどきじゃないよ! 僕は正真正銘の忍者! あと蛇石なんて知らないよー? という訳なのでお引き取り願えません?」


と良平さんは切矢に提案するが、この男がはい分かりましたなどと頷いて帰ってくれる様な輩ではないと考えていた俺は、その隙に「レヴァーテイン」を顕現させた。


「はーその人をおちょくる様な態度、クソうぜぇな! 忍者もどきてめーは刻んでやる!」


その宣言と共に今度は刀を倍に増量し良平さんに向けて放った。俺は彼を庇うように前に立ちレヴァーテインを振るい襲いかかる刀を薙ぎ払っていく。


「あ? おいおい歩君〜その剣は災華とやらのレヴァーテインじゃないか。つまりアイツ死んじまったということか。前々から俺の行動の邪魔してきて目障りだと思ってたんだよ。素直に嬉しいぜぇ」


俺は泉のことに加え、災華さんの死までバカにされたことに更に憤りを強くさせた。それは俺の「レヴァーテイン」にも目に見えて変化をもたらし轟々と炎を燃え盛らせる。


「切矢ァァァ! てめぇは絶対に許さねぇ!」


俺はその怒声と共に切矢に向け全力で剣を振るう。


「せっかくだ、この前途中で終わった戦いの続きとでも行こうか。来い! 魔剣グラム!!!」


その掛け声とともに切矢の横に亀裂が走り、異空間が開いた。その空間から剣の柄だけが出ており、男はその柄を右手で握り引き抜こうとすれば剣は依然、抗うかのように周りに強い光を放ち、イナズマが迸った。


しかし、切矢は剣を強引に引き抜き空間から切り離して右手で握り、斬りかかる俺に対して真っ向から返してくる。


俺の炎を纏うレヴァーテインと切矢のイナズマを纏う魔剣グラムがぶつかり合い火花を散らして数瞬の拮抗。さすが「紅のレヴァーテイン」に登場する最高位の神器だ。あのグラムとも互角にやり合える力を持っている。しかしまだ使い手の力量差は埋まってはおらず、力と出力の両方で押し負けてしまった。


「……クッ」


「歩くん……君は俺には勝てない。一生な。だからここから大人しくしておきな。今俺が用あるのはそこの忍者くんだけだ」


「全くしつこいなぁ。蛇石ね、たしかに隠したさ。だがその在処を教えることは出来ない。これは最大の盟友である光明ちゃんに託された事なのだからね」


そういう事か。秋葉原で忍者の里に伝書鳩に持たせる文を書いてる時に俺達を匿う話に加えてこうなる事を予測し、良平さんに蛇石を隠すようにお願いしていたんだ。さすが光明さん抜け目のない人だ。


「いいさ、てめぇをいたぶりながら聞き出すだけだからな」


そう言うと切矢はグラムを振るい、連続で良平さんに切りかかる。俺は少しでも攻撃をサポートしようと「ドレイク」を呼び出し彼をサポートするように指示をした。しかし近づいた「ドレイク」はグラムでその身を斬りつけられると意図も簡単に消滅させられてしまった。今更ながらあの剣がドラゴン特効であるというのを認識する。


恵も基礎魔法で攻撃を試みるが、切矢はまるで目が背中にも付いているような的確な身のこなしで攻撃を躱し、矢継ぎ早に良平さんに切りかかる。


「切矢様。お待たせしました。ついに見つけました!」


背後から声が聞こえ、咄嗟に振り向くとそこには、以前秋葉原へ向かう道中に遭遇し散々苦しめられた怪鬼 妖の姿があった。手元には奇妙な石を抱えている


「でかした。これをそいつに当てろ」


切矢はそう言うと彼に向けて黒い輝石を投げ渡した。それを受け取ると彼はすぐ様蛇石にその軌跡を当てた。その瞬間石から辺り一帯に強い光が放たれる。


蛇石はその直後から徐々に巨大化を始めた。妖は急速に変化を始めた蛇石をその場に置き去りにして全速力で切矢の元に走る。それと同時に切矢はポケットからトランシーバーを取りだし、誰かに連絡をした。


「目的は果たした。撤収だ」


その連絡を終えると空にヘリコプターが飛んできて切矢、妖、そして連絡を聞いて駆けつけたと思われる黒いジャケットの女がヘリから垂らされた梯子に掴まった。


「じゃあなお前ら〜。後これは親切心からの警告だ。直ぐその場から離れた方がいいぞ。とんでもない奴の目を覚ましちまったからな」


それだけ言い終えるとヘリコプターで奴らは撤収していった。その間にも蛇石はどんどん巨大化を進めておりそれに伴って地響きも強くなっていく。やがてその中に眠っていた化け物が俺たちの前に形を現した。


その姿は伝説にある「ヤマタノオロチ」のようだった。体長は有に30メートル近くあるだろうか。そいつは咆哮をあげながら今にも暴れ始めようとしている。俺はかっこいいと言うよりも恐怖のあまり身震いが止まらない。


絶体絶命の大ピンチだ。

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