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再臨!魔法少女イズミ!!!冥界に誘いし少女アリス!!!

そそぎ癒すはよどみし心! 遍く闇を流し去る清廉せいれんな水! 変身! 魔法少女イズミ!」


 成功だ。詠唱を受け取りステッキは彼女の求めに応じるかのように水を出現させて体を包み込み変身が始まった。暗奈を助けたいという思いが泉の心を通じて届いたのだろうか。瞬く間に変身は終了し、那月ちゃんは水の魔法少女の姿になった。元々彼女の髪型や容姿が泉と近かったことを考慮したとしても似すぎている。すぐさま空中へ飛び出していった彼女へ俺は、泉が生きて目の前にいるかのように見えてしまい思わず手を伸ばしかけてしまった……。


「キャハ♡♡♡その姿さっきより魔力を感じないじゃない! そんなので暗奈を倒せる訳ないじゃん」


「そんなのやってみないと分からないっすよ! ウォーター・ランス! 〝メイクアップ〟アイス!」


 そう言って彼女は泉の技である水の槍を一瞬で8本生成し〝メイクアップ〟の能力により、氷の槍に変化させて暗奈に向けて解き放った。すごい泉の技も完璧な再現度だ! 泉の力が今彼女の手によって振るわれている! 放たれた槍は包囲するように軌道を描きながら暗奈へと向かっていく。


「倒せるわけないって言ってるじゃない! ダーク・マター!!!」


そう詠唱すると左手から闇の渦が出現し、槍を吸い寄せて次々と飲み込んでいく。直後、巨大化したそれを空中で浮遊している那月ちゃんに向けて時間差で狙い投げ放った。


「バブルショット! 〝メイクアップ〟アイス」


那月ちゃんは広範囲にバブルショットを撃ち出し、空中一帯に張り巡らせ、凍らせることで足場を形成し、縦横無尽に跳ね回り攻撃を躱す。


「続いていくっすよ! バブルショット!」


今度はバブルショットの攻撃だ。無数の泡が暗奈のいる方向に殺到する。


「無駄だって言ってるじゃない!」


動きを目で追えなくなっていた暗奈はそう言うと先程のステッキの先に禍々しいオーラを集め攻撃を再度解き放った。


「ウォーター・カーテン! 〝メイクアップ〟アイス!」


その攻撃を那月ちゃんは緩やかなカーブをさせて展開した水のカーテンにメイクアップの能力で氷の障壁に変えることで、受け流すようにして防いだ。


「な、なんで暗奈より弱い魔法少女の癖に」

「そういうあなたはもはや魔法少女ですらない状態っす。魔法少女とは思いの力、魔法少女では無くなったあなたには負けるわけにはいかないっす」

「暗奈が魔法少女じゃないって……あれ?」


そう言うと暗奈は氷に映る自分の姿を認識して一瞬の困惑の後、絶望した顔になった。


「あ、あれ暗奈。最強の魔法少女にはなったはずじゃ? な、なんで……」

「いまがチャンスっす! エレメンタルバースト! 水圧最大っす……! ウォーター・プレッシャァァァァァァァァーッー!!!」


 彼女がステッキを掲げそう叫ぶと大量の水が生成されステッキの上で集まり、巨大な球体を形成してゆく。泉の時と比べて技のパワーも格段に違う。これが〝黒現〟の力、戦いの中で成長するということか……。


「いっけえーーーーーーー!!!!!」


 俺は全力を込めて撃ち出したことで力尽き変身が解けて落下してくる那月ちゃんをしっかりと受け止めた。その直後、〝ウォータープレッシャー〟は暗奈の体に直撃したと思われた瞬間に眩い光を放って彼女を包むように飲み込んでいった。


「久しぶりね。暗奈」

「い、泉なんで……ってあれ? なんで今まで暗奈、泉の事を忘れちゃってたんだろう??」


彼女は困惑の表情を浮かべながら自分の手を見つめた。


「泉、元気にしてるなら連絡ぐらいしなさいよ……暗奈……泉に見捨てられたかと思って……それで……」


「ごめんね暗奈。私はもうこの世にはいないんだ。今貴方と会話しているのはステッキ内の残留思念。すごいよね魔法少女の力ってこんな奇跡を起こせるんだから……」


「え、嘘でしょ! なんで……なんで……」


「私、弱いからさ……大事にしていたものほとんど失ちゃったんだ……でもね、全てを投げ打って行動したらね、最愛の人の未来を繋ぐことはできたの……で、勇気をだして告白したらね。最後の一瞬だけ夢も叶っちゃった……」


「……暗奈は……暗奈は……また龍ケ崎歩と泉と一緒にコミマウに行きたかった……だからね一生懸命衣装もね作ってたんだよ……今度こそ泉に負けない再現度の高い衣装を作るんだーって……でも泉たちは来てくれなかった……そんな時に謎の少年が私に接触してきて……」


ーー某公園似てーー


 その少女は涙を流しながらブランコに座って泣いていた。


「泉、約束したじゃない。今年のコミマウは絶対に一緒に参加しようねって……」


恐らく彼女は約束を破られてしまったのだろう。


「君も僕と同じだね。裏切られたんだ。でも僕とくればもう安心だ。嫌な記憶は忘れさせてあげるし……君に眠っているその力を使えば世界を変えれる」


そうやって甘い誘惑を囁き少年は彼女に手を差し出した。そして彼女はその手を取った。そこが彼女にとっての長い悪夢の始まりとなってしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そう暗奈も弱いから……その手を取ってしまったの……」


「暗奈。あなたのしたことは決して許されることじゃない……でもあなたはまだ生きてるの……だからやり直せる。ねえ暗奈、私の意思を継いで悪い奴らから人々を守って欲しい……そして私の最愛の人を支えてあげてほしいの……私はもうこの世にはいないから……我儘わがままでしかないのはわかっているけど……どうかお願いします」


そう告げられた暗奈はゆっくりと涙を拭き取りながら首を縦に振った。それを最後に暗奈の前に現れた残留思念は蜃気楼のように揺らめいて消えていった。


 暫くすると暗奈を包んでいた水の球体は地面にゆっくりと落ちてくると、輝きを失って崩れて地面に消えていった。そこから〝てぃんくる9〟で彼女が好きだったはずの毒を使う魔法少女の姿となっていた暗奈が姿を見せ、変身を解いて涙を流しながら俺達の元に近づいてきた。


「龍ヶ崎 歩! 暗奈ね……全部思い出した。泉との思い出、あんたの事も全部……全部……そして泉がもういないことも、あの子が泉じゃないってことも全部……全部……ステッキに聞いたの……本当にごめんね……」


 変身が解けた彼女はボロボロと大粒の涙を流しながら俺に抱きついてしまった。しばらく経って彼女は涙を拭いて顔をあげると、その瞳には決意と覚悟を宿らせていた。


「暗奈もここからは一緒に戦う。それが暗奈にできる唯一の償いだから……」


「愚かだな……エニグマ様を裏切ると言うのか……ならばお前諸とも切り殺してやる」


「暗奈ちゃん……アリス達を裏切るって訳、それは可愛くないなあ……冥界行き決定ね!」


 これまで静観していた空中に浮かぶ二人がこちらへ近づいてきて暗奈を蔑むような目でそう言った。俺達はそれを聞いて再度臨戦態勢に戻る。二人は俺たちに戦闘の意志があることを確認すると身に纏うグレーのローブを投げ捨てた。


 一人目の男の方は、ゲームキャラの主人公のような格好をしていて髪色は黒で熱血キャラのように尖っている。身長は160後半だろうか。恐らくだが彼の黒歴史のルーツは〝神空のファルシオン〟という子供から大人まで幅広い世代で親しまれている国民的ゲームだろう。内容は単純で勇者に選ばれた主人公が世界の災厄の現況である魔王を倒しに旅に出ると内容だ。こちら側の組織のメンバーの魔将院さんもこの作品がルーツで、能力のモデルは魔王らしい。先程の休憩時間に話を聞いた。恐らく相手の男は主人公である勇者だ。


 二人目の女は黒髪ロングでゴスロリファションに身を包んでいて、右目には黒い眼帯をしている。身長は160半ばくらいで右手に黒い鎌を持っている。彼女のルーツはおそらく、〝冥界アリス〟という二年前に流行った深夜アニメのキャラクターだ。自分の事をアリスと呼んでいる事からほぼ確定的だろう。彼女の能力は発動の仕方が特殊ではあるが、かなり危険なものだ。鎌の攻撃を一時間以内に4回体に喰らうと死神が現れて直ちに冥界に連れて行かれてしまう。注意して戦わないとな……と頭の中で情報を整理していると突然早乙女さんが俺達の前に出ると、男の方に震える声で話しかけ始めた。


つるぎくん……!剣くんでしょ何で貴方が……」


「そうだ勇人ゆうと何故お前が……」


どうやら彼の名前は剣 勇人と言うようだ。彼女達の物言いからしておそらく行方不明となっていたチームメンバーの一人だろう。そいつが敵に寝返っているのだから驚くのは当たり前だ。


「今ならまだ大丈夫だから……!さあ戻って……」


 早乙女がさんが言い終えるのを待たずに、地面に降り立った勇人は容赦なく彼女に剣で斬りかかって来た。それに瞬時に反応していた魔将院さんが悪魔のような黒い右手で剣を片手で抑え込み防ぐ。


「なんの真似だ……勇人……」


「見ての通りだ……エニグマ様の目指す計画に邪魔なものは排除する!」


勇人は抑えられた剣を無理やり引き寄せ、距離を取りながら話を始めた。


「俺は戻らない……そしてお前たちをこの場で葬る」


 そういうと勇人は再度、剣を2人に向けた。早乙女さんはとても悲しい表情で勇人の事を見つめながら、葛藤には覚悟が着いたのか巫女服の左に取り付けている鞘から刀を取り出してその切っ先を正面へ向けて再度問いかける。


「もう私が何言っても無駄なんだね……?」


「ああ」


「なら私は貴方に刃を振るわないといけない……!」


 そういうと彼女は一足飛びに距離を詰め、連続で斬りかかる。勇人はそれを剣で受け止め、捌き続けている。そしてお互いが正面から斬りかかる形となり鍔迫り合いになり至近距離で視線が交錯し早乙女さんは再度勇人へ呼び掛ける。


「今なら戻れるわよ……こんな馬鹿なことやめて戻ってきなさい……あなたは世界を救うんでしょ!」


「うるせぇ……あんたに俺の何が分かる……!!」


 早乙女さんは勇人が強く押し込む力を利用して後ろへ大きく飛んで距離を稼いで間合いを仕切り直した。そして素早く納刀して構えた早乙女さんが一気にしかける。


「桜閃一刀流 壱の太刀 一葉! 」


 ここで俺は初めて早乙女さんの〝黒歴史〟のルーツを理解した。あれは劇場版も制作された深夜アニメ〝 抜刀剣舞 八重桜〟の主人公 紅月こうげつ さくらが使う刀で名前が〝八重桜〟そして流派は桜閃一刀流という。型の名称には八重桜に関係した言葉が多く使われており、様々な型を使って世に仇なす悪党共を成敗していく作品だ。


 まさかあの桜さんが使う刀術を生で見れるなんて……!ってそんなことを考えてる暇はない。今は俺がやるべきことをやらねばだな。行動に移そうと竜爪によって身体を竜化し彼女をサポートをしようとするがもう1人の仲間にそれを阻まれる。


「あんた達の相手は私!」


 そう言いながら頭上から大きな鎌を振り下ろして攻撃してきたアリスという女。辛うじて避けられたがスピードが尋常では無い。美麗も後ろから射撃で援護をしようと何発も撃ち続けてはいるが軽々と避けられてしまう。


「避けてんじゃないわよ!」


 地面にめり込んだ鎌を物ともせず引き抜き、呼吸をする暇すら許さないとでもいうように俺に怒涛の攻めで斬りつけようとしてくる。彼女の表情には狂気を感じる笑みが浮かんでおり、本来のその容姿のイメージからではとてもじゃないが想像できない動きだ……。


「ジュラン! なんかいないのか? こういう時に役立つコレクションは!」


攻撃を避けながら俺は、後方で高見の見物をしていたジュランに助けを求めた。


「……なら……こいつとかどうだ」


そうするとジュランは内ポケットから化石を一つ取り出し、左腕から取り外したデバイスにかざす。


「D-watch! Restoration! 〝アンキロ〟 」


 〝アンキロサウルス〟。中生代白亜紀後期、約6800万年前から6600万年前の現アメリカ大陸に生息していた草食恐竜だ。体長は約5メートルから10メートル。体重4.5トンから4.7トン。戦車のように体を覆う装甲と、先端に大きな骨塊のついた尾をもつ。装甲は楕円形の骨板と骨質のスパイクで構成されている。最大の武器である尾は、その基部が水平方向への柔軟性を持ち、先端付近は骨質の腱で補強され、そのまま先端の骨塊へとつながっている。これを左右にハンマーのように振り回すことによって、同時代の肉食恐竜類から身を守っていたと言われている。


なるほど……こいつの装甲ならばいくらあいつの鎌であろうと貫けはしないだろう。後は4回攻撃を当てられた場合に冥界アリスの能力が発動するかを確認しなければいけない。


「何よこのデカブツ、邪魔よ!呪い殺してやるわ」


そういいアリスは4度、高速で鎌を振り回し刃を当てる。しかしアンキロの装甲は頑丈なのでびくともしていない……


「嘘、鎌を4回当てたのに……」


よし、やはり冥界アリスの能力は人に対して発動するもので恐竜には関係ないようだ。それに加えてアイツの元は化石。どちらにしろ既に死んでいる。抜かったな!


俺は自身の能力が思わぬ形で無効化され動揺を隠せずいる女に、追撃の隙を見逃さず〝爆炎弾〟を放つ。攻撃は交わされたがアリスと距離を空けることにひとまずは成功した。

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